【独占激白】阪神大山悠輔があの日、ガッツポーズを猛省した訳「実は僕には苦い記憶があって…」
<阪神2-0広島>◇7日◇甲子園
2年前は号泣…今年は笑顔! 阪神大山悠輔内野手(30)が7日、日刊スポーツ独占コラム「走姿顕心」のリーグ優勝特別版で、苦悩に満ちた1年間を赤裸々に振り返った。昨オフは国内フリーエージェント(FA)権を行使した上で、悩み抜いた末に残留。覚悟を胸に戦った5年契約初年度はシーズン序盤に魚雷バットも試すなど、試行錯誤の日々が続いた。新たな打順「5番」でエゴを捨て、打点にこだわり続けた1年。その舞台裏を本音で明かした。【佐井陽介】
◇ ◇ ◇
優勝できて本当にうれしいです! 国内FA権を行使した昨オフ、覚悟を持って残留を決断しました。監督、コーチ、裏方さん、そしてチームメートともう1回優勝したい気持ちが強かった。1つ目標を達成できて本当に良かったです。
今年は藤川監督から「5番で打点にこだわってほしい」と期待してもらい、バッティングに変化をつけました。場面によって打ち方やアプローチを変えながら丁寧に。ただ、特にシーズン序盤は仲間の足を引っ張るばかりで…。
僕が4番を打ち始めた頃の5番は福留孝介さんでした。今年は3番森下、4番(佐藤)輝明の2人が活躍してくれるけれど、当時の僕はまだ全然で。福留さんにどれだけ負担をかけていたのかと、今あらためて申し訳なく感じています。今年、僕の前を打つ2人は本当にすごかった。開幕前は「僕が2人を支える」と言ったけれど、実際は2人に引っ張ってもらいました。
「輝明の後ろ」という役割にはやりがいを感じています。輝明が申告敬遠された時に僕が何もできないと「じゃあ歩かせたらいいやん」となってしまう。特に輝明の四球直後は相手に嫌な印象を与えなければと必死でした。3、4番が凡退した後も打点にこだわりました。点を入れることで2人の凡退を薄めたかったのです。とはいえ、なかなか2人を支えられない日々が続いていたので、8月26日のDeNA戦ではつい感情が爆発してしまいました。
9回表2死から逆転2ランを打った時、思わずガッツポーズしてしまって…。「まだ試合が終わっていないのに何やってんだ」と猛省しました。実は僕には去年までの苦い記憶がありました。ガッツポーズした直後は必ずと言っていいほどピンチを招いたり自分がエラーしていたのです。実際、今回も9回裏にピンチがありました。8月の巨人戦で高寺が先制打を打ってガッツポーズした後、藤川監督が「まだ早い」とやんわり指摘していた言葉を、もう一度肝に銘じました。
藤川監督は常日頃からコミュニケーションを取ってくれる方です。コンディションにも気を使ってくれて、今季初めてスタメンを外れた7月4日DeNA戦の前も「この日はちょっと休もうか」と声をかけてもらっていました。この試合では8回に代打出場。気持ちの作り方など、後から出る選手の大変さを再認識させられました。そんな日もあったから余計に、あの試合を忘れられずにいます。
5月18日の広島戦。僕は一塁走者として打球判断を誤り、代打糸原さんの右前打を右ゴロにしてしまいました。本当に落ち込みましたし、しばらく引きずりました。糸原さんは「気にするな」と慰めてくれたけれど、ヒット1本を消したのは事実。自分のエラーや三振であれば「自分が悪い」で済みますが、仲間に迷惑をかけた時は本当につらくて…。そんな時はいつも家族の存在に救われました。
どれだけ悔しい結果に終わっても、甲子園から帰宅する車中で気持ちを切り替えるように心掛けています。もちろんいつも完璧にはできませんが、玄関の扉を開けると猫2匹が駆け寄ってきてくれる。奥さんが猫を抱っこして出迎えてくれる。その瞬間だけは頭の中から野球をパッと消すことができます。今年も家族、そしてファンの皆さんに支えられて優勝できました。
ただ、シーズンはまだ続きます。開幕前は「『残ってくれて良かった』と1人でも多くの方に思ってもらえるように」と言葉にしました。これからも叱咤(しった)激励の声がなくなることは絶対にないと思いますが、どれだけ打てなくても応援してくれる人がいる限り、勝利のために全力を尽くし続けるつもりです。(阪神タイガース内野手)
◆走姿顕心 かつての師匠、元阪神打撃コーチの広島新井良太2軍打撃コーチが大切にする言葉。「走る姿に自分の心や資質が出る」との信念を、大山は今も大切にしている。
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<阪神2-0広島>◇7日◇甲子園
2年前は号泣…今年は笑顔! 阪神大山悠輔内野手(30)が7日、日刊スポーツ独占コラム「走姿顕心」のリーグ優勝特別版で、苦悩に満ちた1年間を赤裸々に振り返った。昨オフは国内フリーエージェント(FA)権を行使した上で、悩み抜いた末に残留。覚悟を胸に戦った5年契約初年度はシーズン序盤に魚雷バットも試すなど、試行錯誤の日々が続いた。新たな打順「5番」でエゴを捨て、打点にこだわり続けた1年。その舞台裏を本音で明かした。【佐井陽介】
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優勝できて本当にうれしいです! 国内FA権を行使した昨オフ、覚悟を持って残留を決断しました。監督、コーチ、裏方さん、そしてチームメートともう1回優勝したい気持ちが強かった。1つ目標を達成できて本当に良かったです。
今年は藤川監督から「5番で打点にこだわってほしい」と期待してもらい、バッティングに変化をつけました。場面によって打ち方やアプローチを変えながら丁寧に。ただ、特にシーズン序盤は仲間の足を引っ張るばかりで…。
僕が4番を打ち始めた頃の5番は福留孝介さんでした。今年は3番森下、4番(佐藤)輝明の2人が活躍してくれるけれど、当時の僕はまだ全然で。福留さんにどれだけ負担をかけていたのかと、今あらためて申し訳なく感じています。今年、僕の前を打つ2人は本当にすごかった。開幕前は「僕が2人を支える」と言ったけれど、実際は2人に引っ張ってもらいました。
「輝明の後ろ」という役割にはやりがいを感じています。輝明が申告敬遠された時に僕が何もできないと「じゃあ歩かせたらいいやん」となってしまう。特に輝明の四球直後は相手に嫌な印象を与えなければと必死でした。3、4番が凡退した後も打点にこだわりました。点を入れることで2人の凡退を薄めたかったのです。とはいえ、なかなか2人を支えられない日々が続いていたので、8月26日のDeNA戦ではつい感情が爆発してしまいました。
9回表2死から逆転2ランを打った時、思わずガッツポーズしてしまって…。「まだ試合が終わっていないのに何やってんだ」と猛省しました。実は僕には去年までの苦い記憶がありました。ガッツポーズした直後は必ずと言っていいほどピンチを招いたり自分がエラーしていたのです。実際、今回も9回裏にピンチがありました。8月の巨人戦で高寺が先制打を打ってガッツポーズした後、藤川監督が「まだ早い」とやんわり指摘していた言葉を、もう一度肝に銘じました。
藤川監督は常日頃からコミュニケーションを取ってくれる方です。コンディションにも気を使ってくれて、今季初めてスタメンを外れた7月4日DeNA戦の前も「この日はちょっと休もうか」と声をかけてもらっていました。この試合では8回に代打出場。気持ちの作り方など、後から出る選手の大変さを再認識させられました。そんな日もあったから余計に、あの試合を忘れられずにいます。
5月18日の広島戦。僕は一塁走者として打球判断を誤り、代打糸原さんの右前打を右ゴロにしてしまいました。本当に落ち込みましたし、しばらく引きずりました。糸原さんは「気にするな」と慰めてくれたけれど、ヒット1本を消したのは事実。自分のエラーや三振であれば「自分が悪い」で済みますが、仲間に迷惑をかけた時は本当につらくて…。そんな時はいつも家族の存在に救われました。
どれだけ悔しい結果に終わっても、甲子園から帰宅する車中で気持ちを切り替えるように心掛けています。もちろんいつも完璧にはできませんが、玄関の扉を開けると猫2匹が駆け寄ってきてくれる。奥さんが猫を抱っこして出迎えてくれる。その瞬間だけは頭の中から野球をパッと消すことができます。今年も家族、そしてファンの皆さんに支えられて優勝できました。
ただ、シーズンはまだ続きます。開幕前は「『残ってくれて良かった』と1人でも多くの方に思ってもらえるように」と言葉にしました。これからも叱咤(しった)激励の声がなくなることは絶対にないと思いますが、どれだけ打てなくても応援してくれる人がいる限り、勝利のために全力を尽くし続けるつもりです。(阪神タイガース内野手)
◆走姿顕心 かつての師匠、元阪神打撃コーチの広島新井良太2軍打撃コーチが大切にする言葉。「走る姿に自分の心や資質が出る」との信念を、大山は今も大切にしている。