集中できず思考がさまよってしまう「マインドワンダリング」に陥りやすい人はスマートフォンの使用頻度が高いという研究結果

メモ

マインドワンダリングとは、「単純作業をしていたら関係ない思考にふけって手が止まってしまっていた」「本を読んでいるのに他のことを考えて、しばらく内容が頭に入っていなくて数ページ戻って読み直す」というように、現在取り掛かっているタスクとは無関係な思考が発生して注意散漫になる状態を指します。アメリカのウェイン州立大学の心理学研究者らが発表した論文では、マインドワンダリングを頻繁に経験する人は、スマートフォンを使用する頻度が高いということが判明しました。

Spontaneous Mind Wandering and Smartphone Use - Lara L. Jones, Gregory A. Norville, Zachary I. Wunder, 2025

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00332941251330555

Spontaneous mind wandering linked to heavier social smartphone use https://www.psypost.org/spontaneous-mind-wandering-linked-to-heavier-social-smartphone-use/ 「マインドワンダリングを経験することが多い人は、スマートフォンの使用頻度も高い」という傾向は、過去の研究でも示されていましたが、過去の研究はアンケート調査のみに基づくものでした。そのためウェイン州立大学の研究者らは、客観的に記録されたスマートフォンの使用状況を用いて、マインドワンダリングとスマートフォンの使用頻度との関連について詳細な調査を行いました。 研究では、アメリカの学部生188名を対象にオンライン調査を実施しました。参加者は全員がiPhoneユーザーであり、iPhoneの「スクリーンタイム」機能により週ごとにどれだけスマートフォンを使用しているかというデータが収集されました。なお、調査は新型コロナウイルスが流行していた期間に実施されており、それ以外の時期と比べてスマートフォンの使用時間が高くなっている可能性があります。

マインドワンダリングの傾向を測定するためには、複数のアンケートが用いられました。アンケートは確立された評価尺度を用いているほか、「単純作業で退屈だから他のことを考えよう」というような意図的なマインドワンダリングと、「単純作業をしていたら思考にふけってしまっていた」というような非意図的なマインドワンダリングを区別する異なる尺度が採用されています。 調査では、参加者はゲームや教育などのアプリよりも、ソーシャルメディアアプリに平均週17時間以上と多くの時間を費やしていたことがわかりました。論文では、ソーシャルメディアなどでのオンラインコミュニケーションについて常に意識し、いつでもつながれる状態にあるというマインドセットを「オンライン警戒」と呼んでおり、スマートフォン依存のような病理的状態とは区別していますが、状況によっては問題が生じる可能性があるとしています。 分析結果として、オンライン警戒度が高かった参加者はソーシャルメディアアプリの利用頻度が高く、そして非意図的なマインドワンダリングのスコアも高かったことが判明しました。つまり、非意図的にマインドワンダリングを起こしやすい人は、オンラインの世界に意識が集中しやすく、それがソーシャルアプリの利用時間の増加につながっていると研究者らは結論付けています。このパターンは、意図的なマインドワンダリングでは当てはまりませんでした。

また、研究ではメッセージやアプリから受け取るスマートフォンの通知が、スマートフォンの使用時間増加と関連している証拠も示しています。スマートフォンの通知はオンライン警戒度を高め、非意図的なマインドワンダリングを誘発する可能性があると考えられています。 研究結果についての注意点として、この研究は相関分析を用いたため、マインドワンダリングがオンライン警戒やスマートフォンの使用時間と関連していることは示している一方で、「マインドワンダリングを引き起こしやすい人はオンライン警戒度が高くスマートフォンをよく使う」ということなのか、「スマートフォンをよく使いオンライン警戒度が高いため、マインドワンダリングに陥りやすい」ということなのか、因果関係は明らかになっていません。また、オンライン警戒とマインドワンダリングは近い状態ですが、研究ではマインドワンダリング中の思考内容は特定していないため、オンライン活動に関する思考によってマインドワンダリングが起きているかどうかは不明です。 今後の研究では、より詳細な思考を追跡できるサンプリング法を用いることで、リアルタイムの思考や行動を正確に分析することが求められています。

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