科学で解説、オジーやサバスの音楽はなぜ「悪魔的」なのか

この1970年の宣材写真は、キャリア初期のブラック・サバスを写したもので、彼らのサウンドがヘビーメタルというジャンルを形成する直前の時期にあたる。(Photograph by Michael Ochs Archives/Getty Images)

 なぜトライトーンはこれほど不穏に聞こえるのだろうか? 理由の一つは聴覚的な粗さ(ラフネス)、つまり私たちの脳がしばしば危険と結びつける、音のざらついた不規則な性質である、とチェディック・アイゼンバーグ氏は言う。

「粗さは特に興味深い音質です。研究によれば、それは危険を伝達する役割を果たす可能性があり、人間の叫び声のような生物学的に重要な警告信号の主要な特徴です」と氏は指摘する。

「聴覚的な粗さは、メタルジャンルで使われる極端な発声テクニックの知覚においても非常に重要な役割を果たします。例えば、喉を鳴らすような耳障りなボーカルスタイルは、聴き手によってしばしば残忍、怪物的、あるいは悪魔的と表現されます」

 しかし、私たちが音にどう反応するかは、生物学的なものでなく、経験によって形作られる。「音に対する我々の反応は、大まかに言えば誰もが共通して持つ神経系から生じますが、文脈がすべてです」と、音楽心理学者であり、サウンドウエルネスアプリ「Audicin」の共同創設者であるビクトリア・ウィリアムソン氏は言う。

「特定の周波数や音の質感は、人間の内耳や脳が処理するのがより困難で、この生理的な衝突が過剰な刺激からストレス、嫌悪感、さらには痛みといった反応を引き起こすことがあります」

「ですが、音に対する私たちの心理的反応は、私たちが生きている間に触れてきたもの、そして私たちが創り上げてきた連想が前提となっています。それは100%私たち一人ひとりに固有のものです」と、ウィリアムソン氏は補足する。

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1970年にリリースされたブラック・サバスのバンド名と同名のデビューアルバムは、ヘビーメタルの暗く不協和なサウンドを定義づけるのに貢献した、不吉なトライトーンのリフで幕を開ける。(Photograph by Michael Ochs Archives/Getty Images)

 17世紀のヨーロッパでは、風潮が変わりつつあった。中世の音楽が調和と秩序を重んじたのに対し、バロック時代は対比と感情を受け入れた。

 古典派の時代までには、不協和音はバッハ、ベートーベン、ワーグナーなどの作品に登場し、しばしばドラマや闇を喚起していた。カミーユ・サン=サーンスの『死の舞踏』では、トライトーンが死神の大鎌の一振りを音楽的に描写しているかのように曲の冒頭を飾ることで有名だ。

 そして1970年、ブラック・サバスが不協和音を再び取り上げ、その緊張の上にヘビーメタルの不気味な基盤を築き上げたのだ。それ以来、「悪魔の音程」は、たとえば「オーバー・ザ・マウンテン」のギターソロ導入部などオジー・オズボーンのソロ時代の曲にも使われているほか、『ザ・シンプソンズ』のテーマ曲から私たちを厳戒状態に引き込むサイレンの音まで、あらゆる場所に現れている。(参考記事:「よみがえる英国音楽の象徴「デンマーク・ストリート」、ロンドン」

「ブラック・サバスの音楽は、扁桃体のような脳の深い情動中枢を刺激しますが、聴き手は恐怖や不快感を覚えるのではなく、引き込まれていきます。理論的には、これは全く理解できません」とビクトリア・ウィリアムソン氏は言う。

「この音楽が感情とストレスの解放を促せば促すほど、腹側被蓋野(ふくそくひがいや)、側坐核、前頭前皮質といった脳の報酬・動機付け中枢をより活性化させます。長年にわたり、脳はこの音楽が流れている中で得られるドーパミンの放出に慣れていきます。このことが、ブラック・サバスのファンが何十年にもわたってこれほど強烈な忠誠心を持ち続けてきた理由を説明するのに役立つかもしれません」

ギャラリー:欧州国別対抗歌合戦「ユーロビジョン」の驚きの歴史 写真と画像8点(写真クリックでギャラリーページへ)

ユーロビジョン・ソング・コンテストを通じて世界に知られるようになったアーティストの中でも、とりわけ有名なスウェーデンのバンドABBA。写真は1974年、友人たちと優勝を喜びあう様子。(PHOTOGRAPH BY AP PHOTO)

文=Simon Ingram/訳=杉元拓斗

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