米大麻業界に迫る自動化 元NASAエンジニアが仕掛ける製造ロボット最前線

元NASAエンジニアのノータル・パータンスキーが率いるSorting Robotics(ソーティング・ロボティクス)は、米国最大手の大麻ブランドStiiizy、世界的企業Tilrayなどに機器を供給している。ソーティング・ロボティクスがカリフォルニア州バンナイズを拠点に手がけるのは、大麻を紙で巻いた「ジョイント(巻きタバコ型の喫煙用製品)」の製造を人手からロボットへと置き換える技術だ。パータンスキーが現在見据えるのは、大麻の連邦合法化と、それによって予想される巨大たばこ産業の参入だ。 ■米国最大の大麻ブランドで稼働するロボット 2024年売上高が8億ドル(約1168億円。1ドル=146円換算)というStiiizyのロサンゼルス本社では、大麻のジョイントを作るロボット「スターダスト」が稼働している。このロボットは、ジョイント10本をつかみ、まずは大麻の陶酔成分として知られるTHCの濃縮液の容器に浸す。 次に「キーフ」(強力な粉末状の大麻)が入ったバケツにそれらを入れる。わずか数秒で、追加のTHCがコーティングされたジョイントが完成する。スターダストは、オペレーター1人による運用で1時間あたり約1000本のジョイントを製造できる。 ●スターダストは1台で10人分の生産能力 「このマシンの生産能力は人間10人以上に匹敵する」と、Stiiizyの共同創業者のジェームズ・キムCEOは4月初め、スターダストの横で語った。廊下の向こうにある別の部屋では、約140人の従業員が14のテーブルに分かれて、ジョイントを手作業で植物由来の芳香成分入りの接着剤に浸し、キーフの山の上に転がしていた。 Stiiizyはまだ人間を機械に置き換える準備はできていないが、キムはいつかすべてのジョイントが完全に機械で作られる日を思い描いている。「未来はロボティクスだが、まだ先の話だ。思った以上に長い時間がかかるかもしれない」とキムは言う。 ■元NASAエンジニアが率いる急成長スタートアップ その未来を切り拓いているのがソーティング・ロボティクスだ。2019年、CEOのノータル・パータンスキー、最高技術責任者(CTO)のカッシオ・サントス(後に退任)、最高執行責任者(COO)のショーン・ローラー(2021年退任)の3人が設立した。同社は、創業以来1台25万ドル(約3650万円)のスターダストを約30台販売したうえ、低価格帯の加工機を大麻ブランド向けに数百台販売している。また、ジョイント中心部にTHC濃縮液を注入して、大麻愛好家の間で「ドーナツ」と呼ばれるジョイントを作る注入機「ジコ」、大麻を気化させて吸引するための電子デバイスであるベイプ(電子たばこ)向けのカートリッジを充填する「オムニフィラー」も製造している。 ■黒字経営を続けるニッチ市場の開拓者 同社はまだ20人の小規模な企業で、2024年の売上高は1100万ドル(約16億円)と、2023年の700万ドル(約10億円)を上回る見通しだが、パータンスキーCEOは、他のこの分野の起業家と同様に、連邦レベルの大麻の合法化を見据えた長期的な勝負に挑んでいる。 同社を強気にさせていることの1つは、2021年以来黒字を維持していることだ。同社顧客リストには、前述のStiiizyに加え、カナダに拠点を置くTilray(売上高7億8800万ドル[約1151億円])のような大手も名を連ねる。またBlue Fox Brandsのような、米国内に特化した小規模なブランドも顧客だ(売上高8000万ドル[約117億円]。同社は、コロラド州やマサチューセッツ州、ミシガン州でCali Blazeと呼ばれるジョイントを販売)。 「当社のスターダストは既存の労働力を5〜10倍効率的なものに置き換えられる。ブランドの利益率を10%以上改善できる可能性がある」と35歳のパータンスキーは語る。

Forbes JAPAN
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