エヌビディア「H200」の中国出荷、トランプ氏が判断-ラトニック氏

エヌビディアによる人工知能(AI)半導体「H200」の中国向け販売を容認するかどうかは、トランプ米大統領が判断すると、ラトニック商務長官が明らかにした。

  ラトニック氏は24日、ブルームバーグテレビジョンで、輸出の可能性を巡り「多くの顧問」が大統領に意見を述べていると発言。また、トランプ氏は中国の習近平国家主席を「最もよく理解している」とも語った。

  ブルームバーグ・ニュースは21日、トランプ政権の当局者がエヌビディアによるH200の中国向け販売を容認するかどうかについて、初期段階の協議を進めていると伝えていた。

  ラトニック氏は「この種の決定はトランプ大統領に委ねられる」とし、「この案件を進めるかどうかはトランプ氏自身が決める」と述べた。

  一方で、経済成長の促進と国家安全保障の保護の間でジレンマがあると認めた。「中国に一部半導体を販売して米国の技術や技術基盤を彼らに使わせ続けるのか。それとも『最高性能のチップは売らない。それは控えて、AI競争を自国で挑む』と言うべきか」選択を問われているとの認識を示した。

  H200の対中販売を認めれば、2022年に導入した規制を大幅に緩和することになる。同規制は中国の政府や軍が米国の最先端技術にアクセスするのを防ぐことを目的としていた。より高性能なプロセッサーを中国に販売することになれば、国家安全保障を重視する強硬派から強い反発を招く可能性が高い。ワシントンでは、こうした取引を阻止するための法案を支持する議員も出ている。

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対EU鉄鋼・アルミ関税

  さらにラトニック長官は、欧州連合(EU)との間で鉄鋼・アルミニウム関税の引き下げに関する合意を結ぶためには、EUがデジタル規制を見直す必要があるとの見解を示した。

  ラトニック氏はブルームバーグテレビジョンの同インタビューで、EUのテクノロジー規制の撤回について「協議している」と発言。「その見返りとして、魅力的な鉄鋼・アルミニウム協定をまとめるつもりだ」と語った。

  同氏とグリア米通商代表部(USTR)代表は、7月にEUとの貿易合意が成立して以来初めて、ブリュッセルを公式訪問している。

  この貿易合意では、米国が多くのEU製品に15%の関税を課す一方、EUは米国の工業製品や一部の農産物・食品に対する関税を撤廃することを約束した。両者はまた、その他の関税をさらに引き下げるための協議を続ける方針も示した。これにはEU産の鉄鋼・アルミニウムに対する50%の関税も含まれる。EU側は現在、一定の輸入枠を超える鉄鋼製品に対し、同水準の50%関税を課して対抗している。

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  欧州の当局者や企業が懸念しているのは、トランプ大統領が持つ分野別関税権限の適用範囲が変化し、原材料そのものを超えて拡大している点だ。米EU間の合意以降、米政府は当初は関税対象外だった多くの品目にも鉄鋼関税を適用するようになっている。

  ラトニック氏は、鉄鋼・アルミを巡るいかなる合意も、EUが米大手テクノロジー企業に対する規制の一部を緩和することが前提になると明言した。

  その上で、「EUがこの規制の枠組みから足を少し引き、米企業にとってより魅力的な環境を整えれば、数千億ドル、場合によっては1兆ドル(約156兆8000億円)規模の投資という恩恵を受けることができる」と話した。

  ラトニック氏が鉄鋼・アルミ関税とテクノロジー規制を直接結びつけたことで、EUは難しい立場に置かれている。EUはこれまで一貫して、他国にテクノロジー分野の規制を左右されることはないとの立場を堅持しているが、金属関税による経済的打撃も欧州全体で深刻化している。

原題:Trump Weighing Advanced Nvidia Chip Sales to China, Lutnick SaysLutnick Says EU Must Ease Tech Rules for Lower Steel Tariffs (2)(抜粋)

(第5-6段落にラトニック氏の発言と背景情報を追加します)

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