アルテミス2の合成アニメが映し出す、地球低軌道のとんでもない混雑ぶり

Image: Artemis II / NASA / ESRS / Seán Doran

電灯の周りを飛ぶ虫の群れみたい。

地球の周りを無数の物体が飛び交っているという話はよく耳にしますが、その光景を自分の目で確かめる機会はめったにありません。NASA(アメリカ航空宇宙局)が数年前にわかりやすく映像で可視化していましたが、今回、アルテミス2のおかげで地球低軌道の混雑ぶりを垣間見ることができました。

地球の周りを飛び回る人工衛星の群れたち

アルテミス2は、息をのむような月の画像と並んで、地球の画像も多数撮影しました。そのなかには、地球の周りに無数の小さな光が映り込んでいる画像があります。

静止画で見ると単なる星みたいに見えるのですが、大型掲示板サイトのRedditにあるアルテミス板のユーザーたちが「これって衛星よね」と指摘したとおり、実際に低軌道を周回する人工衛星も含まれています。

幸いなことに、連写された画像が十分にあったため、つなぎ合せてアニメーション化できたそうです

そのなかでも特に印象的だったのが、Seán Doran氏がBlueskyに投稿した映像です。そこには、地球を周回する無数の小さな物体が映っており、太陽の光を反射してキラキラ光る様子を確認できます。Blueskyの投稿が埋め込み不可になっているため、ここで直接見ることはできませんが、ぜひリンク先で確認してみてください。口がポカーンとなるくらい飛びまくっています。

データが示す人工衛星が群がる地球

映っている物体の正体までは、はっきりしません。それでも、わずか数秒の合成映像にこんなに多くの物体を確認できるという事実に、軌道上にどれだけ多くの人工物が存在しているかを痛感させられます。

軌道上の人工衛星の数については、情報源によってばらつきがあります。CelesTrakの衛星カタログによると、記事執筆時点で稼働中の人工衛星が1万5763基、運用を終えた衛星が2917基、ロケット本体が2269基、宇宙ごみが1万2513個、さらに正体不明の物体が51個の合計3万3513個にのぼる人工物が登録されています。

同様のデータを提供しているKayhan SATCATでは合計36,951個アメリカ宇宙軍はもっと多くて、5万500個としています。

これらの人工物の大部分は、地表から2000km未満の低軌道に集中しています。

その数は増加の一途をたどっています。宇宙軍のデータ(宇宙ごみを除く)を用いたOur World in Dataのグラフを見ると一目瞭然で、低軌道上に漂う物体の数は、2020年の6068個から2025年には1万6084個と、3倍近く増加しています。

人工衛星が増え続けると衝突リスクも増大

要するに、ほぼすべての指標が、私たちの頭上には途方もない数のごみが存在していて、しかも毎日のように新たな物体が追加され続けていることを示しています。これはかなりヤバいです。

ロケットを打ち上げるたびに、衛星はもちろん、宇宙ごみと衝突しないように、安全な時間枠を慎重に計算する必要があります。

低軌道を周回する物体は、時速2万8080km移動しているため、どんなに小さい破片でもめちゃくちゃ危険で、打ち上げられた機体に深刻なダメージを与えます。大規模な衝突が起これば、壊滅的な結果をもたらします。

Aerospace.orgは、軌道上での衝突について、率直に言って背筋が寒くなるような説明をしています。

軌道速度で発生する超高速の衝突は、私たちが普段目にする衝突とはまったく異なります。物体の移動速度が極めて速いため、衝撃波が伝わるよりも先に物体同士が互いを貫通してしまい……その結果、まるで互いを貫通して、反対側で爆発したかのような様相を呈します。

同じ記事には、物体のサイズごとの衝突エネルギーをまとめた表も載っています。

1mm程度の粒サイズの衝突エネルギーは、TNT換算で0.0003kgで、野球の投手が投げるボール程度だそう。

一方で、アメフトのフィールドくらいのサイズになると、TNT換算で最大10ギガトンに相当するエネルギーに達します。記事では「非常に大きな爆弾」とされていますが、かなり控えめな表現といえるでしょう。

なんせ、この数値は「爆弾の帝王」の異名を持つ「ツァーリ・ボンバ(旧ソ連が実験を行なった爆発規模が史上最大の水爆)」の200発分、あるいはサンダイヤル計画(冷戦時のアメリカで計画された超巨大核兵器)1発分に相当します。

今回の映像は、私たちが住む地球の美しさを捉えたものでもありますすが、よく目を凝らすと、薄ら恐ろしい光景でもあるんですよね…。

Source: NASA (1, 2), Reddit, Bluesky, CelesTrak, Satcat, Space-Track.org, Our World in Data, ESA, Aerospace, The Bulletin

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