地球史における最大級のナゾ……「エディアカラ生物群」と「全球凍結」の真実(鎌田 浩毅,蜷川 雅晴)

約25億~約5億3900万年前の地質年代を原生代といいます。シアノバクテリアの光合成によって海水中に増えた酸素は、海水中に溶けていた鉄イオンと結合して酸化鉄になります。この酸化鉄が海底に堆積して、縞状鉄鉱層と呼ばれる地層が約27億~19億年前に形成されました。

縞状鉄鉱層の形成には酸素が必要ですので、原生代初期に大規模な縞状鉄鉱層が形成されたことから、当時の海に多くの酸素が含まれていたことがわかります。また、人類が利用している鉄の大部分は、縞状鉄鉱層から採掘されたものになります。

約21億年前の地層からは、細胞の中に核をもつ真核生物の化石が見つかっています。原生代には海水中に酸素が含まれるようになったため、酸素を利用してエネルギーを得ることができるように、生物が進化したと考えられています。また、15億年前には多細胞生物が出現しました。

約23億~22億年前と約7億5000万~6億年前には、地球のほぼ全体が氷に覆われた状態となりました。このような地球の状態を全球凍結(スノーボールアース)といいます。

全球凍結を示す証拠が地層に残されることがあります。氷河が陸地の岩石を削り、礫を取り込んで海まで移動し、海で氷山となった後、氷が融けると海底に礫が落下します。このようにして海底の堆積物にめり込んだ礫を「ドロップストーン」といいます(図2-6-3)。

カナダ(オンタリオ州)の約22億年前の地層にはドロップストーンが含まれており、全球凍結によるものと考えられています。また、ドロップストーンなどの氷河堆積物が、当時の低緯度の地層からも見つかっているため、地球全体が氷河で覆われていたと考えられます。

謎多き「エディアカラ生物群」

約6億年前に全球凍結が終わると、大型の多細胞生物が出現するようになりました。オーストラリアをはじめ、世界各地の5億5000万年前ごろの地層から発見された大型の化石群をエディアカラ生物群といいます。

エディアカラ生物群は、硬い組織をもたないため、遺骸自体は残っていませんが、生物の形態が残されています。このような化石を印象化石といいます。体長が数十cmにもなるディキンソニアやカルニオディスクスなど、大型の印象化石が残されています。

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