米軍高官がウクライナ入り、戦争終結に向け協議 米ロが新たな和平案用意と報じられるなか

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画像説明, ダン・ドリスコル米陸軍長官(左)とウクライナのデニス・シュミハリ国防相は19日、キーウで協議した

アメリカ国防総省の高官らは19日、ウクライナとロシアの「戦争終結に向けた取り組みについて協議」するため、ウクライナに到着した。米軍が発表した。ウクライナでの戦争をめぐっては、アメリカとロシアが新たな和平案を用意しているとの報道も出ている。

ダン・ドリスコル米陸軍長官が率いる代表団は、20日に訪問先のトルコから帰国するウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領ともキーウで会談する予定。

ウクライナでの戦争終結をめぐっては19日、アメリカとロシアが、ウクライナ側に大幅な譲歩を求めることを含む新たな和平案を用意しているとの報道が浮上した。こうした計画があることを、アメリカとロシアの両政府は公式に認めてはいない。

こうした中、ウクライナ西部テルノピリで同日、ロシアのミサイルとドローンによる攻撃があった。現地当局は、少なくとも26人が殺害されたと発表した。

米陸軍報道官のデイヴィッド・バトラー大佐は声明で、「ドリスコル長官と代表団が今朝(19日朝)、政府を代表してキーウに到着した。戦争終結に向けた取り組みについて、ウクライナ当局と協議する」と述べた。

米陸軍参謀総長のランディ・ジョージ大将や、米陸軍欧州司令官のクリス・ドナヒュー大将、マイケル・ワイマー米陸軍最先任上級曹長がドリスコル長官に同行している。

ドリスコル長官とジョージ大将は、ドナルド・トランプ大統領の1月の就任以降にウクライナの首都キーウで協議を行う最高位の米軍高官。

19日に公開された写真には、ドリスコル長官がウクライナのデニス・シュミハリ国防相と協議し、握手する様子が写っている。

その後、シュミハリ国防相は、「我々は、ゼレンスキー大統領とトランプ大統領が結んだ歴史的な防衛協定の履行のための、次のステップに焦点を当てている」とソーシャルメディアに投稿した。

また、米政府が「約1億500万ドル(約163 億円)相当のパトリオット防空システムを売却する支援パッケージを承認した」ことへの謝意を表明した。

これに先立ち、ウクライナ当局者の1人は今回の協議について、地上の戦況や今後実現するかもしれない停戦をめぐる計画に焦点を当てたものになるだろうと、BBCがアメリカで提携するCBSに語った。

この当局者は、「ゼレンスキー大統領とトランプ大統領はすでに、現在の前線に沿って紛争を停止することで合意しており、安全の保証についても合意している」と匿名で述べた。

複数の報道機関は、アメリカとロシアが戦争終結に向けた提案を内々に策定したと報じている。

米ニュースサイト「アクシオス」や英紙フィナンシャル・タイムズ、ロイター通信は、この件に詳しい関係者の話として、和平案はウクライナに対し、一部の領土と武器を放棄し、ウクライナ軍を大幅に縮小することなどを要求するものだと伝えている。

アメリカのスティーヴ・ウィトコフ中東担当特使とロシア政府のキリル・ドミトリエフ特使が、28項目からなる和平案の策定に関わったとされる。

BBCはホワイトハウスとウィトコフ氏の代理人にコメントを求めている。

クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリー・ペスコフ報道官は、この報道を軽視するような姿勢を見せた。

1日限りのこの会談で両首脳が合意した内容は公表されていない。

ゼレンスキー氏はロシアに領土を譲歩するつもりはないと繰り返し述べている。

ウクライナと、アメリカを含む西側の支援国は、広大な前線に沿った即時停戦を求めている。しかしロシアはこれを拒否し、ウクライナが「事実上の降伏」に等しいと指摘する条件を飲むよう繰り返し迫っている。

ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は今月上旬、和平合意に向けてロシア政府が提示している前提条件は、全面侵攻を開始する2カ月前にプーチン氏が示した内容と変わりはないと述べた。ロシア側の前提条件には、領土割譲やウクライナ軍の規模に対する厳しい制限、ウクライナの中立化などが含まれる。

こうした中、ホワイトハウス関係者はBBCに対し、キース・ケロッグ・ウクライナ担当特使が来年1月に退任することを認めた。

特使は一時的な任命で、360日を超えて留任するには連邦議会上院の承認が必要。ケロッグ氏は任期を迎える来年1月が、自然な区切りになると判断したと報じられている。

ウクライナでの戦争をめぐり、トランプ氏がロシア寄りの姿勢を見せていた時期に、ケロッグ氏はホワイトハウスの中でウクライナを支持する重要な存在とみなされてきた。

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