松井秀喜さん ミスターとの約束は「言わなければ良かったと思って。いろいろと臆測を呼んでしまって」
巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏(51)=ヤンキースGM付特別アドバイザー=が30日、元巨人監督の高橋由伸氏(50)=スポーツ報知評論家=と都内ホテルで開催されたトークショーに出演し、将来の巨人監督就任の可能性について問われ「ジャイアンツの未来に自分自身が関わっても不思議はないかなと思っています」と言及した。6月に死去した巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄さん(享年89)との日々を「毎日のように振り返っています」と変わらぬ師匠への愛も明かした。
「巨人・松井」が誕生した地を訪れて、特別な気持ちになっていたのかもしれない。松井氏が高橋氏と出演した「週刊ベースボール4000号記念トークショー」の会場は、グランドプリンスホテル新高輪の飛天だった。92年のドラフト会議で当時の巨人・長嶋監督が4球団競合の末に当たりくじを引き、赤い糸がつながった運命の場所。「今の阿部巨人をしっかり応援してください。我々の大事な後輩ですし頑張ってほしい」と前置きし、言葉を選びながら、未来の巨人監督就任の可能性について問われて、答えた。
「ジャイアンツの未来に自分自身が関わっても不思議はないかなと思っています」
松井氏は6月4日早朝に長嶋さんの自宅を弔問後、「長嶋監督と生前、約束したこともあります」と明かした。その発言を踏まえ「監督との約束、言わなければ良かったと思って。いろいろと臆測を呼んでしまって。あの時は何か気持ちが高ぶってしまって。約束が何だったかは言えませんが」と約束の内容は秘したが、1000人超の聴衆による大きな拍手が、期待を物語っていた。
そして1学年下で、古巣の監督を務めた高橋氏を見やりながら「我々、年はほぼ一緒ですよ。監督2人制とか」と冗談めかしてラブコールを送る場面も。これに高橋氏は「慎之助が頑張っている中、我々は『やる』とも『やらない』とも言ってはいけない」とした上で「そうなればお手伝いは何でもさせていただこうと思います。上原(浩治)も何かしらやるでしょう」とバックアップを約束した。
壇上で「ジャイアンツは今でも大好き。(34年の球団創設)100周年に向けて我々OBも含めて、いいジャイアンツ、ファンに愛されるジャイアンツ、そして強いジャイアンツを目指していきたい。どういう選手を育て、どういうビジョンがあり、どういうチームにしていきたいか。全てうまくそろわないと本当にいいチームはできない」と巨人愛を強調した松井氏。6月3日に死去した長嶋さんに対する強くなる一方の感謝や、喪失感も吐露した。
「まだ信じられない状態で、長嶋さんがいないのかなと今でも思います。お亡くなりになられてからの方が長嶋さんのことを考える機会は増えました。長嶋さんとの日々をもう一回、全て振り返って。自分にどれだけ大きな影響を与えてくださったか、どれだけ愛情を注いでくださったか。この3か月は毎日のように振り返っています」
マンツーマンの素振り特訓や、ファンのために全試合出場して常に勝利を目指すプロとしての心構えなどを長嶋さんにたたき込まれて、球界を代表する打者へと成長を遂げた松井氏。ミスターと過ごした日々を思い出しながら、愛する巨人と自身の未来予想図を描く。(阿見 俊輔)
MVP強奪謝罪 〇…松井氏は2000年のダイエーとの日本シリーズでの秘話を明かした。「第5戦までは由伸がMVPと報知新聞にも書かれていて『そうなのか…』と思っていた」という。ところが第6戦でシリーズ3号を放つなど、印象に残る活躍をした松井氏が“強奪”。「あれは由伸に申し訳なかったですね」と高橋氏に笑顔で謝罪した。
岡本の来年「気になる」 〇…今季のリーグ優勝が厳しい中、松井氏は巨人がV逸となっても、昨季のDeNAのようなCS突破からの日本一奪還を期待した。「優勝できなくても最後までちゃんと戦って。去年は最後にベイスターズにやられたのだから、今年は逆にやり返す可能性は十分にある。たまには逆バージョンがあってもいい」と下克上を思い描いた。また、昨年の契約更改でメジャーについて言及した岡本については「大黒柱ですからね。でも、ジャイアンツファンとしては来年が気になりますね」と話した。
毎年15勝するエース欲しい 〇…高橋氏は松井氏との現役時代を「ずっと隣にいさせてもらって守るところもベンチでも横。年も1つしか違わないし、しかも一番いい打者。松井秀喜に置いていかれないようについていくしかなかった」と思い返した。トークショーでは松井氏に「いつかまたユニホームを着て指揮を執ってほしいと本当に思っています」と再登板を要請されて苦笑するシーンも。聴衆からの質問で、監督として欲しい選手を問われると、松井氏とともに「毎年15勝するエース」を挙げた。