20年国債入札は「弱め」の声、最低落札価格が予想下回る

財務省が19日に実施した20年利付国債入札は、最低落札価格が市場予想を下回り、弱めの結果だったとの声が出ている。

  最低落札価格は98円30銭と市場予想(98円60銭)を下回った。大きいと不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は31銭と前回(13銭)から拡大。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.28倍と前回(3.56倍)から低下した。過去12カ月平均(3.3倍)とはほぼ同水準だった。

  SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、入札は「やや弱めの結果」と指摘。週末にも閣議決定される経済対策を巡る不透明感が強く、「売りが出やすい地合いが続く」とみる。明治安田アセットマネジメント債券運用部の大﨑秀一シニア・ポートフォリオ・マネジャーも入札は弱めだったとの見方を示した。

  日本経済は7-9月に6四半期ぶりのマイナス成長となり、自民党有志による「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は18日、経済対策の裏付けとなる補正予算の規模を25兆円とするよう高市早苗首相に求めた。

  19日の債券市場は補正予算の規模が拡大し財政が悪化するとの懸念から金利が上昇(債券価格は下落)している。長期金利の指標となる新発10年債利回りは一時1.775%と2008年以来の高水準を更新し、新発20年債利回りは2.815%と1999年以来の高水準を付けた。

  高市首相は7日の衆院予算委員会で、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化目標の達成状況を毎年度の予算編成などで確認する従来の方法を取り下げると表明した。12日に開かれた経済財政諮問会議で、新たに民間議員に起用されたリフレ派の若田部昌澄・早稲田大学教授は「PB黒字化目標はデフレ時代の歴史的産物、歴史的使命を終えた」と提言した。

  為替市場でも財政拡張への懸念から円が売られており、対ドル相場は155円台半ばと2月以来の安値圏で推移している。日本銀行の植田和男総裁と片山さつき財務相、城内実経済財政担当相が19日午後6時10分から、都内で会談を行う。足元の為替を含めた市場動向や経済情勢について意見を交わすとみられる。

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  三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、財政悪化への懸念から日本売りの流れが継続していると指摘。ドル・円相場は155円台で下値が固まれば、年末に160円を試す可能性もあるとみている。

  SMBC興証券の野地慎チーフ為替・外債ストラテジストはリポートで、金利上昇と円安の根底には、PB黒字化目標の取り下げがあると指摘。英国で財源なき歳出増を受けて金利急騰と通貨下落を引き起こした「トラス・ショック的な動きは既に始まっている」とした上で、補正予算規模が上振れるなどのきっかけがあれば「10年利回りが新た大台を突き抜けることもあり得る」としている。

— 取材協力 Hidenori Yamanaka and Takahiko Hyuga

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