電力需要急増で増設へ本格始動、動兆前夜の「原発関連」有望6銘柄 <株探トップ特集>

―関西電が先陣切る、新エネ基本計画で脱炭素電源として最大限活用の方針明記―

 原子力発電を巡る状況が大きく動き出している。関西電力 <9503> [東証P]は7月22日、美浜原発1号機の後継機の設置を検討するため現地調査を再開すると発表した。 脱炭素とエネルギー安定供給の両立を図る考えのもと、他の電力会社に先駆けて新増設・リプレース(建て替え)に向け重要な一歩を踏み出した格好だ。同社は2010年に調査を開始したが、東日本大震災のあった翌年以降見合わせていた経緯がある。生成AIなどデジタル技術の普及によって電力需要が今後急増すると予想されるなか、安全確保を大前提とした原発の活用促進は避けて通れないだろう。

●三菱重はじめ軒並み人気化 政府は今年2月に策定した第7次エネルギー基本計画で、発電時に二酸化炭素(CO2)をほぼ出さない脱炭素電源として再生可能エネルギーとともに原発を明確に位置づけた。地政学リスクの高まりによって日本を取り巻くエネルギー情勢が大きく変化するなか、デジタル化の進展による将来的な電力需要の増加に対応するためには、これら2つの電源を「最大限活用」することが不可欠との考えだ。第6次計画(21年策定)に書かれていた「可能な限り原発依存度を低減する」との文言は削除され、原発再稼働を加速し、小型炉や核融合など次世代革新炉への建て替えを進める方針を鮮明にした。 日本の原発政策は大震災後に長らく停滞を余儀なくされたが、これが転換する契機となったのが22年のウクライナ紛争だ。エネルギー価格の高騰でそれまで火力一辺倒だった国内の電力事情は逼迫し、将来的に更なる普及が見込まれる再生可能エネも安定供給の面でまだ課題が多く限界が意識された。こうしたなか同年に当時の岸田政権が原発回帰に舵を切り、これを引き継ぎ現在の石破政権のもとで第7次計画が策定されるに至った。

 冒頭の関西電の話題を巡り、こうした新増設の動きが具体化するのは大震災後で初のことになる。これが各報道で取り上げられ、株式市場では関連銘柄の三菱重工業 <7011> [東証P]をはじめ、柏崎刈羽原発の再稼働思惑がくすぶる東京電力ホールディングス <9501> [東証P]など他の電力各社に買いが波及。助川電気工業 <7711> [東証S]など関連中小型株も軒並み物色人気となる場面があった。国策テーマとして息の長い相場が期待されるだけに関連銘柄からは目が離せないところで、今回その中から6銘柄を選抜した。

●配当面で魅力ある銘柄多い、利回り4%台も

 日本ギア工業 <6356> [東証S]は歯車をはじめ幅広い製品を製造。水や気体の流れを制御する「バルブアクチュエータ」で国内の原発向けシェア9割以上を誇る。7月31日に発表した4-6月期決算は営業減益で着地し、通期でも小幅減益を見込むが、注目は今後の売り上げにつながる受注高。発電所をはじめ石油・ガス、鉄道船舶といった分野で案件を獲得し、4-6月期時点で前年同期比4割近い増加に。株価は今期減益予想をものともせず年初来高値圏で堅調な動きをみせている。

 イーグル工業 <6486> [東証P]は機械部品の総合メーカー。液体漏れを防ぐ「メカニカルシール」の大手で、さまざまな産業に向けて展開するなか原発向けにも製品を供給する。また、同社が手掛ける「主蒸気隔離弁」は国内の多くの沸騰水型原発で採用されている。直近で26年3月期業績・配当予想の上方修正を発表し、株価は急伸。足もと約10年ぶりの高値圏で推移しているものの、株価指標をみるとPBR1倍割れ近辺で配当利回りは4%台半ば。依然として割安感が意識される。

 西華産業 <8061> [東証P]は三菱重系の機械商社。23年から三菱重の原発設備の販売代理店業務をスタートし、更に同年に発電所向けバルブのTVE <6466> [東証S]、翌24年に発電所内の消火設備を手掛ける産業機器メーカーの日本フェンオール <6870> [東証S]をそれぞれ持ち分法適用会社化するなど原発分野に近年力を入れている。これが奏功し、25年3月期は4期連続の2ケタ営業増益で最高益を達成。続く26年3月期も小幅増益を見込む。配当利回りは4%超。7日に決算発表予定だ。

 ベステラ <1433> [東証P]は「リンゴ皮むき工法」など独自技術に強みを持つプラント解体工事会社。発電所の新規建設に際しては当然ながら既存施設の解体が必要となる。同社は石油精製や石油化学、製鉄、製鋼、ガスと幅広い産業で活躍し、発電所向けでは原子力から火力、水力、風力まで手掛ける。豊富な案件を背景に26年1月期営業利益は前期比3.2倍の12億円と、7期ぶり最高益を予想。配当予想は普通配当30円に上場10周年記念配当10円を上乗せし、年40円を計画する。

 岡野バルブ製造 <6492> [東証S]は発電所向けバルブのトップメーカー。国内シェア(22年時点)は火力向けで9割、沸騰水型原子炉向けで8割を誇り、世界では60ヵ国以上に製品を納入した実績を持つ。納入後のメンテナンスも手掛け、こちらも実績豊富だ。足もとは柏崎刈羽原発をはじめ国内向けのほか海外向けの販売に注力し、メンテナンス部門では想定以上の工事進捗に。営業利益は10ヵ月変則決算の25年9月期予想(9億2000万円)に対し、上期時点(7億6000万円)で8割強と好調だ。

 東京産業 <8070> [東証P]は三菱重系の機械商社で火力・原子力向け関連機器や保守・メンテナンスを手掛ける。同業の西華産業が4月に大量保有報告書を提出し、東京産業株を11%超取得したことが判明。保有目的は「投資収益を目的とした株式取得」とした上で「今後政策保有目的へ変更の可能性を検討していく」としており、今後の展開が注視される。業績面では25年3月期に3期ぶり最終黒字転換を果たし、26年3月期も7割増益と急拡大を見込む。配当利回りも4%台と高水準だ。

株探ニュース(minkabu PRESS)

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