ビットコイン大口保有狙う日本のネイル企業-価値高め株価10倍目指す

東証グロース上場のネイルサロン運営会社コンヴァノが、世界有数のビットコイン保有企業になろうとしている。財務戦略で暗号資産(仮想通貨)を活用するバイオテクノロジー企業や地方銀行が出てくる中、コンヴァノは新たな例となる。

  デジタル資産の財務戦略ブームが失速つつある兆しも見え始める中、コンヴァノは極めて野心的な計画を公表した。約4340億円を調達し、ビットコイン総発行上限枚数の0.1%に相当する2万1000ビットコインを取得するというものだ。発表時点で同社の時価総額はこの金額のほんの一部にとどまっていたが、公表後に株価は2倍以上に跳ね上がった。

コンヴァノが運営するネイルサロン「FASTNAIL」

  だが、8月25日時点で、必要な資金のうち調達できたのはわずかに2%。365ビットコインの保有にとどまっている。コンヴァノはマイケル・セイラー氏率いるストラテジーが広げたモデルに倣い、個人・機関投資家の関心を集めて株価を押し上げ、その勢いを用いてビットコイン購入の原資をさらに確保する戦略だ。

  コンヴァノ取締役の東大陽氏は新たな計画で企業価値を高め、株価を10倍にすると語る。

  「つくれば人が集まる」という暗号資産の世界では、大胆な目標を掲げること自体がビジネスモデルの一部となっている。現在の状況を大きく超える野望であっても、それが期待を生み、注目を集め、最良のシナリオでは、市場に一定のインパクトを与えることで戦略が成り立つ。

  コンヴァノは今回の方針について、マクロ経済環境に対する合理的な対応とも位置付けている。過去10年で円は対ドルで約21%下落し、消費者向けサービス業では人件費や原材料費の上昇圧力につながっている。

  東氏は持続的な円安や地政学的リスクを受け、ビットコインについて考え始めたと説明。ビットコインは長期的な価値の保存手段だと話す。

  コンヴァノがこれまでに調達した資金のうち、45億円は社債からだ。ビットコインの取得は3段階で進める計画で、平均価格は1枚当たり1990万円を想定している。

  上場企業経由のビットコイン蓄積で、日本は意外な中心地に浮上している。ホテルを運営していたメタプラネットは現在、1万9000ビットコイン近くを保有。世界でも保有トップ10に入る。

  ただ、仮想通貨を財務資産として保有する企業戦略の勢いが反転するリスクもある。

  「中途半端な形で入ってはいけない」と、暗号資産関連の投資会社ネオクラシック・キャピタルの共同創業者マイケル・ブセラ氏は指摘。「規模を持って迅速に参入する必要がある」と話す。

  セイラー氏のストラテジーのような暗号資産蓄積の巨人でさえ、ビットコイン購入ペースの加速に苦慮している。コンヴァノの計画はビットコインの将来性だけでなく、投資家の信認をどこまで維持できるかにもかかっている。株価が急落すれば、資金調達モデルそのものが崩れかねない。

  東氏は今回の戦略は経済的な圧力への対応だと語る。日本では暗号資産の課税ルールが煩わしく、コンヴァノなどの上場企業がデジタル資産への間接的な投資手段として人気を集める可能性もある。

  ただ、この戦略は大きな期待の上に成り立っている。コンヴァノは2万1000枚のビットコインを購入する計画だが、それに必要なキャッシュフローは持ち合わせていない。成功の可否は、今回の暗号資産ストーリーを市場がどれだけ長く織り込む用意があるのか、そして上場投資信託(ETF)といった競合手段と比べて、財務モデルとしての経済的価値を市場がなお評価するかどうかにかかっている。

  コンヴァノの東氏は、調達規模は同社の価値の何倍にも達するものであり、株価上昇に伴う株式発行で賄う計画は非常に野心的だと述べた。

原題:Japanese Nail Salon Attempts Reinvention as Major Bitcoin Holder(抜粋)

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