バンコク高層ビル倒壊、生還男性が「脱出劇」振り返る…大きな揺れに階段駆け降りるも無数のコンクリ片が足直撃

 【バンコク=竹内駿平】ミャンマー中部で3月28日に発生した地震を受け、タイの首都バンコクで倒壊した高層ビルで作業中だったミャンマー移民の男性が、読売新聞の取材に応じた。大けがを負った男性は「今でも恐怖を感じている」と語り、負傷による失業と、内戦が続くミャンマーに帰国を強いられることへの不安を吐露した。

バンコクのビル建設現場で作業中に地震に遭い、大けがを負ったミャンマー移民のタン・ジン・ナイさん。帰国と失業の不安を吐露した(4日、バンコクで)=竹内駿平撮影

 「死んだと思った」。ミャンマーの最大都市ヤンゴン出身のタン・ジン・ナイさん(42)は、入院先のバンコクの病院で「脱出劇」を振り返った。建設中だった高層ビルの倒壊では、7日現在、17人が死亡、77人が行方不明となっている。

 地震発生時、現場の6階で建設資材を運んでいた。突然、大きな揺れを感じ、必死に階段を駆け降りた。ビルが倒壊したのは、1階に着き、ちょうど建物の外に出たところだった。ただ、 轟音(ごうおん) とともに飛び散った無数のコンクリート片が右足を直撃し、その場で動けなくなった。

 辺り一面に土煙がたちこめる中、手で覆うようにして頭を守りながら、伏せ続けた。揺れが収まったのを確認し、左足で跳びはねるようにしてようやく敷地外に出た。血で真っ赤に染まった右足は、医師に「 腱(けん) がちぎれ、ひどく傷ついている」と診断された。同じく脱出できたミャンマー人の同僚2人と同室で、療養を続けている。

 一番の懸念は、このまま働けなくなることだ。労働力不足のタイでは、建設現場などで多くの移民労働者を受け入れている。ただ、仕事に復帰できなければ、ミャンマーに帰国せざるを得ない。

 自身は8年前にタイに移り、ヤンゴンの家族を養ってきた。「ミャンマーでも職は見つからないだろうし、政情が不安定なのも心配だ。今後どうなるのか……」と肩を落とした。

関連記事: