24年は不発だったウォール街のヘッジ熱、息吹き返す-相場変動大きく
陶酔感が強かった2024年の市場において、最大の罪は懐疑心だった。リスク資産の大幅な値上がりは、ウォール街がヘッジや分散投資のために売り込んだ新商品の熱狂に乗った購入者を悲惨な目に遭わせた。
今年の相場が始まって約3週間が経過し、売り込みが早過ぎただけだったように見える。トランプ次期米政権の発足を控え、大きく足並みをそろえて動くことが常態化している。最新の例では、株式と債券は今週上昇したが、先週はいずれも大きく下げたばかりだった。
TDセキュリティーズによれば、こうした相場変動を後押ししているのは熱を帯びた債券市場のセンチメントだ。債券市場はほとんど前例のない程度で経済データのサプライズに飛び付いているという。インフレ懸念が根強い一方、トランプ次期大統領の政策課題は財政や貿易の見通しを複雑にする恐れがある。
クロスアセットの変動に対する注目すべき防御手段は、ディフェンシブな性質を投資家に売り込む幅広い商品群だ。例えば、不動産やコモディティー(商品)に連動する上場投資信託(ETF)などは今年に入り6%余り上昇。デリバティブ(金融派生商品)を活用した商品にも多くの資金が流入している。
シンプリファイ・アセット・マネジメントの資産配分ストラテジスト、ペーズリー・ナーディニ氏は「25年にはポートフォリオヘッジを必要とする投資家が増えるだろう」と予測。その理由として、「金利変動の高まりや地政学的リスクがあり、米国の保護主義的な次期政権によってさらに悪化する可能性がある」と話す。
A slew of ETFs offering protection are beating US stocks
Source: Bloomberg
経済指標やトランプ次期政権の政策発表がマクロ志向の投資家に圧力となっている。10日発表された昨年12月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は予想を上回り、株式と債券が足並みをそろえて大きく下げたが、今度はインフレ鈍化を示唆する指標で軒並み上昇した。
TDセキュリティーズのグローバル戦略責任者、リッチ・ケリー氏は「ゲームのルールを変えるような大幅な政策変更が行われる公算が大きく、投資家はデータと市場の両方でボラティリティーの高まりに備える必要がある」と語る。
A measure of bond sensitivity to economic surprises hits a new high
Source: TD Securities
トランプ氏は20日に米大統領に就任する。これは政策発表によって市場を動揺させる力がより強くなる可能性があることを意味するが、トレーダーらは、次期政権が減税や一部産業の規制緩和によって、すでに堅調な経済を押し上げる可能性に注目している。
アストリア・アドバイザーズの創設者、ジョン・ダビ氏にとっては、代替需要の高まりは必ずしも投資家の純粋な不安の表れではない。むしろ、経済が予想以上に堅調で、投資家が集中的な株式投資から手を引くことができるという賭けなのかもしれない。
ダビ氏はインタビューで、「変わり目に来ている。成長株は割高だ。マグニフィセント・セブン銘柄にとっては素晴らしい1年だった」としながら、「もし市場に対して前向きなら、他を見ることも理にかなっている」と述べた。
原題:Wall Street’s Hedging Craze Gets Second Wind After 2024 Misfire(抜粋)