自動車大手7社決算、「米国頼み」でダメージに差…トヨタは「米国で風邪引いても他で支える」
自動車大手7社の2025年4~6月期決算が出そろい、トランプ米大統領が打ち出した高関税政策の打撃が鮮明になった。26年3月期の営業利益(本業のもうけ)予想では、単純合算で約2兆7000億円もの下押し要因となる。各社は関税影響を緩和するため日本市場を強化する構えで、最大手のトヨタ自動車は国内工場の新設を表明した。(鞍馬進之介、高村真登)
スバルは米国販売7割
SUBARU(スバル)の大崎篤社長は7日のオンライン記者会見で、トランプ関税は「依然として大きな影響が残る」と不安を隠さなかった。
米国が輸入車に課す自動車関税は、日米政府間の合意により、当初提示された27・5%から15%への引き下げが決まった。各社は4~6月期の決算発表に合わせて通期での影響額を公表したが、「米国頼み」の濃淡でダメージに差がついた。
自動車大手7社の業績と見通し米国販売が全体の7割を占めるスバルは、通期の営業利益には2100億円のマイナス要因になると試算した。26年3月期の最終利益は5割減の1600億円に落ち込む。米国販売の約5割を日本から輸出するマツダの影響額も2333億円に及び、最終利益は8割も減る。
一方、トヨタ自動車は影響額こそ1兆4000億円と最大だが、世界販売に占める米国の比率は2~3割にとどまる。東崇徳・経理本部長は7日のオンライン記者会見で「米国で風邪を引いても、他で支える構図になっている」と述べた。
パイの奪い合い
「世界が非常に不安定な中でも、母国でしっかり雇用を生み、技術を継承して人材を作る」。トヨタの上田裕之・渉外広報本部長は7日の会見で、新工場建設の意義を強調した。
トヨタグループは国内販売で4~5割のシェア(占有率)を誇る。トヨタが突如打ち出した国内強化戦略は、米関税による落ち込みを、国内市場で補おうとしていた三菱自動車やマツダなどにとって脅威となる。
足元では日産自動車の 追浜(おっぱま) 工場(神奈川県横須賀市)の閉鎖が決まるなど、国内生産体制の地盤沈下が懸念されていた。自動車大手関係者は7日、「衝撃だ。縮小傾向の国内を重視する姿勢を示すのは、トヨタにしかできない」と白旗をあげた。ただ、日本国内の新車販売台数は24年に442万台と、1990年の777万台から大幅に縮小している。人口減やクルマ離れが進む中、限られた国内のパイを奪い合う先には激しい競争が待っている。
先行き不安
関税コストの軽減に向けた米国での対応も具体化しつつある。ホンダは、生産体制を2交代から3交代に切り替えることを検討する。藤村英司CFO(最高財務責任者)は6日、「大きな投資をかけず、生産量を上げていく」と述べた。マツダも米国工場での増産を進める。
ただ、先行きには不安要素がなお多い。自動車関税の具体的な引き下げ時期が決まっていないことに加え、日本メーカーの対米輸出拠点となっているカナダ、メキシコの関税交渉も不透明だ。
東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司氏は「米国以外に活路を見いだす具体策がまだ見えない。15%の税率が覆される可能性もあり、今後も楽観はできない」と指摘する。