「コンデジ復活」は本当なのか?(ITmedia NEWS)

 昨年あたりから経済紙を中心に、コンパクトデジカメの売り上げが復活してきているといった報道を見かけるようになった。20代から30代の若者を中心に、新品・中古ともに売上が伸びているという。日本だけの傾向ではなく、米Wiredや英Digital Camera Worldといった海外紙も同様の見解を示しており、世界的な兆候であるように思える。 【画像を見る】コンデジの出荷数は確かに回復しているが……(計6枚)  日本にはカメラメーカーが多いが、コンパクトデジカメはスマートフォンとのカメラ競争に敗北し、徐々に生産を減らしてきた。多くのメーカーは新モデルの投入を徐々に絞り、ミラーレスへ注力していった。2018年にカシオがコンパクトデジカメ事業から撤退を決めたことは、「コンデジ時代の終わり」を象徴する出来事だった。  カメラ映像機器工業会の公開資料によれば、国内向けのレンズ一体型カメラの出荷台数は23年に底を打ち、22年ごろの水準に復調したように見える。一方金額ベースでみれば、台数よりも金額のほうがより大きく復調しており、20年の水準に戻しているのがわかる。  とはいえ、コンパクトデジカメの絶頂期は07年で、台数では100万台弱、金額では2000億円規模である。それにくらべればまだ1/10以下であり、これを復調の狼煙と言えるかは、もう少し慎重に見る必要があるのではないだろうか。  今回はこの「コンデジ復活」と言われる現象の内側を、もう少し分析してみたい。

 そもそもコンパクトデジカメ衰退の原因は、スマートフォンの普及と搭載カメラの高度化が原因とされている。コンパクトデジカメは、常時持ち歩けるコンパクトさと簡単な操作がポイントであったが、携帯性という点ではスマートフォンの薄型化に強みがあった。光学ズームはないが、その代わり機械的可動部がなく故障しにくいというメリットや、SNSの普及により写真を撮って加工してネットに上げるという一連の流れによって、コンパクトデジカメは時代に合わなくなっていった。  20年からのコロナ禍により、旅行も含めた外出の自粛が起こり、旅の記録装置としての需要が減退した。ある意味これが、従来型コンデジに引導を渡した格好になった。  しかしその一方で、コロナ禍は極端な動画需要を生んだ。リモート会議やオンライン授業、ウェビナーなど、コミュニケーション手段が動画に移行すると、パソコン内蔵カメラやWebカメラではどうにもならないということがわかってきた。  いわゆる「ビデオカメラ」と言われる商品は、11年をピークに減少を始め、キヤノンが19年末にiVISシリーズを終了させたことに象徴されるように、オワコン商品となっていった。それと入れ替わる格好で手軽に使える動画カメラとして、メーカー内で持て余し気味だったコンデジのリソースが注目された。コンデジを、動画カメラとしてリブートするという考え方だ。  こうして登場したのが20年のソニー「ZV-1」であり、23年のキヤノン「PowerShot V10」であった。いわゆるVlogカメラという文脈の、コミュニケーション用カメラである。ポイントは、撮影者と被写体が同じということだ。対面で自撮りするカメラとして、横出し反転できる液晶モニターは必須だが、ビューファインダは必須ではないという流れを作った。  この動画自撮り用途は、アクションカメラにも飛び火した。DJI Osmo Actionはすでに19年から対面ディスプレイを搭載したが、いち早く自撮りニーズに気がついたということだろう。加えてこれはGoProに対する差別化でもあった。GoProがフロントにカラーディスプレイを搭載したのは20年の「HERO9 Black」からである。Insta360は、23年の「Insta360 GO 3」と「Insta360 Ace Pro」で、背面ディスプレイを縦にフリップさせるという方法で自撮りに対応した。

ITmedia NEWS
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