学校での「スマホ禁止」は本当に有効なのか? 世界の調査報告が示す実態

世界各国の政府が、学校での子どもの生活におけるスマートフォンの位置づけを見直している。ブラジルは世界で初めて連邦レベルで学校におけるスマホの利用を禁止した。米国でも35以上の州が制限を打ち出し、韓国なども同じ動きに乗り出している。 この背景には、学力テストの成績低下や授業中の注意散漫などの問題に加えて、若者のメンタルヘルスへのリスクが指摘されている。米国の公衆衛生局長官は、ソーシャルメディアの影響をタバコに例えている。 ■スマホを1日平均100回以上チェックし、使用をやめられない しかし、実際にこうした措置は効果があるのだろうか? サイバー心理学の観点では、スマホは単なる受動的なツールではない。常に私たちの思考や感情、人との関わり方を作り替えている。その点を踏まえると、若者を取り巻く状況は憂慮すべきものだ。非営利団体コモン・センスの調査によれば、ティーンエイジャーは平均して1日に100回以上もスマホをチェックしており、使用をやめるのが難しいと感じている。 ●認知制御を低下させ、作業記憶(ワーキングメモリー)に悪影響 こうした背景を受け、学校でのスマホの禁止措置の多くは、無秩序なデバイスの利用やSNSの通知、テキストメッセージなどの影響を和らげることを狙っている。研究によると、自らのメディアの利用をコントロールできない人々は、衝動を抑える力が弱く、物事に集中できないという。これにより、注意力が低下し、情報を一時的に保持しながら、同時に処理する脳の機能の作業記憶(ワーキングメモリー)が損なわれるという。

■「ブレインドレイン」効果の研究では、認知課題の成績に15%の差 スマホ使用の影響を示す最も強力な証拠は、認知に関する統制実験から得られている。テキサス大学の研究者のエイドリアン・ウォードによる研究(2017年)で、スマホはたとえ、電源を切って鞄にしまわれている状態であったとしても、人々の作業記憶のリソースを消費することが示された。この画期的な研究は、スマホがそばにあるだけで、認知課題の成績に15%の差が生じることを明らかにしており、研究者はこれを「ブレインドレイン」効果と呼んでいる。 この現象が起きるのは、私たちの心的リソースの一部が常に「スマホのことを考えないようにする」ために割かれているからだ。その結果、学習を妨げる認知的負荷が生じる。アウクスブルク大学の研究者が昨年発表した研究もこの傾向を裏づけており、スマホの制限によって学業成績が、週に授業を1時間追加した場合と同等に改善することが示された。 ●イングランド91校で6.4%上昇、ブラジルで25.7%改善 学校でのスマホの禁止に関する国際的な研究結果は、学習成果などのさまざまな面で、小さいながらも一貫した効果があることを示している。イングランドの91校を対象にした調査では、スマホの禁止後にテストの点数が6.4%上昇し、その効果は時間が経っても続いた。制限を導入した学校では、生活指導の件数が大幅に減り、休み時間の対面での交流が増えたと報告されている。 さらに、スタンフォード大学の研究者が主導したブラジル・リオデジャネイロのパイロットプログラムでは、数学の成績が25.7%、ポルトガル語の成績が13.5%改善した。世界的に見ても最も強い効果とされた。 ●低成績層における14%もの成績向上効果 スマホの禁止措置が実際にどのようなタイプの生徒に効果をもたらすかを詳しく見ると、この議論にさらなる光が当たる。イングランドの調査では、特に学力の低い生徒のテスト成績が14%上昇しており、全体平均の6%改善を大きく上回った。これは、スマホの使用をコントロールするのに苦労する生徒にとって、禁止措置が特に有効であることを示している。 ●女子生徒の心理カウンセラー受診が29%減 ノルウェーで400校以上を追跡した研究では、スマホの禁止によって女子生徒の心理カウンセラー受診が29%減少し、成績も向上したことが判明した。しかし、男子生徒への影響はほとんど見られなかった。禁止の効果が最も強く表れるのは、衝動のコントロールが未発達な中学生や、スマホが学習の大きな妨げになりやすい貧困地域の学校であると示されている。

Forbes JAPAN
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