死にゆく恒星が咲かせた短命の天体 ハッブル宇宙望遠鏡が観測した惑星状星雲「NGC 2371」
こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測した惑星状星雲「NGC 2371」のクローズアップ。 今日の宇宙画像 膨張するガスの雲、時間とともに向きを変えてきたとみられるジェット、高密度のガスの塊からなる複雑な領域です。 ふたご座の方向、約4300光年先にあるこの星雲は、対称的な双極性の構造を持つことから、当初は2つの天体として記録されていました。NGC 2371はその片方の名前で、もう1つは「NGC 2372」として知られており、まとめて「NGC 2371-2」と呼ぶこともあります。 惑星状星雲とは、超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星(質量は太陽の8倍以下)が、恒星進化の最終段階で周囲に形成する天体です。 太陽のような恒星が晩年を迎えると主系列星から赤色巨星に進化し、外層から周囲へとガスや塵(ダスト)を放出するようになります。 やがて、ガスを失った星が赤色巨星から白色矮星へと移り変わる段階(中心星)になると、放出されたガスが星から放射された紫外線によって電離して光を放ち、惑星状星雲として観測されるようになります。 NGC 2371を作り出した中心星は、画像の中央、双極構造の間に写っています。ESA=ヨーロッパ宇宙機関によれば、外層を失った恒星の残骸と言えるこの星の表面温度は、約10万℃という高温です。 惑星状星雲の寿命は長い宇宙の歴史と比べれば短く、数千年程度で散逸して消えゆく運命です。その後にはかつて恒星として輝いていた星の中心核が、白色矮星として残されることになります。 冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」と、かつて搭載されていた「広視野惑星カメラ2(WFPC2)」で取得したデータを使って作成されたもので、ESAから2019年8月19日付で公開されました。 参考文献・出典 ESA/Hubble - The Death of a Star
sorae編集部