AIの環境負荷が気候変動対策の足かせとなる──特集「THE WORLD IN 2025」

テック企業は現在、検索エンジンやテキスト処理ソフトなど、あらゆるサービスに生成AIモデルを組み込もうとしている。しかし、この変更による炭素コストについて、企業側は情報を開示していない。例えば、ChatGPTとの対話や、グーグルのGeminiによる画像生成に、実際どれほどのエネルギーが使用されているのか、わたしたちにはわからないままだ。

AIの環境影響について、大手テック企業からは主にふたつの主張が出ている。「それは大した問題ではない」(ビル・ゲイツの発言)と、「エネルギーのブレイクスルーが起こり、魔法のように問題は解決する」(サム・アルトマンの発言)だ。

しかし実際に必要なのは、AIの環境影響に関する透明性の向上だ。わたしが主導する「AI Energy Star」プロジェクトはその一例で、ユーザーがAIモデルのエネルギー効率を比較し、情報に基づいて選択できるようにする取り組みだ。

2025年には、このような自主的な取り組みが、各国政府や国連といった政府間組織による法規制というかたちで実施されるようになるだろう。研究の進展、社会の認識向上、規制の強化により、ついにAIの環境負荷を正確に把握し、その削減に向けた具体的な対策が講じられるようになるのだ。

サーシャ・ルッチオーニ|SASHA LUCCIONIAIとサステナビリティの分野で先駆的研究を行なう科学者。Hugging Faceのクライメイト・リードを務め、持続可能なAI開発を推進する。気候変動対策にAIを活用する非営利組織「Climate Change AI」の創設メンバー。

(Originally published in the January/February 2025 issue of WIRED UK magazine, translated by Takako Ando/LIBER, edited by Mamiko Nakano)

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