ECB、8会合ぶり政策金利据え置き-「先行きは極めて不透明」

欧州中央銀行(ECB)は24日の政策委員会会合で、中銀預金金利を2%に据え置いた。利下げ見送りは8会合ぶり。ラガルド総裁は政策発表後の記者会見で、ECBは「様子見」モードにあると語った。

  ブルームバーグがまとめた調査では、エコノミストの大半が据え置きを予想していた。米国が課す関税の最終的な水準が依然として不透明であることから、ECBは今後の政策運営について具体的な見通しは示さなかった。 

  ラガルド氏は政策判断発表後の記者会見で2%のインフレ目標が達成されていることを指摘し、「現在の状況は良好だ」と述べた。「今は金利を据え置き、リスクが今後数カ月の間にどう展開していくかを見守ることが適切な状況にある」との認識を示し、「ECBは様子見に入ったと言えるかもしれない」と語った。

  非公開の情報だとして匿名を要請した関係者は、据え置きが9月会合の基本シナリオである様子だと述べた。関係者の間では、立場についての説明が求められるのは追加利下げの支持者であって、反対派ではないとの見方もある。

  その上で、米国による対欧州連合(EU)関税の発動予定を8月1日に控え、その前後の通商協議の展開によっては形勢が変わる可能性もあると関係者は強調した。

  ECB報道官はコメントを避けた。

  投資家は、ECBが2024年6月以降実施してきた利下げをさらに進めるのか、それとも金融緩和サイクルは終わったのかを巡り、頭を悩ませている。

  ECBは声明で「これまでのところ経済は全体として底堅さを示している」としながらも、通商摩擦をはじめとする要因により、依然として「先行きは極めて不透明だ」との認識を示した。

  ECBにとっては貿易問題に加え、ユーロ高や今後見込まれるインフラ・防衛分野の公的支出の増加といった課題がある。

  発表を受けて、市場が織り込む年内の0.25ポイント追加利下げ確率は70%と、発表前の約90%から低下した。決定前に実施されたエコノミスト調査では、9月にあと1回、0.25ポイントの利下げが行われ、今回の緩和サイクルの最後になるとの見方が示されていた。

  債券相場は小幅安で推移していたが、ラガルド総裁の会見中に下げを拡大。ドイツ10年債利回りは一時6bp上昇して2.70%を付けた。米雇用市場の堅調ぶりを示すデータの発表を受けた米国債の下落に追随した。

  ユーロはポンドと円に対して上昇し、日中高値を付けた。ドルに対してはほぼ変わらず、1ユーロ=1.1770ドル付近で取引されている。

  ラガルド総裁は、ユーロ圏経済はおおむね予想通り、または予想をやや上回るペースで成長しているとしつつも、リスクは依然として下振れ方向に傾いているとの認識をあらためて示した。

  「既に実施された、あるいは想定される関税引き上げ、ユーロ高、地政学的な不透明性の持続が、企業の投資意欲を鈍らせている」と指摘した上で、「貿易や地政学に関連した緊張が速やかに解消されれば、景況感が改善し、経済活動を活発化させる可能性がある」と語った。

  ユーロは今年に入り対ドルで13%超上昇しており、これが物価に過度な下押し圧力をかける可能性がある。ラガルド氏は、ユーロ高が予想以上にインフレ率を押し下げる展開もあり得ると述べた。

  ECBは既に、来年のインフレ率が目標を下回るとの見通しを示している。フランス中銀のビルロワドガロー総裁やフィンランド中銀のレーン総裁は、インフレ率が長期にわたって目標を下回る可能性を警告している。

  ラガルド氏はまた、「ここ数年にわたるインフレショックは、今や過去のものとなった」と述べ、「今すべきことは、これから起こることに目を向けることだ。まずは待つことが必要だ。今後数カ月の間に展開しそうな要因が多いため、それが経済にどのような影響を及ぼすかを見極める必要がある」と語った。

原題:Lagarde Says ECB in ‘Wait-and-See’ Mode After Holding RatesECB Keeps Rates Unchanged to Wait for Clarity on US Tariffs (4)ECB Officials Say Those Seeking Another Cut Face a Battle (1) (抜粋)

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