バンスよりもルビオが好き?:2028年共和党大統領候補レースに異変あり
トランプ大統領には最近、側近や腹心たちに仕掛ける新たな「パーラーゲーム」がある。「JDとマルコ、どっちがいい?」——つまり、2028年に自分の後継として共和党の候補に誰を据えるべきか、バンス副大統領かルビオ国務長官か、という問いかけだ。複数の情報筋によれば、トランプはこの質問をさりげなく、しかし頻繁に口にするようになっている。
表向きは和やかな冗談のように見えるが、その背後では「ポスト・トランプ」をめぐる静かな、しかし着実な権力闘争が進行しつつある。
バンス副大統領とルビオ国務長官 同国務長官Xより
数字の上ではバンス優勢
世論調査の数字だけを見れば、バンスが圧倒的に優位だ。ハーバード大学CAPS/ハリス世論調査(4月末実施)では、共和党内での2028年大統領候補支持率はヴァンスが48%、ルビオはわずか16%にとどまっている。
一方、別の調査では異なる結果も出ている。2024年大統領選で「最も正確」と評価された世論調査会社アトラスインテルが2,000人以上のアメリカ人を対象に実施した最新調査では、ルビオが45.4%でトップ、バンスが29.6%で2位、デサンティス・フロリダ州知事が11.2%で3位という結果が出ている。
調査機関によって数字が大きく異なるのは、レースがいかに流動的かを示している。
ルビオ台頭の理由――「表舞台の男」
ヴァンスと比べたときのルビオの最大の強みは、その役職だ。国務長官と国家安全保障補佐官という二つの要職を兼務するルビオは、ニュースの中心に常に登場する。一方、副大統領職には明確なポートフォリオがない。トランプはニュースを貪欲に消費する人物であり、その点でルビオは圧倒的に有利な立場にある。
ルビオは近週、国際舞台で目覚ましい活躍を見せた。イラン情勢に絡みローマ教皇レオと会談するためヴァチカンを訪問し、トランプの重要な同盟国であるイタリアのメローニ首相とも会談した。また、報道官の産休中にはホワイトハウスの記者会見を自ら取り仕切り、国内外の政策双方でその存在感を高めている。
ルビオは初当選から2016年の大統領選挑戦まで複数の選挙戦を経験しており、党内の有力ドナー、草の根組織、そして幅広い人脈を持つ。バンスとの比較において「好感度」でも優位に立つとされる。
バンスの苦境――「見えない副大統領」
MAGA基盤の熱烈な支持者たちはバンスの指名を疑わないが、ワシントンの内部では異なる声が静かに広がりつつある。バンスが副大統領という現在の立場を十分に活かせていないという批判だ。草の根のリーダーたちを招いて関係を構築すべきところ、全国的な選挙活動にもほとんど姿を見せていない。「ホワイトハウスに電話するとトランプ自身が折り返してくる。しかしバンスのオフィスに電話しても、返事が来るまで時間がかかる」という声も出ている。
イランとの戦争が続く中、バンスは低姿勢に徹しており、公の場での発信をトランプやルビオ、ヘグセス国防長官らに委ねている。
トランプの本音――「バンスを焚きつけるためのルビオ」
トランプはバンスを後継者に選んだ張本人だ。しかし近年、公私を問わずルビオの活躍を称賛する発言が増えている。
複数の側近は、トランプがルビオを持ち上げ続ける理由の一つは、ルビオをバンスの副大統領候補として誘い込むためだと分析している。トランプ自身は最終的な後継者を明言することを避けており、その理由は「チームに現在の仕事に集中させたい」「権力を失いつつあるように見せたくない」という計算があるからだとされる。
「見えない予備選」の構図
政治アナリストたちは現在の状況を「見えない予備選」と呼ぶ。正式な選挙戦が始まる前の段階で、候補者たちが全国的な知名度を高め、支持者を囲い込み、布石を打つ時期だ。そしてこのレースを決定的に左右するのは、依然としてトランプの後継指名だ。
バンスはすでに共和党全国委員会の財務委員長を務めており、中間選挙に向けて全国行脚を計画している。一方、誰一人として2028年に向けた具体的な動きを見せていないという奇妙な状況も続いている。ジョージア州のケンプ知事、フロリダのデサンティス知事、テキサスのクルーズ上院議員、ミズーリのホーリー上院議員といった面々はいずれも大統領の座を意識しながら、誰も動き出していない。
「ドリームチーム」の亀裂
トランプは2人の組み合わせを「ドリームチーム」と呼んで持ち上げたが、バンスはルビオとコンビを組む可能性について「いま最も話したくない話題の一つ」と距離を置いた。
2028年の予備選まで2年以上ある。しかし「ポスト・トランプ」をめぐる戦線はすでに静かに、しかし確実に動き始めている。ルビオが「外交の表舞台」で存在感を示し続ける一方、バンスが「見えない副大統領」という罠から抜け出せるかどうかが、このレースの行方を左右しそうだ。