ルコルニュ仏首相、内閣存続へ前進-鍵握る社会党の支持確保

フランスのルコルニュ首相は議会のキャスティングボートを握る社会党の支持を確保した。16日に予定される内閣不信任投票を乗り切れる可能性が高まった。

  社会党はルコルニュ内閣の不信任案に賛成票を投じないと、同党広報部が14日表明した。これに先駆けルコルニュ氏は国民議会(下院)での演説で、政治的安定のための最終手段として、マクロン大統領の主要な経済政策の一つである年金改革の適用を一時停止することを提案した。

  社会党のバロー党首は下院で「われわれは賭けに出る。危険な賭けだ」と発言。「フランスのために全力を尽くす。だからこそ、公正な予算の成立させるという賭けに乗る」と語った。

フランス下院で演説するルコルニュ首相(10月14日)

  昨年夏にマクロン大統領が早期総選挙に踏み切った後に誕生した議会は断片化し、中道派の勢力は後退した。どの勢力も過半数を持たない中で、不信任投票の行方を決定づけるだけの議席数を持つ社会党は、並外れて大きな影響力を持つ。

  ルコルニュ氏は14日、内閣存続の望みをつなごうと、社会党が要求していた年金法を巡る譲歩を行った。予算案や閣内の不一致で8日前にいったん辞任した同氏だが、再登板を受け入れるにあたりマクロン氏から政治危機を脱するための「白紙委任状」を取り付けていた。

  ルコルニュ氏は議会で「2023年の年金改革を、大統領選挙後まで一時停止することを議会に提案する。今から28年1月まで、定年年齢は引き上げられない」と述べた。マクロン氏の年金改革の一環で、フランスでは23年、定年を30年までに62歳から64歳まで段階的に引き上げると決めた。

  演説に市場は好反応を示し、フランス経済の影響を最も受けやすい企業で構成される、バークレイズのフランス株バスケットは0.6%上昇した。建設や不動産株が上昇をけん引し、銀行株も好調で、ソシエテ・ジェネラルが1.4%上昇した。

  マリーヌ・ルペン氏の極右・国民連合(RN)と極左政党は、16日朝に行われる不信任投票で、ルコルニュ氏の失脚を目指すと宣言している。

  ルコルニュ氏は、自身の唯一の使命は予算成立だとしてきたが、政府崩壊を回避するためには、法案やその他の政策に関して議会の影響力を受け入れざるを得ないと認めた。同氏は「フランスには予算が必要だ。なぜなら遅滞なく講じなければならない緊急措置があるからだ」と訴えた。

  年金改革の停止は、マクロン氏の経済政策や、労働時間を増やして成長率を上げ、公共財政を立て直すという、同氏が繰り返し唱えてきた方針の象徴的な敗北を意味する。

  レスキュール経済・財務相によると、年金改革の完全な凍結には来年4億ユーロ(約704億円)、2027年には18億ユーロの費用がかかる見込みだ。

  ルコルニュ氏の政府は、14日に内閣に示した予算案で、財政赤字を国内総生産(GDP)比4.7%に縮小するとしている。前任のバイル氏の4.6%より縮小幅を若干減らした。今年の財政赤字は5.4%の見通しだ。

原題:French Premier Lecornu to Propose Suspending Pension Reform Law(抜粋)

— 取材協力 Blaise Robinson

(社会党のルコルニュ内閣支持表明について情報を加えます)

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