ケニア最大級のスラム街でビットコインが広がる理由|Afribit創業者インタビュー
ケニアの首都ナイロビに位置するキベラ。アフリカ大陸で2番目の規模を誇るこのスラム街で、ビットコインが静かに、しかし確実に人々の生活に浸透し始めている。
銀行口座を持つことすらできない住民たちにとって、スマートフォンさえあれば利用できるビットコインは、単なるデジタル通貨以上の意味を持つ。加速する自国通貨のインフレから資産を守る貯蓄手段として、そして国境を越えた送金を可能にするツールとして、日常生活に欠かせない存在になりつつあるのだ。
だが、普及への道のりは平坦ではない。「暗号資産=詐欺」という根強い先入観、不透明な規制環境、そして何より「本当に貧困からの脱出につながるのか」という本質的な問いが立ちはだかる。
こうした課題に対する一つの解として登場したのが「Stablesats」だ。ビットコインの価値をドルに連動させることで価格変動リスクを抑え、より多くの人々が安心して利用できる環境づくりを目指している。
Big shoutout to all Bitcoin educators in KE! A graduate from @thecore21m @Pacs3w is using his music to spread Bitcoin awareness in Kibera and beyond. Here’s a preview of his video dropping this week pic.twitter.com/P6SeqSXWni
— AFRIBIT KIBERA (@AfribitKibera) September 1, 2025
本記事では、キベラでビットコイン採用プロジェクト「Afribit」を立ち上げたロニー・ムダウィダ氏への質問を通じて、現地の実像を紹介する。
インタビュイー紹介と設立の背景
ロニー・ムダウィダ氏のプロフィールと「Afribit」設立の背景について教えていただけますか
私は15年以上にわたり、東アフリカ全域で社会から取り残された疎外されたコミュニティと直接関わってきました。私の活動は地域に密着した開発支援が中心で、スラム街、農村地域、乾燥地域の人々の自立支援に取り組んでいます。
The Ronnie Fund(地域住民による非営利の支援団体)を通じた長年の活動により、これらのコミュニティが抱える特有の課題、特に援助に頼らざるを得ない状況や、銀行などの金融サービスを利用できない現実について、深く理解するようになりました。私はKosmos Solutions(非営利の非政府組織)やThe Ronnie Fundなど新たな収入源の創出、教育環境の改善、金融サービスへのアクセス向上を目的とした複数のプロジェクトを立ち上げてきました。
CEO ロニー・ムダウィダ(Ronnie Mdawida)氏
Afribitは、パートナーのYogi氏と共に、The Ronnie Fundのプロジェクトとして立ち上げました。先ほどの15年間の活動を通じて見えてきた重要な問題に取り組むためです。キベラのようなコミュニティでは、ほとんどの人が銀行サービスを利用できません。これらのコミュニティは、不安定な援助に頼らざるを得ず、従来の金融サービスから完全に切り離されていました。
真の自立には、自分でお金を管理できることが不可欠だと考え、この問題を解決するために「Afribit」を設立しました。私たちの使命は2つです。「銀行に頼らない新しい金融の仕組みを提供すること」、そして「人々が経済的に自立するための実用的なツールとしてビットコインの利用を広めること」です。
キベアにおけるビットコインとステーブルコインのリスク比較
多くの人が、ビットコインは貧困層にとって変動性が高すぎ、一方でステーブルコインは国家通貨を弱体化させるリスクがあると言います。キベラのようなコミュニティにとって、どちらの「リスク」がより受け入れられると考えますか
キベラのようなコミュニティにとって、どちらのリスクも存在します。ビットコインは価値が大きく変動する可能性があり、ステーブルコインは現地通貨を弱める可能性があります。だからこそ、BlinkアプリのStablesats機能が役立つのです。
この機能により、人々はビットコインのネットワークを使いながら、資金を安定(ドルに連動)させています。大きな価格変動リスクを避けながら、ビットコインのグローバルで、オープンで、検閲耐性のある恩恵を享受できます。
つまり、2つのリスクから選ぶのではなくより安全な選択肢となるのは、今日の安定性を提供しながらビットコインの長期的な利益を維持するStablesatsのようなツールを使用することです。
主要な違い
- ステーブルコイン:法定通貨に連動した新しいトークン、企業やプロトコルによって発行される
- Stablesats:ビットコイン内でのヘッジポジション(価格変動抑制)。安定した残高を模倣するが、新しいトークンも発行者もない
このように考えてください。
- ステーブルコイン = 「私は誰かのドルのIOU(借用証書)を保有している」
- Stablesats = 「私はビットコインを保有しているが、その価値がドルのように振る舞うようロック(価格変動から保護)されている」
詐欺被害の具体的な事例
ケニアでの採用が進む中で、最も対処するのが困難だった誤解は何でしたか
ケニアで最も対処するのが困難だった誤解のうち1つは、ビットコインがオンライン詐欺、ねずみ講、「一攫千金」の取引スキームと同じものだという誤解です。多くの人がそれを単なる投機としてしか見ていません。
詐欺/スキャムが最も対処困難な誤解の一つだったと述べていましたが、具体的な事例を共有していただけますか
人々がビットコインを疑うのには、個人的な理由があります。私たちが関わる人々の多くが、本人か身近な人が実際にお金を失っているからです。
実際、コミュニティメンバーが共同で資金を集めてビットコインを購入したものの、信頼していた仲介者が資金を持って姿を消したケースを約10件確認しています。また、自己保管の原則を理解せず、規制されていない取引所に資金を残したために損失を被った人々もいます。これらの経験により、多くの人が「ビットコイン自体が詐欺だ」と信じるようになりましたが、実際に問題は彼らが信頼したプラットフォームや個人にありました。
特にスラム街では、すぐにお金が必要な状況が人々を一攫千金物語に騙されやすくしています。例えば、私たちのセッション参加者の一人は、「自動的に増える」固定リターンを約束されて400ドルを失った経験を共有しました。彼女は、ビットコイン自体に投資しているのではなく、詐欺的なプラットフォームに資金を渡していることに全く気づいていませんでした。
さらに混乱を招いているのは、アフリカで積極的に宣伝されている無数の怪しい暗号通貨です。多くの被害者が怪しいトークンで資金を失い、その後、ビットコインを含むすべてのデジタル資産が詐欺だと結論付けます。
これが、私たちの活動が教育、自己保管、信頼構築に大きく焦点を当てている理由です。私たちは、ビットコインは一夜にして利益を生み出すツールではなく、長期的な資産形成のための手段であり、投機ではなく金融的な自立のためのツールであることを強調しています。
デジタル資産への信頼構築
歴史的に対面でのやり取りやM-Pesaのような送金サービスを通じて金融的信頼が築かれてきたコミュニティにおいて、人々が真にデジタル資産を信頼するために何が必要でしょうか
人々は実際の問題を解決する”ソリューション”を信頼します。多くのケニア人にとって、M-Pesa(ケニアのモバイル送金サービス)でさえ限界があります。あなたのM-Pesa残高はケニアシリング(ケニアの法定通貨)であり、シリングがインフレに対して価値を失うと、あなたの貯蓄は静かに減っていきます。学費やトタン屋根などの住居維持のために貯蓄している人にとって、この「見えない税金」は深刻な打撃となります。
ビットコインは検証可能な供給量を持ち、どの政府や企業によってもインフレを起こすことはできません。シリングとは異なり、今日ビットコインで貯蓄された10,000シリングは、時間の経過とともに購買力を維持します。私たちはビットコインをケニアの伝統的な貯蓄グループ「チャマ」(相互扶助組織)のデジタル版として、国の経済的不安定から資金を守る手段と考えています
ビットコインはM-Pesaを置き換えるためではなく、M-Pesaにできないことを可能とします。携帯電話があれば、誰でも銀行、ID、許可を必要とせずに、お金を貯蓄、送金、受け取ることができます。まだ教育面での課題が残っていますが、銀行口座を持たないか排除されているキベラの人々にとって、ビットコインは銀行に頼らず自分たちのやり方で貯蓄や送金ができる新しい選択肢です。
Stablesats機能の実際の利用例
BlinkアプリのStablesats機能を使用するユーザーの声を共有していただけますか
実際に商人がどのようにビットコインを活用しているか、具体例をお話しします。
Abeboという商人は、ビットコイン決済を受け入れ、Stablesatsを使って日々の仕入れ資金を安定させています。彼女は長期的にビットコインを保有する戦略を取り、価格が上がったタイミングで必要な分だけ現金化しています。
別の商人Night Muthoniは「Stablesatsのおかげで、商売をする上で価格変動の心配をしなくて済みます」と話しています。
規制の必要性
ケニアはVASP法案の下でデジタル資産をどのように規制するかまだ議論中です。現場での経験から見て、キベラのようなコミュニティを排除するのではなく、実際に支援するような規制フレームワークはどのようなものでしょうか
ケニアのデジタル資産規制は、貧困層を締め出すことなく消費者を保護すべきです。キベラのようなコミュニティにとって必要なのは、次の3点です。
小規模な起業家や商人が参加できるよう参入障壁を低く保つこと。一般ユーザーではなく詐欺に対する取り締まりに焦点を当てること。そしてコミュニティ主導のプロジェクトがその価値を証明できる実証実験の場(サンドボックス)を設けることです。
こうした規制により、安全性と包摂の両方を実現できます。
短期的・長期的指針
非公式居住区での仮想通貨採用を、主に短期的な生存のためのツールと見ていますか、それとも住民にとって長期的な富と機会を築くことが現実的に可能だと考えますか
私の考えは以下の通りです。
短期的には、ビットコインは非公式居住区の住民に、銀行を必要としない価値保存・移転方法を提供します。取引コストが低く、インフレからも資産を守れるため、日々の生活に即座に役立ちます。
長期的には、ビットコインを地域で循環させることで、コミュニティは不安定な現地通貨や外部援助への依存を減らす自立した循環経済を構築できます。ビットコインの価値が上昇するにつれて住民は資本成長を得るだけでなく、自分たちのミクロ経済も強化できます。
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エックスアールピー(XRP)は、リップル社等が開発に参加するオープンソースの分散型ブロックチェーン「XRP Ledger(XRPL)」の暗号資産(仮想通貨)。
2011年から2012年初頭にかけて、ジェド・マケーレブ(リップル社の共同創業者)、デイビッド・シュワルツ(同社CTO)が独自のコンセンサスアルゴリズム「Ripple Protocol Consensus(現XRP Ledger Consensus Protocol)」を開発し、2012年にメインネットが起動。
決済に特化した通貨として設計され、高速かつ低コストのトランザクションを実現し、高度なスケーラビリティを有す。米リップル社が開発する国際送金ソリューション「Ripple Payments」をはじめとする、様々なユースケースが構築されている。
価格
- 現在価格(2025年8月11日時点): 3.26ドル(約482円)
- 年初来高値(2025年7月): 約3.66ドル(約540円)
- 年初来騰落率(YTD): +57.44%
- 過去最高値(2018年1月): 3.8419ドル(約567円)
価格動向
関連:XRPが2028年に12.5ドル到達か、イーサリアム超えの可能性も スタンダードチャータードの価格予測|25年4月
リップル社とSEC和解でXRP急伸、トランプ政権の仮想通貨政策など複数の材料が相場押し上げ|25年8月
時価総額
エックスアールピー(XRP)の時価総額は2025年7月時点で約1,940億ドル(約28兆円)、ステーブルコインのUSDTを上回り、仮想通貨市場の第3位。決済セクターの中では1位に位置する。同カテゴリで2位のドージコイン(DOGE)の時価総額は約361億ドル、3位のビットコインキャッシュ(BCH)は約115億ドル。
主な出来事
エコシステム支援組織
リップル社: 2012年9月にNewCoin Inc.として設立(技術開発チームにクリス・ラーセン氏が加わり、4名体制で創業)。後にOpenCoin Inc.に社名を変え、2013年9月に現在のRipple Labs Inc.へと改名された。
リップル社はRipple Netなどのソリューションを使って経済的な国境のない世界のための画期的なソリューションを構築することを目指している。カストディ企業を買収してステーブルコイン「RLUSD」へと展開し、XRPのエコシステムを主導している。
関連:リップルのステーブルコイン「RLUSD」× 機関投資家向け戦略 SBIとの協業も
トークンアロケーション
XRPの総発行枚数1,000億XRPは、2012年のネットワークローンチ時にすべて生成された。技術的には、この1,000億XRPは最初にGenesisアカウントに生成され、その秘密鍵情報はソースコードにハードコーディングされていた。
初期配分の詳細
配分先 XRP数量 割合 Ripple Labs社 800億XRP 80% 創業者配分(合計) 200億XRP 20% Chris Larsen 90億XRP 9% Arthur Britto + Jed McCaleb 110億XRP 11%注:技術開発に貢献したDavid Schwartzは初期配分を受けていない
2017年にXRPレジャーにエスクロー機能が実装され、リップル社保有分のうち550億XRPがロックされた。
出資している主なVC
- 資金調達総額:2.9億ドル
- シリーズC: 2019年12月20日 調達資金は2億ドル
- リードインベスター: Tetragon Financial Group Limited
- フォロー投資家: SBI Investment、Bossanova Investimentos、Route 66 Ventures
XRPの将来性
リップル社のRLUSDとRWA戦略
企業向けのステーブルコイン「RLUSD」が時価総額5億ドルを突破。GENIUS法案により規制の明確化が進み、今後は実世界資産(RWA)のトークン化プラットフォームとしての展開にも注目。RLUSD利用増加により、(XRPLの取引手数料として使用される)XRPの需要押し上げ効果も期待される。
2025年7月、XRPに影響を与える2つの重要法案(CLARITY法案・GENIUS法案)が米下院で可決。SECとCFTCの権限明確化やステーブルコインの規制枠組み整備が進展。
XRP ETFの審査状況
現物(スポット)XRP ETFについては、Franklin Templeton、Grayscale、Bitwise、21Shares、WisdomTree、CoinSharesなどが申請中。Franklin Templetonに対するSECの判断期限は2025年6月17日だが、年内のさらなる延期も予想されている。
米国アルトコインETF申請リストと承認確率 出典:ブルームバーグ・インテリジェンス
ブルームバーグのアナリストは、2025年中の現物XRP ETFの承認確率を85%と予測している。一方、2025年4月28日にはProSharesによるXRP先物ETF3本がSECに承認され、同月30日から取引が始まっている。
ロードマップ
リップル社は、XRP Ledger(XRPL:リップルが開発したブロックチェーン)で機関向けDeFi(分散型金融)強化の一環として、2025年7月にイーサリアム互換のスマートコントラクトを導入するサイドチェーン「XRPL EVM Sidechain」をメインネットで稼働した。ユースケース・機能拡大が期待される。
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レイヤー1ブロックチェーン「Neo(ネオ)」は、2014年に中国で立ち上がり10年以上にわたり開発が続く長い歴史を持つプロジェクトだ。イーサリアムと似た機能を備えることから “中国版イーサリアム” とも呼ばれ、アプリ開発に必要な機能を標準搭載した使いやすい設計が特徴である。
ブロックチェーン開発にありがちなツールの分断や複雑さ、開発環境の制限といった課題に向き合い、「人が自由に経済活動を行える世界」=スマートエコノミーの実現を掲げてきた。 その基盤として、オールインワンで開発可能なNeo N3や、イーサリアム互換を持つNeo Xを整備している。
さらに近年は、AIの進化を背景に「AIが経済活動を担う時代」=センチエントエコノミーを構想し、2025年には中核となる新OS「SpoonOS」を発表した。 加えて、国内仮想通貨取引所の「OKCoin Japan」への上場、日本最大規模のWeb3カンファレンス「webX」への継続出展、日本発Web3投資ファンド「gumi Cryptos」との提携など、日本市場を戦略拠点として位置づけている。
本記事では、Neoの基本構造から最新の技術トレンド、さらには日本市場における取り組みまで、現在のNeoの全体像を解説する。
Neo誕生の背景(これまでの課題点)
ブロックチェーンが登場した当初、多くのプロジェクトは「金融取引の代替」や「通貨発行」に焦点を当てていたが、やがてスマートコントラクト技術の進化によって『アプリケーションの構築』へと活用の幅が広がっていった。
こうした潮流のなかで、より簡単にブロックチェーン上でアプリやサービスを開発できるようにすることを目的として、2014年に中国で誕生したのがNeoだ(当時はAntsharesとして始動)。
技術的な自由度と開発者の使いやすさを両立しながら、スマートコントラクト・デジタルID・資産管理といったブロックチェーンに不可欠な機能を標準で備えるプラットフォームを目指し、Neoは構想・開発を重ねてきた。
Neoとは?
Neoは、ブロックチェーン上でアプリやサービスを作る人たちにとって、使いやすく、整った開発環境を提供することを目的に設計されたレイヤー1のブロックチェーンである。
Neoが掲げるのは「より簡単にブロックチェーン開発ができる世界」であり、その実現のために2つの基盤―「Neo N3」と「Neo X」を開発してきた。
オールインワンで完結する「NEO N3」
ブロックチェーン上でアプリを作るには、スマートコントラクトやストレージ、オラクル、ID管理など多くの機能を組み合わせ、従来の開発環境では、これらを外部ツールから寄せ集めて構築する必要があり、手間もリスクも大きかった。
NEO N3は、そうした課題を解消するために生まれた。アプリ開発に必要な機能をすべてあらかじめ内蔵したオールインワン型のプラットフォームであり、開発がNeo内で完結するのが最大の特徴だ。
また、複数のプログラミング言語に対応し、Web3未経験の開発者にも開かれた、柔軟で親しみやすい開発環境を整え、さらにNeoは、「dBFT」という独自のしくみを使って、ネットワークの安全性とスピードのバランスを取っている。これにより、1秒間に最大1万件の取引を処理できる高性能なブロックチェーンとして、実用性の高い環境を実現している。
開発の幅を広げるサイドチェーン:Neo X
Neo N3は、高速かつ安全なアプリ開発環境を提供する一方で、独自の言語であるNeoVM上で動作するため、Web3で主流のEVM(Ethereum Virtual Machine)と互換性がないという課題があった。
EVMとは
Ethereum Virtual Machine。イーサリアムのスマートコントラクト実行環境。EVMとの互換性を得ることで、ユーザーや資産、dAppsの相互乗り入れが容易になるため、良くも悪くも戦略で重視される。
EVM向けの言語Solidityや既存ツールが使えないことから、開発者の参入や資産の流入にハードルがあり、拡張性の面で限界があった。
そこでNeoは、EVM開発者も柔軟に参加できる土台として、2024年にEVM完全互換の新サイドチェーン「Neo X」を公開した。
Neo Xの登場により、Neo N3が持つオールインワン型の開発環境や高速な処理能力といった強みを活かしながら、SolidityなどEVMベースのツールや資産にも対応できるようになった。これにより、より多くの開発者がNeoエコシステムに参加しやすくなり、既存のEthereum系プロジェクトの展開もスムーズに行えるようになった。
さらに、 取引の先回りや不公平な並び替えを防ぐ設計「MEV耐性」を導入しているため、開発者とユーザー双方にとって公正な取引環境を提供することができる。
Neoの歴史と運営体制
Neoは、2014年に Da Hongfei(ダ・ホンフェイ) と Erik Zhang(エリック・チャン) によって「Antshares」として設立されたブロックチェーンプロジェクトである。当初、中国・上海を拠点に10人足らずのメンバーで始動したが、現在では50人以上の組織へと成長し、Microsoft、Facebook、Amazon、Samsungなどの大手企業出身者も含むグローバルな開発者コミュニティを形成している。
開発実績
2014年 プロジェクト発足(Antsharesとして始動) 2016年 MainNetローンチ 2017年 Neoへリブランディング 2021年 Neo N3ローンチ(最大規模のアップグレード) 2024年 Neo X(EVM互換サイドチェーン)公開 2025年 SpoonOS構想発表(AI × Web3エージェント基盤)経営陣
共同創設者兼Neo Foundation会長: Da Hongfei氏2014年にNeoの前身であるAntsharesをErik Zhang氏と共に設立した共同創設者であり、現在はNeo Foundationの会長およびNeo Global Development(NGD)のCEOとして、エコシステム全体の戦略立案と実行を統括している。
共同創設者兼チーフアーキテクト: Erik Zhang氏Da Hongfei氏と共に設立した共同創設者で、Neoのチーフアーキテクトとして、独自のコンセンサスメカニズムであるdBFTを設計し、プロトコルの設計および開発を担当している。
資金調達
Neoは2016年にICO(トークン販売)を通じて約500万ドルを調達し、開発およびエコシステムの構築を進めてきた。
持続可能なトークンモデル
Neoが外部資金に依存せずにプロジェクトを継続できた背景には、独自の「デュアルトークンモデル(NEOとGAS)」の存在がある。
この2つのトークンが、Neoのネットワーク運営と経済的持続性を支える基盤となっている。
デュアルトークンモデル
NEOでは、「NEO」と「GAS」という2種類のトークンが存在する。これは、ネットワークの運営(NEO)と利用(GAS)を分離することで、シンプルかつ持続的な設計を実現するためのものだ。
NEO:ネットワークの根幹を支えるガバナンストークン
NEOはジェネシス段階で総供給量1億枚を発行し、このうち5,000万枚をICOで販売、残る5,000万枚はNeo Foundationがロックアップした、主に開発費やエコシステム拡充の資金源として活用されている。
NEOは、ノード選出やネットワークの意思決定など、ガバナンスに関わる機能を担う基軸トークンだ。分割ができない設計となっており、1単位ごとにGASを生成する仕組みが組み込まれている。保有者は、トークンを保有しているだけでGASを得ることができるため、ネットワーク参加のインセンティブとしても機能している。
NEOトークン基本情報 総発行量 1億枚 時価総額 約550億円 市場ランク 130位 流通チェーン Neo N3 主な取引市場 Binance, Upbit, OKX *2025年7月8日時点 時価はコインマーケットキャップ参照GAS:ネットワークの利用を支えるユーティリティトークン
GASは、スマートコントラクトの実行やトランザクション処理といったネットワーク利用に必要な手数料として用いられる。GASは、ブロック生成ごとに発行され分配される仕組みとなっており、10%がNEO保有者に、80%が投票参加者に、残りの10%がネットワーク運営を担うNeo Councilメンバーに配分される。単なる保有だけでなく、ガバナンスやノード運営への参加に応じて報酬が得られる、インセンティブ設計が特徴となっている。
GASトークン基本情報 総発行量 6,500万枚 時価総額 約270億円 市場ランク 186位 流通チェーン NEO N3 主な取引市場 Binance, Upbit, OKX *2025年7月8日時点 時価はコインマーケットキャップ参照持続可能な運営のための経済モデル
Neo Foundationなどの主要な保有者は、NEOの保有→GASの生成→市場での売却→資金化という流れにより、継続的な運営資金を確保してきた。このモデルによって、VC資金や頻繁な外部調達に頼らず、ネットワークの経済活動そのものが運営基盤となる仕組みが構築されている。
日本市場への展開
NEOは2019年以降、gumi Cryptosとの提携、国内取引所上場、WebX参加を通じて日本市場での展開を強化。NEOは日本を戦略的重要市場と捉え、Web3エコシステムの拡大を目指している。
gumi Cryptosとの提携
2019年8月、NEOはgumi Cryptos Inc.と戦略的パートナーシップを締結した。gumi Cryptosは日本市場でのマーケティングとコミュニティ形成を支援し、NEOのブロックチェーン技術を活用したゲームなどのWeb3アプリケーションの展開を促進。両社は日本の開発者がNEOエコシステムに参加しやすい環境を構築し、ワークショップやイベントを通じて技術普及を目指している。
WebXへの展開
Neoは2023年のWebX初開催から、3年連続でスポンサーとして参加。2023年はシルバースポンサー、2024年はプラチナ、そして2025年はゴールドスポンサーとして名を連ねている。
この継続的な支援は、日本の開発者・企業・コミュニティとの関係構築を重視し、長期的な協力体制を築く意向を示すものとなっている。