ウクライナ、フランス製戦闘機「ラファール」を最大100機取得で合意 2035年までに完了と
画像提供, Reuters
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とフランスのエマニュエル・マクロン大統領は17日、ウクライナが仏製戦闘機「ラファール」最大100機と、先進的な防空システムを取得することで合意した。ロシアの軍事侵攻が続くウクライナは、自国の防衛能力の強化を図っている。
ゼレンスキー氏とマクロン氏はこの日、フランス・パリ近郊にあるヴィラクブレー仏空軍基地で協議した。意向書に署名後、ゼレンスキー氏は「歴史的」な動きだと称賛した。
戦闘機「ラファール」の納入は2035年までに完了する予定。迎撃ドローンの共同製造は年内に開始される。
ゼレンスキー氏は17日、マクロン氏との共同記者会見で、「これは来年から10年間続く戦略的合意だ」と述べた。
そして、ウクライナは「非常に強力なフランス製レーダー」や防空システム8基、そのほか先進的な兵器を取得することになると付け加えた。
こうした先進システムの使用は「誰かの命を守ることを意味する(中略)これは非常に重要だ」と、ゼレンスキー氏は強調した。
画像提供, AFP via Getty Images
ロシアはこの数カ月、ドローンやミサイルを使ったウクライナへの攻撃を強化している。エネルギー施設や鉄道インフラが標的にされ、ウクライナ全土で大規模停電が起きた。
ロシアの空爆で数十人の民間人が殺害されている。これは戦争犯罪だと、ウクライナや西側の同盟国は訴えている。直近のロシアの夜間攻撃では、ウクライナ北東部バラクリヤがミサイル攻撃を受けて3人が殺害され、15人が負傷したと、地元当局が発表した。
ゼレンスキー氏と並んで会見に臨んだマクロン氏は、「ラファール(の供与)を計画している。ラファール100機だ。巨大な規模だ。 これがウクライナ軍の再建に必要だ」と述べた。
マクロン氏はさらに、ウクライナが次の事態に備える手助けをしたいとも述べた。
ウクライナの空を守る上で、ラファール戦闘機は不可欠だと考えられている。ウクライナには現在、国境の町や都市に対する長距離兵器の攻撃を阻止する防衛力がほとんどないからだ。
「ロシアはひと月に6000発の滑空爆弾を使用している」と、ウクライナの防衛アナリスト、セルヒィ・クジャン氏はBBCに話した。「射程200キロメートルのフランス製空対空システムを導入することが重要になる。ロシアは射程230キロメートルの自国製システムを保有しているので」。
ウクライナとフランスが発表した防衛支援は相当の規模のものだが、「その効果は、導入時期と、付随するミサイル次第だ」と、イギリスの王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャスティン・ブロンク氏は言う。
両国は今回、詳細な購入契約ではなく、長期的な政治合意を結んだ。この発表が、ロシアによる侵攻の状況を劇的に変えると期待する人はほとんどいない。
西側諸国が軍事装備の供与を約束しても、その扱い方に関する訓練や兵站(へいたん)なしでは効果は発揮されない。ドイツ製「レオパルト2」戦車であれ、アメリカ製F-16戦闘機であれ、いずれも集中的な訓練や、大規模な支援要員、大量の予備部品が必要になる。
そして、ラファールの場合、誰がその費用を負担するのかという点が複雑になっている。フランスは対ウクライナ支援に政府予算から拠出し、EUの共同借入メカニズムを活用して取引費用をまかなうつもりだとみられる。
しかし、EUの権力の中枢では、資金が枯渇しつつあるという現実がささやかれている。
ロシアの凍結資産を活用する案は、国際法上違法とされている。また、一部のEU加盟国は、ウクライナでの戦争終結後にロシアへの返済を迫られるかもしれないと神経質になっている。
フランス訪問を終えたゼレンスキー氏はスペインへ移動し、軍事支援やそのほかの支援の強化を求める予定。
16日には、ギリシャ経由でアメリカ産液化天然ガスを輸入することで合意した。今冬にも、バルカン半島を横断するパイプラインを通じてウクライナに供給される見込み。
2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始したロシアは、現在、ウクライナ領土の約2割を支配している。ロシア軍は戦闘で多大な数の死傷者を出していると報じられているものの、長大な前線でじわじわと前進している。