地球の自転速度が急上昇、7月10日は2025年最短の1日、原因不明
イランの火山、ダマーバンド山の斜面に咲く野生の赤いケシの上に広がる星の軌跡。長時間露光を用いることで空に描き出される円形の軌跡は、地球が自転している証だ。(PHOTOGRAPH BY BABAK TAFRESHI, NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION)
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北半球では今、人々が夏の長い日照時間を満喫しているが、多くの人が気づいていない事実がひとつある。現代的な方法で時間を測るようになって以来、1日の長さが特に短い日々を経験していることだ。なかでも2025年7月10日は最も短い日となった。
原因は地球の自転速度の上昇だ。国際地球回転・基準系事業(IERS)および米海軍天文台によると、この日は標準的な1日よりも1.38ミリ秒短かったという。さらに7月9日と22日も短く、8月5日も歴史的に短い1日になると予想されている。
地球の自転速度が変動するのは珍しいことではない。だが、最近急激に速度が上がっている理由については、はっきりとしたことはわかっていない。
「過去10年間、1日の平均的な長さはおおむね短くなってきています。特に過去5年ほどはその傾向が顕著で、1日が24時間に満たないこともありました」と、米海軍天文台地球姿勢部門の天文学者ニコラス・スタマタコス氏は言う。
そこで、地球の自転が速くなっている理由、わずか数ミリ秒が重大な影響を及ぼす可能性について、専門家に聞いた。
なぜ自転は速くなっているのか
地球の自転速度を変動させる要因は複雑だが、特に重要なものがいくつかある。
地球の周りを周回する月からの影響は、状況に応じて変化する。月に2度、月が赤道に近づくときには、引力によって地球の自転速度がわずかに落ちる。一方、月に2度、月が極地に近づくときには、地球の自転速度はわずかに速まる。
地球と大気は同調して回転し、運動量を共有しているため、どちらか一方の運動量だけを変えることはできない。たとえばジェット気流の変動により、夏の間、大気の回転速度は普段よりも遅くなる。すると、全体の運動量を保つため、地球は自転速度を速める必要に迫られる。