エヌビディア決算、ウォール街の評価は見通し次第か-AI投資に警戒感

人工知能(AI)向け半導体で圧倒的シェアを占め、世界最大の時価総額を誇る米エヌビディアが、19日の米株市場の取引終了後、8-10月(第3四半期)決算を発表する。ウォール街は、AIに投じられる巨額資金の行方を決算から理解するだろうが、株式市場の反応は別問題だ。

  キングスビュー・ウェルス・マネジメントのスコット・マーティン最高投資責任者(CIO)は「これは『エヌビディアが動けば、市場も動く』という種類の決算だ」と指摘する。

  エヌビディアの8-10月の純利益と売上高の伸びについて、どちらも50%を上回るとアナリストは予想する。理由はごく単純明快だ。

  マイクロソフトアマゾン・ドット・コムアルファベットメタ・プラットフォームズの4社で、エヌビディアの売上高の40%余りを占めるが、これら4社のAI 関連支出は今後1年で34%増加し、4400億ドル(約68兆3000億円)に達すると見込まれる。ブルームバーグの集計データで示された。

  だが大規模なAI投資を行う企業、特にOpenAIがコミットメント(投資の確約)を縮小せざるを得なくなれば、これらの数字は信頼性を失う危険がある。

  ジョーンズトレーディングのチーフ市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏は「これらAIプレーヤーは、期待値のハードルを絶えず引き上げることに力を注いできた。今は数字を達成するだけでなく、市場の高まる期待に応え続けなければならない。上場企業にとって危険な綱渡りだ」と分析する。

  エヌビディアはS&P500種株価指数に占めるウエートが最も大きく、同指数などが過去1年で次々に過去最高値を更新する主な原動力となった。AI関連取引の中心である同社は自社の目標を守り続ける限り恩恵を受け、同社が好調なら株価は通常反応する。

  しかし、投資家はAI 投資にますます神経質になり、上場来高値を4週間前に更新したエヌビディアの株価もその後12%余り下げており、今回の決算がどう解釈されるかが重要になるだろう。

  キングスビューのマーティン氏によれば、「エヌビディアの決算が好調で、売上高と事業活動の拡大が予想されるなら、全てうまくいくと考える人々が確かに存在する」という。

  次の成長段階のけん引役と見込まれるAI用GPU(画像処理半導体)「ブラックウェル」シリーズについて、投資家は強い数字を期待することだろう。利益率の上昇も重要であり、特に5-7月(第2四半期)の収入の約9割を占めたデータセンターが焦点となる。ただAI関連株ではよくある話だが、ウォール街の評価は将来の見通し次第となる公算が大きい。

   エヌビディアの力強い業績と心強い見通しは、AI株のバリュエーション(株価評価)やAI関連契約の資金還流的性質、目に見える成果を伴わないAIインフラへの巨額投資に不安を募らせる投資家を一時的に安堵(あんど)させるかもしれない。こうした懸念がテック株や広く株式市場を動揺させ、18日の米株市場でS&P500種指数は4日続落した。

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  オールスプリング・グローバル・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、ジェイク・セルツ氏は「かなり堅調な数字を予想している」としながらも、次の四半期のガイダンス(業績見通し)を注視する構えだ。少なくとも売上高は市場予想のコンセンサスを上回る可能性が高いが、「控えめなガイダンスを示すかどうか予測は難しい」という。

  アナリストは、エヌビディアの売上高の著しい伸びが今後数年で減速するとみている。26年会計年度(25年2月-26年1月)に約60%の増収を記録した後、27年1月期は41%、28年1月期は22%と鈍化を見込む。

  市場関係者の多くが予想する堅調な業績を達成できたとしても、投資家心理の後退を考えると、株価の急上昇につながらないこともあり得るだろう。

  ビジブル・アルファでテクノロジー&メディア&テレコミュニケーションズのリサーチ責任者を務めるメリッサ・オットー氏は「市場が現時点で真に対処する問題は、こうしたAIインフラ全体で獲得可能な最大市場規模(TAM)」と分析する。

  ソフトバンクグループとピーター・ティール氏傘下のヘッジファンドは、エヌビディア株の持ち分を全て手放した。世界的な金融危機に先立ち、住宅ローン証券下落に賭けた投資が「世紀の空売り」と呼ばれたマイケル・バーリ氏もAIバブルに警告を発し、同氏が率いるヘッジファンド運営会社サイオン・アセット・マネジメントは、エヌビディア株のプットオプション(売る権利)を購入したと情報開示した。

  オットー氏は「エヌビディア株のパフォーマンスは非常に素晴らしかった。次の成長の源泉がどこから来るか考えるのもやや理にかなうかもしれない」と見解を示した。

原題:Nvidia Earnings Run Into a Market Suddenly Afraid Of AI Spending(抜粋)

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