「ワケあり区、足立区。」…マイナスイメージ払拭に本腰
東京都足立区が区外からのマイナスイメージを 払拭(ふっしょく) しようと、「ワケあり区、足立区。」と銘打ったプロモーション活動に力を入れている。刑法犯認知件数はピーク時から4分の1に減少。子育て施策にも力を入れているが、区外在住者に印象を聞いた調査では「治安が良い」との回答は1割にとどまる。区は報道陣向けのツアーやSNSなどあの手この手でイメージ改善に取り組んでいる。(青木聡志)
足立区の刑法犯認知件数と治安に対するイメージ「足立区は住みやすい所。本来の区の姿を知り、ギャップを埋めていただきたい」。2月中旬、区立島根小学校の一室で近藤弥生区長が懸命に訴えた。
この日行われたのは、子育てがしやすい区の魅力をPRする初めてのメディアツアーだ。子育て世帯に人気がある体験型複合施設「ギャラクシティ」などを巡った後、同小で区が誇る「おいしい給食」を児童たちが食べる様子が公開された。メニューは、区内の農家が育てた小松菜をふんだんに使ったクリームシチューにサラダなど。児童からは「おいしい!」と大好評で、おかわりの列ができていた。
区では、食育やフードロス対策の一環として、子供が残さない給食を目指している。各校で調理した出来たての給食は、天然だしを使い薄味を徹底した健康的なメニューだ。食べ残しの量は、2008年度から15年間で3分の1の112トンに減少。近藤区長は「子育てする人たちに選んでもらえる『ワケ』をアピールしたい」と力説した。
区によると、区内の刑法犯認知件数は2001年の1万6843件をピークに、昨年は4442件になっている。昨年、区が区民3000人を対象に実施した調査では、「治安が良い」が64・6%に上った。
区は、治安対策や「おいしい給食」のような子育て環境の整備のほか、教育環境の充実などのために大学の誘致も積極的に行ってきた。06年から21年にかけて5大学の誘致に成功。近年は15~29歳の転入超過傾向が続いている。
しかし、区外からの印象はいまだに改善していない。近隣自治体の在住者3000人を対象にした昨年の調査では、「治安が良いと思う」は、10・6%。「イメージが良い」との回答も25・4%にとどまった。
理由については「なんとなく」「メディアなどの情報」が68・3%に上り、よく知らないにもかかわらず、悪いイメージを持つ人が多いことが明らかに。区は「悪いイメージを放置すれば、区民や事業者の流出の恐れもある」と危惧する。
そこで昨年度からイメージ向上に本腰を入れている。特設ページを開設し、「おいしい給食」などの子育て施策のほか、手厚い起業家向けの支援策などをPR。区在住者らにインタビューをし、区に移住した理由なども紹介する。
今年度は、SNSなどを使って子育て世帯に人気の北千住駅周辺のPRに力を入れる。32年度までに区外在住者の「イメージが良い」との回答を5割まで向上させるのが目標だ。栗木希・シティプロモーション課長は「実際に足立区で暮らす人たちのリアルな声を広く発信したい」と意気込む。