カナダとメキシコ、中国への関税2月1日開始へ-ホワイトハウス
トランプ米大統領は31日、鉄鋼、アルミニウム、石油・ガス、医薬品、半導体など幅広い輸入品に今後数カ月のうちに関税を課すと表明した。貿易相手国への関税の脅しを強めた格好だ。
規制緩和に関する大統領令に署名した際の今回の発言でトランプ氏は、「われわれは、あらゆる形態の医薬品や薬剤を対象とする。そして、非常に重要な鉄鋼も対象とし、さらに半導体や半導体関連製品も対象にする」と発言。「石油とガスにも関税を課すつもりだ。それはもうすぐ実現するだろう。2月18日ごろになると思う」と語った。
トランプ氏は、米国の国境を越えて合成麻薬フェンタニルなどの違法薬物や不法移民が流入することを防ぐことができなかったためにカナダ、メキシコ、中国には関税が課されるとの見方を示し、より差し迫った関税を未然に防ぐために3国ができることは何もないと述べた。さらに、欧州連合(EU)に対しても「何らかの非常に重要な」関税を賦課する意向を示した。
大統領執務室からのトランプ氏の発言は、2月1日に米最大の貿易相手国に関税を課す予定であるにもかかわらず、同氏がこれまでたびたび言及してきた他の対象、例えばEUや米国が競合するコモディティーや技術分野への関税拡大をすでに視野に入れていることを示している。
トランプ氏の発言を受けて取引時間終盤に原油先物が上昇。米東部時間午後4時(日本時間2月1日午前6時)時点のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=73.33ドルとなった。清算値は72.53ドル。銅先物価格は一時、この日の下げの一部を取り戻した。
トランプ氏はまた、今後課される関税は既存の関税に上乗せされると明らかにした。一方で2月1日に予定されている関税では石油に課される税率を引き下げる可能性も示唆。トランプ氏はカナダとメキシコに対して25%、中国に対して10%の関税を課すと言明している。
「おそらくその関税を少し引き下げることになるだろう。10%まで引き下げるつもりだ」とトランプ氏はコメントした。
トランプ氏はこれまで、サプライチェーン(供給網)の再構築と製造業の米国内への回帰を促すため、半導体、医薬品、鉄鋼、アルミニウム、銅を対象にセクター別の関税を課すことを公約していたが、これらがいつ発動されるかは明らかにしていなかった。31日の発言はトランプ氏がこれらの課税を迅速に進める意向であることを示している。
またトランプ氏は「関税はインフレを引き起こさない」とも発言。関税が物価上昇を招くというエコノミストの警告を一蹴した。
これより先、ホワイトハウスのレビット大統領報道官は定例会見で、トランプ大統領が2月1日からメキシコとカナダに25%の関税、中国には10%の関税を賦課する意向だと説明。同氏が関税発動を1カ月遅らせる計画だとするロイター通信の報道を否定した。
ロイターは関係者の話として、トランプ氏がカナダとメキシコに対する関税を3月1日に発動すると発表する見通しだと報じていた。レビット報道官は「報道は誤りだ」と発言。「私はちょうど大統領執務室でトランプ氏と一緒にいたところだ。トランプ氏が設定した2月1日の期限は変わっていない」と付け加えた。
トランプ大統領は、米国へ流入する不法移民や違法薬物を取り締まっていないという理由で、貿易相手国に関税を課すと脅してきた。関税を巡る動向は金融市場で注目され、ビジネス界や政界の指導者らも注意深く見守っている。
大統領報道官の発言を受け、外国為替市場ではドルが上昇。円は対ドルで下げ幅を拡大し、一時155円22銭を付けた。トランプ大統領の発言にも市場はドル買いで反応した。
レビット報道官は、関税が実際に2月1日に開始されるのかという質問に対し、同日で発動されると言明。「もし大統領がそれら関税を撤回すると決断するなら、それは大統領が決めることだ。しかし、明日から関税は適用される」と語った。
事情に詳しい関係者によると、トランプ政権の国境管理責任者トム・ホーマン氏は1月31日にカナダ当局者と話す予定となっている。
関税が賦課されれば、その影響はカナダとメキシコ以外にも波及するとみられる。各国は次の標的となることを警戒しており、米企業は報復関税の可能性に身構えている。
原題:Trump Vows Tariffs to Hit Saturday With More in Coming Months、White House Says China, Mexico, Canada Tariffs to Hit Saturday、White House Says Canada, Mexico, China Tariffs to Start Feb. 1(抜粋)