「トラスショック」再発リスク、英国だけのものではない-アシュモア
英国など、財政赤字を抱え市場からの資金調達に依存している国は、トラス政権時のような混乱に再び陥るリスクが「間違いなく」あると、資産運用会社アシュモア・グループのマーク・クームズ最高経営責任者(CEO)が論じた。
クームズ氏は「現在の英国に関する疑問の一つは、われわれが再び同じことを経験しようとしているのではないかという点だ」と述べた。2022年に当時のトラス首相の新政策が引き起こした市場の混乱を指して語った。
「赤字を抱え、市場アクセスに依存している国の場合、市場の信認を失うと単なる価格調整では済まない。イールドカーブの一部で買い手のストライキが起こり得る」と語った。
英国では2022年9月、当時のトラス政権が大規模な赤字財源による減税策を含む一連の新政策を打ち出したことを受けて、国債利回りが急騰。市場の混乱は深刻で、トラス氏はその後、政策の大半を撤回し、財務相を解任。就任からわずか44日で辞任に追い込まれた。
シンガポールで開催されたブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラムで語ったクームズ氏は「いったん信認を失えば本当に深刻な問題になる。市場ショックが起きる」と警鐘を鳴らした。
これに対し、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のマネジングディレクター兼副会長ジョン・スタジンスキ氏は異なる見解を示した。
同じフォーラムで同氏は「もうトラス事件のような事態は起きないと思う」と述べ、市場の混乱は「事前に予見されていれば起きない」と語った。
さらに「トラス政権時の混乱について言えば、要因は3分の1がトラス氏で、残りの3分の2は年金負債対応投資(LDI)だったと思う」と述べ、市場混乱は年金基金が用いた運用戦略による部分が大きかったと指摘した。
クームズ氏は債券市場について、米国の関税政策に起因した価格下落局面で、市場が世界的な債務水準の上昇に対して懸念を強めている兆しが見られたと指摘した。
関税による景気悪化懸念にもかかわらず「長期ゾーンでの買いは大きくなく、誰もが予想した通りの反応にはならなかった。これは市場が短期のポジションにとどまる方を好んでいたことを示している」と語った。
債務増大への懸念から長期債が敬遠されたとの見方だ。
英国債は先週、リーブス英財務相が次回予算案で所得税の主要税率の引き上げを見送る方針を示したことを受けて下落した。
日本国債も20日に下げを広げた。市場は高市早苗首相が21日に発表する予定の景気刺激策に備えている。
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政府も企業もそろって借り入れを拡大し、世界の債務残高は約74兆ドル(約1京1641兆円)に膨らんでいる。
原題:UK Not Alone in Risking Another ‘Liz Truss Moment,’ Ashmore Says(抜粋)