柏崎刈羽原発 再稼働へ知事の重い判断だ
東京電力の柏崎刈羽原子力発電所が、再稼働に向けて、大きく動き出した。東日本大震災後、東電としては、初の原発再稼働となる。
東電は、二度と事故を起こさぬ決意で、運転再開への取り組みを進めてもらいたい。
新潟県の花角英世知事が、東電柏崎刈羽原発の再稼働を容認する意向を表明した。県議会の同意を経て年内にも国に伝える。
県民意識調査では、再稼働の容認派が50%、反対派が47%と 拮抗 ( きっこう ) していた。知事は記者会見で、安全対策と防災対策を県民に周知していくことで、「再稼働への理解が広がる」と判断したという。
新潟県は、公聴会などを通じ、慎重に手続きを進めてきた。住民の東電不信が根強い上、東北電力管内にある新潟では、東電の原発が再稼働する利点を実感しにくいこともあったからだ。
知事は、首都圏などの電力の安定供給や原発が脱炭素に貢献できることなど公益性を踏まえ、熟慮の末に決断を下したのだろう。
東日本大震災後、柏崎刈羽原発は1~7号機の全基が停止した。再稼働するのは準備が整っている6号機からで、年度内にも運転を再開することが想定される。
原発は震災前に全国に54基あったが、廃炉などで33基まで減った。このうち、すでに再稼働したのは東電以外の14基だ。
福島第一原発の事故で甚大な被害を引き起こした東電が、再稼働させることは重い意味を持つ。脱炭素などの点で必要性が高まっている状況について理解の広がりを示すことになるとも言えよう。
AI(人工知能)の普及などで電力需要は今後も増加していく見通しだ。脱炭素とも両立できる安定的な電源として、原発の再稼働は国力の強化に直結する。
ただし、県民意識調査では、東電が原発を運転することが心配、との回答が7割を占めている。いまだ厳しい視線が向けられていることを忘れてはならない。
東電は再稼働に向け、度重なる不祥事を起こした企業体質を変革し、安全対策を徹底する取り組みを強化していくべきである。
東電の経営は一企業の問題ではない。福島第一原発の廃炉にも責任を負っているためだ。
福島第一原発の廃炉費用は、当初見込んだ8兆円を超える可能性がある。原発が1基再稼働すれば東電の収支は年間で約1000億円改善する。再稼働で経営を安定させ、廃炉作業と福島の復興を着実に進めていかねばなるまい。