【米国市況】政府再開期待でリスクオン、株が上昇-巻き戻しで円下落
10日の米金融市場では、史上最長となった政府機関閉鎖に近く終止符が打たれるとの楽観から、株式やビットコインなどのリスク資産が買われた。
株式 終値 前営業日比 S&P500種株価指数 6832.43 103.63 1.54% ダウ工業株30種平均 47368.63 381.53 0.81% ナスダック総合指数 23527.17 522.63 2.27%リスクオンのムードが広がり、S&P500種株価指数は続伸。最近売りが優勢だったハイテク株も上昇し、相場全体の堅調を率いた。
前夜に成立した与野党合意に、ホワイトハウスは支持を表明した。政府閉鎖は数日中に解除される可能性が高まっている。
最終的な上院採決の日程はまだ設定されていない。上院可決の後は下院採決、トランプ大統領の署名が必要になる。それでもマーケットは現段階の進展を膠着(こうちゃく)を打破するものと受け止めた。政府機関が再開されれば、政府統計が発表されるようになり、連邦準備制度理事会(FRB)の金利政策に対する不透明感が緩和される。
ペッパーストーンのマイケル・ブラウン氏は、予算がまとまれば成長への向かい風はやみ、著しい先行き不透明感も解消されるため、この日の市場の反応は自然な帰結だと述べた。
シティー・インデックスのフィオナ・シンコッタ氏は「政府再開はセンチメントを押し上げるだけでなく、経済データの公表に道を開く。データが発表されれば、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて、雇用市場や経済全体の健全さをもっと深く理解できるかもしれない」と述べた。
S&P500種は6800を上回って引けた。大型ハイテク株の指数は約3%上昇。議会が医療保険制度改革法(オバマケア)に基づく政府助成金の延長を確約せずに、予算攻防を近く終了することから、医療ケアや病院の株が下げた。
政府が14日に再開した場合でも、これまでに発表を延期していた経済統計が全て公表されるまでに数週間かかるだろうと、BMOキャピタル・マーケッツのベイル・ハートマン、ディレイニー・チョイ、イアン・リンジェン3氏は指摘する。
「政府データの信頼性に対する懸念は来年に入っても続く可能性が高いため、予見可能な将来における金融政策を占う上で、民間データの重要性は高い状態が続く」と分析した。
セントルイス連銀のムサレム総裁は、米経済が来年の早い時期に力強く回復するとの見通しを示し、追加利下げには慎重な対応が必要との認識を強調した。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、米国経済で需要の伸びが減速している可能性があるして、金利をあまりに長期にわたって過度に高水準で維持することに警戒を促した。
マイランFRB理事は、堅調なインフレ指標と労働市場の弱含みが続いている兆候を踏まえ、12月に3会合連続となる利下げが必要との見方を示した。
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのマーク・ヘーフェル氏は「全体的に見て、金融緩和に堅調な企業利益が重なり、依然として株価の追い風となっている」と指摘。「資産配分を抑えていた投資家は、人工知能(AI)などの画期的な成長トレンドへのエクスポージャーを拡大するべきだ」と述べた。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は、株式市場ではハイテク銘柄が引き続き関心を集めるという。
「政府再開に向けた進展で、週初のマーケットは押し上げられそうだ。しかし決算を発表する企業は比較的少なく、経済統計の公表も遅れているため、相場の上昇が続くかどうかはAI銘柄が先週の軟調から勢いを取り戻すかどうかにかかっている」と述べた。
個別企業のニュースとしては、ブラックロックは住宅リフォーム会社へのプライベート債務を、全額償却する見通しだと述べた。
エヌビディア本社のあるカリフォルニア州サンタクララでは、大手データセンター開発企業2社のプロジェクトが、地元電力会社の供給準備の遅れにより、数年間稼働できない可能性が生じている。
テスラのピックアップトラック「サイバートラック」プログラムの責任者シッダント・アワスティ氏は、同社を退職するとリンクトインの投稿で明らかにした。
米国債
米国債相場は下げ渋る展開。史上最長を更新した米政府機関閉鎖の終結が見込まれる中、投資家の関心は利下げ見通しに向かった。
国債 直近値 前営業日比(bp) 米30年債利回り 4.71% 1.0 0.21% 米10年債利回り 4.12% 2.1 0.52% 米2年債利回り 3.59% 3.1 0.88% 米東部時間 16時30分利回りは米国での取引時間前に付けた高水準から下げ、取引終盤の時点で小幅上昇となった。
12月に3会合連続となる利下げがある確率は低下したものの、向こう1年間の利下げ見通しは維持されており、利回り全般に今年見られる低下傾向を後押しした。今週はこの日の3年債を含めて、3本の中・長期債入札が予定されている。先物市場では大口取引が複数見られた。
CIBCキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者、マイケル・クロハティー氏は「押し目が買われるとすれば、中・長期債の入札をこなした後だと考えていたが、実際には予想より少し早く買われている」と指摘。保険会社などの負債主導型の機関投資家にとっては、利回り5%近辺の長期ゼロクーポン債が「魅力的なエントリーポイントになりつつある」と指摘した。
11日の米債券市場はベテランズデー(退役軍人の日)の祝日で休場となるが、米国債先物や株式市場は開かれる。
米政府の財政に目を向けると、関税収入で今年の収支は改善しているが、トランプ関税の合憲性は現在、最高裁判所が審理している。またトランプ氏は関税の「配当」として、国民が1人当たり少なくとも2000ドル(約30万7000円)を受け取る可能性があると主張し、事態をさらに複雑にしている。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のグローバル市場調査責任者、デレク・ハルペニー氏は「この話が実現性を帯びてくれば、米国債市場は再び売りを浴びるかもしれない。債務の持続可能性に対する不安が再燃して長期債が軟調になり、利回り曲線の傾斜がきつくなるだろう」と述べた。
外為
外国為替市場ではリスク志向の改善で、逃避先とされていた円が対ドルで下落。史上最長となった米政府閉鎖が解除に向かっていることを受け、ブルームバーグ・ドル指数はもみ合った後に小幅低下した。
為替 直近値 前営業日比 ブルームバーグ・ドル指数 1218.69 -0.75 -0.06% ドル/円 ¥154.10 ¥0.68 0.44% ユーロ/ドル $1.1560 -$0.0006 -0.05% 米東部時間 16時30分円は早朝の取引で、対ドル154円25銭まで下げた後、軟調が続いた。主要10通貨の中では最も下落が目立った。
相次ぐ政策当局者の発言にもかかわらず、日本銀行による年内利上げへの信頼度が低下していることが、円のボラティリティーの指標に引き続き示唆されている。ドル・円のリスクリバーサル(1カ月物)は、過去2カ月で最もドル弱気・円強気の水準を離れた。
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主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、ニューヨーク時間に一時上昇する場面も見られた。
米上院では中道派民主党議員の造反で、政府再開に向けた手続きが前進したが、下院での採決のめどはまだ立っていないため、閉鎖は週末まで続く可能性が高まっている。
原油
原油先物相場は上昇。米政府閉鎖の終結に向けた動きが原油市場でも支えとなった。
一方で今週は、石油輸出国機構(OPEC)が12日に月報を、国際エネルギー機関(IEA)も同日に年次エネルギー見通しをそれぞれ発表する予定となっており、世界的な供給過剰が進んでいるどうかを見極める局面となりそうだ。
ブリッジトン・リサーチ・グループのデータによれば、商品投資顧問業者(CTA)は過去1週間で弱気姿勢を一段と強めている。CTAはブレント原油とウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油の両方でポジションの63%を売り持ちとしており、先物価格がさらに約1%下落すれば売りポジションを拡大する構えだという。
供給過剰への懸念が強まっていることを背景に、原油先物相場は週間ベースでは過去6週のうち5週で下落した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物12月限は、前週末比38セント(0.6%)高の1バレル=60.13ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント1月限は43セント(0.7%)上げて64.06ドル。
金
金相場は大幅に上昇。米政府機関閉鎖の終結に向けた議会の動きを受け、米政策金利の先行きを巡る不透明感が和らぐとの見方が広がった。政府再開が実現すれば、雇用やインフレなど主要な経済指標も発表されるようになる。利息を生まない金投資には、通常は利下げが追い風になる。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「政府機関の再開により経済データの発表が再開し、12月利下げ観測が再び高まるだろう。だがより重要なのは、米財政見通しの悪化に市場の関心が戻る点だ」と指摘。
「景気の強さではなく財政不安が原因となる金利上昇は、金などの貴金属相場にとって追い風となる傾向がある」と述べた。
スポット価格はニューヨーク時間午後2時現在、前営業日比108.74ドル(2.7%)高の1オンス=4110ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、112.20ドル(2.8%)高の4122.00ドルで引けた。
原題:Stocks Rally on Bets Shutdown Endgame Is in Sight: Markets Wrap(抜粋)
原題:Treasuries Pare Losses Spurred by Possible Government Reopening(抜粋)
原題:Dollar Slips as Path to End US Shutdown Emerges: Inside G-10(抜粋)
原題:Oil Holds Steady as Risk-On Mood Shifts Focus from Surplus Fears(抜粋)
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