ビットコインが「1000倍になる」時代は終わった──“大人”になった暗号資産(Forbes JAPAN)
ここ数日、暗号資産に詳しくない友人から、こんな質問を受けたという人は多いことだろう。「最近、ビットコインはどうなってるの?」 ■規制対応や資金流入が進み、暗号資産市場は「大人」になった 実のところ、米国時間11月10日にニューヨークで開かれたメディア・サミットで「今の暗号資産市場をどう表現するか」と聞かれたとき、私はこう答えた。「クリプトは大人になっている」と。 それは、規制面での進展があったこと、多くの暗号資産に関連する企業が株式公開を果たした、もしくは準備中であること、機関投資家による資金流入が安定したこと、そしてジェイミー・ダイモン(JPモルガン・チェース会長)による発言のトーンが変化したことなど、至るところに表れている。ダイモンが最近、「ビットコインを持つ権利は、喫煙する権利に似ている」と語ったのは、これまでで最も寛容な表現といっていい。そして、それは暗号資産のカンファレンス会場を歩くスーツ姿が増えたことにも明確に見て取れる。 そして今、それが価格の動きにも現れている。 ■価格下落は弱気相場の兆候ではなく、退屈な「大人の段階」の証拠 先日複数のアナリストが指摘したように、ビットコインが6月以来初めて10万ドル(約1500万円。1ドル=154円換算)を下回ったのは、弱気相場入りの兆候ではない。それはむしろ、この資産が「退屈な大人の段階」に入った証拠だといえる。1日で20%の値動きや、「価格は月まで昇るぞ」という掛け声、あるいは「人生を変えるほどの富」が得られるとの約束の上に築かれてきたこの業界にとって、これは頭を悩ませる変化である。 ■アナリストは、10倍以上の利益を得る時代は終わり市場構造が変化と指摘 ギャラクシー・デジタルでリサーチ部門の責任者を務めるアレックス・ソーンは、この転換を率直にこう表現した。 「ビットコインで1000倍、100倍、あるいは10倍の利益を得る時代はおそらく終わった」。 彼は年末の価格予想を18万5000ドル(約2850万円)から12万ドル(約1850万円)に引き下げたが、それは仮説が崩れたからではなく、市場構造が変わったからだという。 ●約7.7兆円相当の長期保有分が、投げ売りではなく市場に流通 データは印象的だ。ギャラクシーの推計によれば、過去5年以上売買されずに保有されて続けていたビットコインのうち、今年だけで47万ビットコイン(約7.7兆円相当)が市場に出回った。昨年の数字と合わせると、今はビットコイン史上最大の供給量の増加である。 しかし、これは投げ売りではない。むしろ、ビットコインがまだ一部の人による実験だった時代から保有してきた人々が、いまや「機関投資家の参入」という安定的な市場環境のおかげで、大量に売却できるようになったということだ。 ●初期保有者から新しいタイプの買い手へ、静かな「IPO」のように移行が進む この状況を「サイレントIPO(静かな上場)」と表現したのが投資家のジョルディ・ヴィッサーである。もちろん文字通りではなく、経済的な意味での「上場」だ。初期の保有者が、よりリスク管理に厳しい、新しい買い手へと資産を売却している。これは企業が株式を公開する際と同じ構図であり、長期のインサイダーが利益を確定し、新しい投資家が参入する。そしてその間、ボラティリティは低下する。 ヴィッサーによれば、今の混乱はこの持ち手の入れ替わりによるものだという。他の市場、すなわちテック株、金、ナスダックなどは上昇しているのに、ビットコインはその熱狂に加わっていない。かつてリスク選好の象徴として「ハイベータ資産」と呼ばれたビットコインにとって、これは異例の現象である。