トランプ氏に左右されない投資先はどこか-新興市場投資家が徹底調査

中国の人工知能(AI)関連企業、移民主導で好況のドバイ、債務再編の期待が高まるベネズエラとレバノンの国債など、2025年の新興市場の勝ち組はいずれも、トランプ米大統領の通商政策からの影響を回避するのに役立つ投資先だ。

  こうした選択的な投資は、米国への輸出、米利下げ、ドル安に依存しないため、トランプ大統領の2期目の予測不能性から投資家を守る。

  新興市場の株式、債券、通貨の指標となる指数は今年、ここ数年で最高のスタートを切ったものの、2月末にはトランプ大統領の関税脅威が再び引き金となり、売り一辺倒になった。

  モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントの副最高投資責任者(CIO)、ジタニア・カンダリ氏は「ネガティブな状況の中でも、市場価格のゆがみを見つけ出し、そこからチャンスを見いださなければならない」と話す。

  戦略はさまざまな形を取る。例えば、AI関連株だ。投資家は昨年、米国のAIブームの恩恵を受ける新興市場企業を追いかけたことで大きな利益を上げた。AIアプリケーションで使用される半導体を製造する台湾積体電路製造(TSMC)株の81%急騰はその一例だ。

  今年に入ってから投資家はTSMCを売り、アリババグループを買っている。同銘柄は55%上昇し、MSCI新興市場指数の25年の上昇で3分の2以上を占めた

  アリババの最大の強みは、米国から波及する収益ではなく、中国の国内AI導入に焦点を当てていることだ。そのため、トランプ大統領の関税に対するヘッジ手段となる。

ペッグ制の活用

  株式投資家にとって大きなリスクは、ドル高により現地通貨建てのリターンが目減りすることだ。そのため、安定した通貨を持つ国への投資がより魅力的になる。特に、ペッグ制を支える堅固な準備高があり、ダイナミックな成長ストーリーを持つ国々への投資が有望だ。

  ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズの新興市場エコノミスト兼為替ストラテジストのブレンダン・マッケナ氏によれば「中東諸国の多くは面白い選択肢」だ。「特にアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、カタールは、投資家がトランプリスクを逃れるための安全な避難場所になる」という。

  ドバイの株価指数は2月に過去最高値を更新した。海外からの移住者の流入により住宅から自動車、銀行サービスに至るまであらゆるものの需要が高まったためだ。為替レートのペッグに加え、多くの企業は政府の支援も受けており、収益源が確保されている。

  チェーン・キャピタルのファンドマネジャー、カール・トーム氏は「ディルハムはドルにペッグされているため、UAEの株式市場に投資する投資家は為替リスクにさらされることはない。これは世界的に流動性が高い状況においては有利な点だ」と解説した。

貿易の変化

  モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントは、輸出への感応度が低い経済、新たな国内信用サイクル、世界的な貿易シフトから恩恵を受ける可能性、そして独自の改革ストーリーに注目している。

  カンダリ氏によると同社は「資本と貿易の変化の恩恵を受ける東南アジアの企業と国々、東欧の特定地域、中南米の一部の割安な市場、そして一部の特異な新興市場」を有望な投資先として挙げている。

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貿易や地政学上のリスクを回避しながら有望な投資先を探す

  中南米では、ブラジルがアウトパフォームする公算が大きい。バリュエーションが割安で利上げの可能性があるということに加え、メキシコと異なりトランプ大統領の貿易および外交政策の標的となっていないことも理由だ。

独自のストーリー

  コロンビアでは、ビジネスと改革に友好的な政府が来年誕生する見通しであることから、同国の通貨と株式は新興市場資産のパフォーマンストップに躍り出た。デフォルトしたベネズエラの国債はほとんどが「20セントクラブ」を脱した。再編への期待が高まる中、数年ぶりに20セントを上回って取引されている。

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  トルコはインフレ調整後のリラ高政策を維持しており、現在はリラにしては異例なほど安定しているため、2桁のキャリーリターンを得ることが可能だ。同国はアルゼンチンとともに、貿易上の脅威に耐え得る主要な改革国として注目されている。

原題:Investors Are Scouring Emerging Markets for Trump-Proof Bets(抜粋)

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