エクイファックス事件の悪夢再来を防ぐ「町内全住民が監視カメラ」方式とは(ビジネス+IT)

【回答】データが分散して管理されているから、データが守られていることや、内容が正しいかを確認できるため、サイバー攻撃される心配が少なくなります。これからの安全なIT社会を支える新しい仕組みの1つになるでしょう。

 毎日300万件以上の個人情報が流出している世界で、ブロックチェーンは、情報を1カ所に保管するのではなく、何千もの場所に分散させる革命的技術です。  ブロックチェーンは、今までのデータ保管方法と根本から異なる「分散型デジタル金庫」のようなものです。通常のシステムでは、情報は一箇所のサーバーに集中して保管されます。これはすべての貴重品を1つの金庫に入れているようなものですから、その金庫が破られるとすべてが失われます。たとえば、2017年に起きたエクイファックス(注1)のデータ漏えいでは、一度のハッキングで1億4700万人もの個人情報が流出しました。 注1:エクイファックス(Equifax Inc.)…米国の消費者信用情報会社であり、世界で4億人の信用情報をもとにした個人の信用力データを保有しています。  一方、ブロックチェーンでは情報が何千もの「金庫」に分散保管されます。これは、町内の全住民がそれぞれ監視カメラを持ち、同じ映像を記録しているようなものです。サイバー攻撃者はすべての「金庫」を同時に破る必要があるため、現実的に不可能ということになります。  このような分散型構造により、単一障害点(注2)のリスクが排除され、サイバー攻撃に対する耐性が大幅に強化されます。 注2:単一障害点(Single Point of Failure:SPOF)…システムやネットワークで1つの構成要素が故障すると全体が停止するような弱点のこと。データが1つのサーバーに集中してダウンするとすべてのデータにアクセスできなくなります。


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 ブロックチェーンのもう1つの重要な特徴は、一度記録された情報が変更できない「不変性」です。これは消えないインクで書かれた帳簿のようなものです。各ブロックには前のブロックの暗号「ハッシュ値(注3)」が含まれており、わずかな変更でもすぐに検出されます。 注3:ハッシュ値…あるデータから「ハッシュ関数」という計算式を使って作られる、固定された(決まった)長さの、一見すると意味のない文字列。 [マメ知識] ブロックチェーンの「ブロック」とは、取引データや情報をまとめて保存する単位です。たとえばブロック(情報)は、銀行の帳簿の1ページに相当します。各ブロックには、前のブロックの情報が含まれており、これらが連鎖的につながっています。  たとえば、ある取引データが改ざんされると、そのブロックのハッシュ値が変わり、連鎖反応的に後続のすべてのブロックに影響します。この特性により、データの完全性が保証され、監査証跡も提供されます。  また、ブロックチェーンは個人のIDを守る新しい方法としても注目されています。従来のパスワード方式では、企業のデータベースが破られると個人情報が一斉に流出しますが、ブロックチェーンを使えば、必要な情報だけを相手に開示できるようになります。  ブロックチェーンは、分散型で改ざん不可能な特性により、インターネット上の信頼を築く新しい土台となっています。今後もこの技術は進化し続け、私たちのデジタル生活をより安全にしていくでしょう。

※本記事は『ゼロからわかるITほんき入門+マンガ セキュリティのなかみ』を再構成したものです。

執筆:フリーライター 長沼 良和

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