北海の海底が逆さまに “シンカイト”と呼ばれる奇妙な地層を発見
イギリスとノルウェーの研究チームが、北海の海底下で「シンカイト」と名付けられた奇妙な地層を発見した。
この地層では、通常であれば下にあるはずの古い堆積物が上に移動し、逆に新しいはずの砂の層が下へ沈み込むという、地層の順序がひっくり返った“逆さま”の状態が確認されたのだ。
これほど大規模な地層の逆転現象は、これまで報告された中でも最大級だという。
この研究は『Journal Communications Earth & Environment』誌(2025年6月21日付)に掲載された。
北海で発見された「シンカイト(sinkite)」は、通常とは逆の順序で層が積み重なった巨大な地層構造である。
高さは数百mにおよび、幅は数km、長さは数十kmにも及ぶ。これらの構造は北海の海底下に広く分布しており、確認された数は数百にもなる。
研究チームは、この構造を「シンカイト(sinkite)」と命名した。「沈む(sink)」と岩石名に使われる「-ite」を組み合わせた造語で、下方へ沈み込んだ砂層という特徴を表している。
シンカイトでは、本来なら上にあるべき新しい砂の層が下に沈み、逆に古い堆積物が上に浮かび上がっている。
これは、「逆層序(reverse stratigraphy)」と呼ばれる現象であり、地質学や考古学でも知られているが、ここまで大規模な事例が発見されたのは極めてまれである。
北海は、イギリス、ノルウェー、デンマークなどに囲まれた浅い海で、ヨーロッパ北西部に位置する。古くから漁業や海上交通の要所であり、近年では石油や天然ガスなどの海底資源の開発地としても知られている。
この画像を大きなサイズで見る北海 image credit:Pixabay研究によれば、シンカイトが形成されたのは約1000万〜160万年前、地質年代でいう後期中新世から鮮新世にかけての時代だという。
当時の地震や地下圧力の変化により、上層の砂が液状化し、海底の割れ目を通って下層へ沈み込んだと考えられている。
そのとき、より深い場所に存在していた堆積層「ウーズ・ラフト(ooze rafts)」が押し上げられ、結果的に砂の上に浮かび上がった。
ウーズ・ラフトとは、微小な海洋生物の化石が長年にわたり蓄積してできた細かい泥の層で、多孔質ながらある程度の硬さも持っている。
この浮き上がった層には「フロウタイト(floatite)」という別名も与えられており、シンカイトと対になる構造要素として扱われている。
この画像を大きなサイズで見る北海のヴィスンド油田周辺にある地下構造「ヴィスンドマウンド」で、軽い泥(ウーズ)の下に重い砂層が沈み込んでいる様子が確認された。これが「シンカイト」として定義された逆層序構造である。 / Image credit:Huuse, M. et al. (2025). Communications Earth & Environment, Nature Portfolio. DOI: 10.1038/s43247-025-02398-8今回の発見は、地質学の理解を深めるだけでなく、現代の技術にも大きな影響を与える可能性がある。
現在、地球温暖化を抑えるために進められているのが、二酸化炭素を大気中に放出する前に地下に封じ込める「CCS(Carbon Capture and Storage)」という技術である。
実際、北海ではすでに世界初の商業的二酸化炭素の貯留プロジェクトが始まっており、海底下に二酸化炭素を注入する取り組みが進行中だ。
しかし、地下構造が予想と異なる場合、貯留の安全性や封じ込めの効率に影響を及ぼす可能性がある。
今回の研究は、イギリスのマンチェスター大学と、ノルウェーの研究機関との共同プロジェクトとして行われた。
研究チームを率いた、マンチェスター大学の地質学者であるマッズ・フーセ教授は、「シンカイトのような構造を理解することは、二酸化炭素の回収と貯蔵におけるリスク管理に不可欠であり、地下の流体の動きを正しく評価するためにも重要だ」と語っている。
この画像を大きなサイズで見るimage credit:unsplash現在も研究チームは、同様の構造が他の地域にも存在するのかを調査している。
もしシンカイトが北海特有のものではなく、広く見られる構造であるとすれば、海底の地下構造に対する理解そのものを見直す必要が出てくるかもしれない。
海底の下では、私たちの知らないドラマが数百万年の時間をかけて進行していたようだ。
References: Nature / Manchester.ac.uk
本記事は、海外の記事を基に、日本の読者向けに重要なポイントを抽出し、独自の視点で編集したものです。
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