「高学歴だけでは通用しない時代に…」今、子どもに身につけさせたい“AIに奪われない力”とは(with online)

AIが人間の知能を超え、あらゆる仕事の半分が消える――。そんな未来予測が現実味を帯びてきました。「子どもたちはこの先、どんな時代を生きるのだろう?」と不安に思う親御さんも多いはず。 【世界から取り残されている日本の教育】「勉強だけできても無意味!?」グローバル社会で深刻化する、ある能力の“格差” 今回は、「教育界のノーベル賞」と呼ばれる「Global Teacher Prize 2019(グローバル・ティーチャー賞)」のトップ10に選ばれた、立命館小学校 教諭/東京大学 客員研究員の正頭英和さんの書籍『子どもの未来が変わる英語の教科書』(講談社)から一部抜粋してご紹介。 正頭さんは、むしろAI時代を「子どもにとってのチャンス」だと語ります。 AIがどれだけ進化しても奪えない人間の力――それは「好奇心」と「個性」。 果たして、その力をどう育てればいいのか? 世界に認められた教育者が語る「AI時代の子育ての新常識」に迫ります。

AIとロボットの組み合わせで、僕たちの社会と暮らしは大きく変わるとされています。そうしたニュースを毎日のように見聞きするうち、子どもたちの将来に漠然とした不安を覚える保護者もいらっしゃるでしょう。 でも、何も心配はありません。むしろ僕はAI時代は子どもたちにとって明るい未来を開いてくれると楽観しています。 AIは近い未来に人間の知能(IQ)を凌駕(りょうが)すると予測されています。 このAIは、人間が不便を感じたり、苦労をしたりしている分野から浸透し始めています。 意外と知られていませんが、現在AIがもっとも活用されているのは農業分野です。 広い農地を維持・管理するのは大変ですが、同時に日本の農業は高齢化、人手不足、後継者不足に悩まされています。そこで引っ張りダコなのが、AIとドローンの組み合わせ。AIがドローンの飛行をコントロールし、作柄や害虫の発生状況を把握して、害虫が発生したところだけに農薬を散布したり、生育の悪いところに集中して肥料を散布したりする試みが行われています。AI×ドローンによるピンポイント農薬散布テクノロジーで、九州3県で栽培された「スマート米」は2018年から販売されています。 農業以外でも今後、自動車や電子部品などの製造業、コンビニエンスストアなどのサービス業などにもAIとロボットは浸透するでしょう。 不便や苦労はAIにお任せするとして、人間の仕事として最後に残されるのは何でしょうか? 苦労の多い問題解決をAIが担ってくれる時代、残されるのは僕たち人間が楽しいと思える仕事です。つまり、好きなことを仕事にする時代がやってくるのです。 問題解決が得意なAIには決してできないことがあります。それはゼロから「なぜ?」という問いを立てること。それが何度も触れている問題発見能力であり、言い換えるなら好奇心を持つことです。 好きなことを仕事にするために必要なものこそ、好奇心です。AIが活躍する時代、大事になるのは、人間らしい想像力であり、それを育んでくれる好奇心。自分のやるべきことを与えられた選択肢から選ぶ時代は終わったのですから、好奇心なくして自分の居場所は作れません。 つまりAI時代を迎えた今、子どもの好奇心と想像力を育てることが、保護者の大切な役割になるのです。そのためには、保護者自身がいろいろなモノに興味を持って新しいチャレンジを続けながら、子どもにもさまざまな体験をさせてあげることが必要な時代なのです。 ICTは時間と距離の壁をなくしました。イギリスの大英博物館やアメリカのメトロポリタン美術館などでは、VR技術を応用して展示物が目の前で見られるような臨場感溢れるサービスを開始しています。飛行機に乗ってわざわざ見に行かなくても、日本の学校や家にいながらにして、海外の名作が目の前にあるかのように鑑賞できるようになったのはICT技術のおかげ。けれど、ICTに決定的に欠けているのは、実際のモノに直接触るというリアルな体験です。 VR技術やMR技術で植物園の植物を見ても、葉っぱの手触りや匂いはわかりません。自然のなかで植物に触れ合うからこそ、リアルな体験として頭のなかに情報がインプットされます。そして「同じように見えるのに、なぜこの植物とあの植物の葉っぱの手触りが違うの?」といった疑問が次から次へと湧き上がります。こうしたリアルな体験が、子どもの好奇心と想像力を育ててくれるのです。 普段、家で勉強やゲームばかりしている子どもを、休日に散歩や旅行、キャンプなどに連れ出してあげましょう。お弁当を持って近所の公園に出かけて自然と触れ合うだけでも、子どもの好奇心は刺激されて、「なぜ?」という疑問を持つきっかけとなると思います。 そして、AI時代においてもう一つ重要なのは、他の人とは違う、その人ならではの魅力をどれだけ持っているかです。次回は、この点に関連して『AI時代に必要な「レアキャラ化」』について解説します。

立命館小学校 教諭 / 東京大学 客員研究員 2019年、「教育界のノーベル賞」と呼ばれる「Global Teacher Prize(グローバル・ティーチャー賞)」トップ10に、世界約150ヵ国・約3万人の中から、日本人小学校教員初で選出され、「世界の優秀な教員10人」に。エデュテイメントプロデューサーとして制作に関わった「桃鉄教育版」は、現在10,000教室を超える学校が使用している。AI時代・グローバル時代の教育、ゲームの教育活用をテーマにした講演も多数。著書に『世界トップティーチャーが教える 子どもの未来が変わる英語の教科書』(講談社)などがある。

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