145光年先・30億歳の白色矮星から岩石質の天体が破壊された痕跡を検出(sorae 宇宙へのポータルサイト)
モントリオール大学のÉrika Le Bourdaisさんを筆頭とする国際研究チームは、さんかく座の方向・約145光年先の白色矮星「LSPM J0207+3331」を観測した結果、破壊されて落下した岩石質の天体に由来するとみられる様々な元素が、白色矮星の大気から検出されたとする研究成果を発表しました。 白色矮星は、太陽のように超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星が進化した天体です。典型的な白色矮星は地球と同じくらいの直径ですが、質量は太陽の6割程度もあり、とても密度が高いという特徴があります。 晩年を迎えた比較的軽い恒星は、外層が大きく膨張した赤色巨星に進化して、周囲の空間へとガスや塵を放出するようになります。外層を失った恒星は中心核だけが残り、やがて白色矮星へと進化します。 白色矮星は恒星の残骸であり、予熱で輝く天体です。誕生したばかりの白色矮星は表面温度が10万ケルビン(約10万℃)を超えることもありますが、長い時間をかけて徐々に温度が下がっていきます。 研究チームによると、LSPM J0207+3331の表面温度は太陽に近い約5910ケルビン(約5640℃)と低く、白色矮星に進化して冷却が始まってから、すでに30億年ほどが経っていると考えられています。 W. M. ケック天文台(ハワイ)のケックI望遠鏡に搭載されている高解像度エシェル分光器「HIRES」を用いた研究チームが観測を行ったところ、水素を主成分とするLSPM J0207+3331の大気から13種類の重元素(※2)が検出されました。ちなみに天文学では、水素やヘリウムよりも重い元素を「重元素」や「金属」と総称することがあります。 ※2…ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、カルシウム(Ca)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ストロンチウム(Sr)。 W. M. ケック天文台の主任科学者を務めるJohn O’Mearaさん(今回の研究には不参加)は、「惑星が引き裂かれ、死んだ星に落下したことを示す直接的な証拠です」とコメントを寄せています。破壊されたのは少なくとも直径200kmの岩石質の天体とみられています。