《“骨の世界的権威”が直伝》「骨粗しょう症」予防のために積極的に摂りたい栄養素「カルシウムだけでは足りない」その理由 (1/2)

 加齢とともに増え、特に高齢女性に多い「骨粗しょう症」は骨がもろくなってしまう症状だ。これを予防するには運動を習慣にするのが有効。同時に、日常での「栄養の摂り方」も工夫する必要がある。骨粗しょう症を予防する「食べ方」とは? 「骨粗しょう症」をはじめ骨代謝の診断・研究・治療の世界的権威・斎藤充さんが、100年健康に生きるための骨の真実を明かした著書『100年骨』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授。同大附属病院整形外科・診療部長。1992年、東京慈恵会医科大学卒。2020年より現職。日本骨代謝学会理事、日本骨粗鬆症学会理事、日本人工関節学会理事などを兼務。骨代謝の診断・治療・研究で国内外を牽引する。

 骨にとって必要な栄養素はと聞かれたら、多くの人はカルシウム、と浮かぶかもしれません。もちろん、それは間違いではありません。カルシウムは骨に不可欠な栄養素です。

 しかし、骨の原料であるカルシウムを腸管からしっかりと吸収させるには、吸収を助けるビタミンDの存在が不可欠です。

 つまり、「骨粗しょう症予防には、カルシウムとビタミンDを一緒に摂取する」ということが必要です。

 食品や飲料には、骨を強くする目的でカルシウムの含有量を増強した製品がありますが、カルシウム単独では、骨を強くすることはできないということを忘れないでください。

 骨粗しょう症の治療のためには、1日700~800mgのカルシウム摂取が勧められています(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015版より)。不足している栄養素はサプリメントで補充するのが効率的という考え方がありますが、カルシウムに関しては、あまりおすすめできません。

 サプリメントによるカルシウムの過剰摂取は、不整脈、腎機能不全、血管・軟組織の石灰化からの心臓病の発生など、健康障害を招くリスクが報告されているからです。

 食事としてカルシウムを摂る分には、健康を壊すほど摂取してしまうリスクはほとんどありませんが、サプリメントを併用する場合には、過剰摂取の心配があります。

 健康のために摂るのなら、サプリからではなく、カルシウムを豊富に含む次のような食品を食べて摂取することをおすすめします。

・チーズ・ヨーグルト・牛乳・小魚・大豆、大豆製品

・葉物野菜(ほうれん草、ケール、ブロッコリー、小松菜、チンゲン菜など)

 骨密度を高めるために、カルシウムとビタミンDを摂ることは不可欠ですが、本書をお読みいただいた方は、骨の強さを決めるのは、骨密度だけではないことをご理解いただいているかと思います。

 骨の構造を鉄筋コンクリートにたとえると、コンクリートにあたるカルシウムだけでは十分な強度は得られず、鉄筋にあたるコラーゲンが良質でなければなりません。

 では、骨質を高めるにはどうしたらいいのでしょうか?

 骨質とは、骨のコラーゲンの善し悪しによって決まることをお伝えしましたので、コラーゲンという言葉から「コラーゲンをたくさん摂るとよいのではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、骨質のよくない人は、「コラーゲンの量は足りているが、コラーゲンの質が悪い」ということがわかっています。コラーゲンの量ではなく、質を上げることが必要なのです。

 骨のコラーゲンの質を上げるためにすべきことは、体内でコラーゲンがつくられるときに必要となるアミノ酸の他、ビタミンCや鉄分といった、欠かせない栄養素をきちんと摂っておくことです。カルシウムが腸管から吸収されるにはビタミンDが必要なのと同様です。

 なお、アミノ酸はタンパク質で摂取できますが、タンパク質の摂り過ぎは腎不全につながることもありますので、自己判断でタンパク質を大量に摂ったりせず、まずは主治医に相談してください。

 コラーゲンの悪玉架橋を予防して、骨質を悪化させないようにするには、ホモシステインの値を下げることが有効とされています。ホモシステインは、動脈硬化や心血管の発作などのリスクを高めるもので、アミノ酸が代謝されるときに生成される物質です。

 このホモシステインの値を下げる、

・ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンB12

・葉酸

 が入った食品をバランスよく食べるようおすすめしています。

 また、骨質を悪くする原因「酸化ストレス」を高めないような生活を意識することです。酸化ストレスを高めるものとしては、喫煙や過度の疲労、過度の運動などがあげられます。

関連記事: