【日本市況】円上昇して一時148円台、トランプ氏通貨発言で-株下落
4日の日本市場では一時1ドル=148円台に円が上昇した。米景気減速懸念にトランプ大統領の発言が加わり、円が買われて株価は大幅に下落した。
円は一時1ドル=148円60銭とニューヨーク市場終値比で0.6%高。米供給管理協会(ISM)の2月の製造業総合景況指数が前月比で低下して予想も下回った。景況感悪化による米長期金利低下にトランプ氏の通貨安政策に絡んだ日本への発言もあった。148円台半ばは抜けられず149円台に戻している。株価は急落。長期金利は10年国債入札の不調を受けて上昇(債券相場は下落)に転じた。
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円相場を巡っては三村淳財務官が実質賃金上昇に向けて懸案事項の一つといった趣旨を3日に発言していた。国内外から円安を懸念する声が出たことで、日本銀行の利上げ姿勢について市場は5日に予定される植田和男総裁の発言と内田真一副総裁の講演・会見に注目している。
円は対ドルで2月25日に付けた148円57銭を抜けられず、149円台に戻している。大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、「いったんは上値トライに失敗した」と指摘。一部の投資家が円の持ち高を手じまい、ドルを買い戻していると述べた。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之部長は「まだ円の上昇が終わった感じはしない」と語った。石破茂首相はじめ日本政府も輸入インフレ抑制の必要性と日銀利上げ容認という点で米国と方向性は一致しており、当分は円高圧力がかかり続けるとみている。
国内為替・株式・債券相場の動き-午後3時半- 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.1%高の149円39銭
- 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.7%安の2710.18
- 日経平均株価は1.2%安の3万7331円18銭
- 長期国債先物3月物の終値は前日比11銭安の139円33銭
- 新発10年債利回りは1.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.42%
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=149円台半ばで推移。トランプ大統領が日本などの通貨安をけん制したことを受けて円買いが進んだが、上値のめどとされた148円57銭を抜けなかったことで、ドルが買い戻されている。
日本政府は通貨安政策を否定しているが、ウクライナへの軍事支援の一時停止を命じたこともドル売り・円買いに拍車をかけたとの声が出ていた。
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三井住友銀行の鈴木浩史チーフ・為替ストラテジストは、ウクライナへの軍事支援停止を受けて株式相場が大幅に下げるなど、投資家のリスク回避の動きもドル安・円高につながっている可能性があると指摘。円は147円台まで上昇することも「十分あり得る」とみている。
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株式
株式相場は大きく下げ、日経平均株価が一時900円以上も下落した。トランプ大統領が4日からカナダ、メキシコに対し関税を発動する方針を確認したほか、円安をけん制する発言を行ったことで投資家のリスク回避姿勢が強まり、半導体などテクノロジー株や自動車など輸出関連株中心に売られた。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、米国の追加関税が世界経済に与える影響が懸念され、外需セクターから医薬品などディフェンシブセクターへ資金を移す動きが相次いでいると指摘。関税への懸念と円高が重なり、「リスクオフムードがかなり強い状況にある」と述べた。
半導体装置メーカーのアドバンテストは一時9%下落、同業のディスコやルネサスエレクトロニクスも安い。カナダのアリマンタシォン・クシュタールからの買収提案を拒否すると一部報道で伝えられたセブン&アイ・ホールディングスの下げが目立った。
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一方でIHIや三菱重工などの防衛関連銘柄は、欧州の指導者たちが支援を強化する方針を示したことで欧州の防衛株が軒並み高となったことを受けて、取引量を伴って上昇した。
債券
債券相場は下落。この日実施された10年国債入札の結果が不調となり、売り圧力が強まった。午前の相場は米国の景気懸念や株価の大幅下落を受けて買いが優勢だった。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、10年債入札について、午前に利回り水準の調整がなかったことや内田日銀副総裁の講演を控えて投資家は買いづらかったと指摘。銀行は3月決算期末を控えて年度内の予算を使い切ったことで買う余力がなかった可能性もあるとして、「急いで買う必要もないのだろう」との見方を示した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは、リスク回避の債券買いが入ってもおかしくなかったが、先行き不透明感の強さから投資家の手控え姿勢の方が勝ったと指摘。債券市場では買い手不在の状況が続いており、金利は上昇方向との見方を示した。
10年債の入札結果によると、最低落札価格は98円03銭と市場予想(98円26銭)を大きく下回った。大きいと不調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は21銭と前回3銭から拡大し、2024年8月以来の水準に拡大。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は2.66倍と前回3.18倍から低下し、21年10月以来の低水準だった。
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新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.830% 1.060% 1.415% 2.060% 2.365% 不成立 前日比 +0.5bp +2.0bp +1.0bp +1.0bp +0.5bp -この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。