出遅れる日本株、年初は世界で9年ぶり大敗-日銀利上げ観測がくびき
投資家の間で日本銀行の利上げ継続観測が強く、今年序盤の世界と比べた日本株相場のパフォーマンスは9年ぶりの悪さとなっている。
東証株価指数(TOPIX)の年初来騰落率は約2%安と、MSCIオール・カントリー・ワールド指数の5%高を下回る。ブルームバーグの調べでは、この時期に日本株がこれほど劣勢に立たされるのは2016年以来だ。
海外の主要中央銀行が利下げに動くのと対照的に日銀が利上げを続ける姿勢を示し、投資家の間で金利上昇と円高・ドル安への懸念が根強いことが背景にある。日本株の相対的な投資魅力は低下しており、日本取引所グループによると、海外投資家の年始6週間での買越額は2474億円と、昨年同期の10分1程度にとどまった。
圷正嗣氏を含むBofA証券の株式ストラテジストは1月末以降、日銀の利上げ期待が上昇していることが日本の市場特有の逆風として挙げられるとリポートで指摘した。利下げ期待が株価を押し上げているドイツや英国と「際立った対照」をなしているとみている。
もっとも、ストラテジストらの間では、国内の賃金上昇やコーポレートガバナンス(企業統治)改革が継続し、トランプ米政権の関税政策による日本への影響が相対的に小さいことに投資家が気が付けば、春以降はラリーが期待できるとの見方もある。
モーニングスターのアナリスト、カイ・ワン氏は、「企業の合併・買収(M&A)の活発化や経済活動の回復、企業が下期に業績予想を上方修正する傾向があることなど、日本株に強気材料となる小さなカタリストがいくつもある」と話す。
同氏の見方では、年明けのTOPIXには不運が重なった。1月下旬に日銀が利上げを決め、金融株などに利益確定の売りが発生したのと前後して中国の人工知能(AI)モデルDeepSeek(ディープシーク)が発表され、「中国への資金流入と日本からの資金流出が見られた」という。
この傾向は、トランプ米大統領の関税政策が明確になり、中国が影響を大きく受けるリスクの高い国として見られ始めることで変わる可能性がある。BofA証の圷氏は、日本が米国からの輸入に課す平均課税率は「比較的低い」ため、相互関税リスクは他の市場よりも小さくなると分析する。
ラザード・アセット・マネジメントのチーフ・マーケット・ストラテジスト、ロナルド・テンプル氏は、25年の日本株には物価上昇や春闘でのさらなる賃上げといった国内経済からの追い風も吹くと期待している。
企業統治改革により資本効率の改善や、アクティビストによる投資増が見込まれることも、日本株上昇を後押しするはずだと同氏は指摘。「日本はグローバルな投資家を引き付ける体制を整えつつあると楽観的に見ている」と述べた。