【独自】アマゾン、マイクロソフト…テック大手はなぜ「水不足」地域にデータセンターをつくるのか。「綿花の作付けも、芝生に散水もできない」地域で建設ラッシュ(海外)(BUSINESS INSIDER JAPAN)

アメリカ南西部の7州を1450マイル(約2333km)以上にわたって流れるコロラド川は、壮大な峡谷を刻みながら4000万人に飲料水を供給し、国境を超えてメキシコに入る。デンバーからロサンゼルスに至る人々の生活を支えているだけではない。カリフォルニア州インペリアル・バレーとアリゾナ州ユマ地域という世界有数の農業地帯の作物をも育てているのだ。 このアメリカの大動脈でもある川がいま、過剰な使用によって枯渇の危機にさらされている。 アリゾナ州ではすでに、開発に十分な水が確保できないとの懸念から、一部の住宅建設会社が工事を中止。フェニックス南部の綿花農家は、数千エーカーの農地を作付けせずに放置している。ロサンゼルスの住民は芝生への散水を止めた。 こうした逼迫状況を踏まえ、流域の7州は103年前に制定された「コロラド川協定(Colorado River Compact)」に基づく取水配分をめぐり再交渉を行っている。 そしていま、この地域で最も乾燥した一帯に、テック企業が大量の水を消費するデータセンターを次々と持ち込んでいるのだ。 Business Insiderが確認した文書によると、そうした大規模なデータセンターの中には、AI(人工知能)革命を支えるサーバーで埋め尽くされたサッカー場サイズの施設もあり、それぞれが1日に数百万ガロンの水を使う可能性がある。これはアメリカ人数万人分の水使用量に相当する。

Business Insiderの調査では、アメリカで計画中ないし既設のデータセンターの40%が、国際環境シンクタンク・世界資源研究所(WRI)が水資源の逼迫(Water Stress)の度合いが「極めて高い」または「高い」と分類する場所に位置していることが分かった。1時間あたり40MWh以上の電力を使用する大規模データセンターに限ると、その割合は43%とさらに高かった。 BIの分析では、逼迫度合いの高い地域または極めて高い地域に地域に最も多くのデータセンターを構える企業はアマゾン(Amazon)とマイクロソフト(Microsoft)だ。アマゾンは81施設、マイクロソフトは23施設と際立っている。各社のデータセンター全体に占める割合で見ると、マイクロソフトは自社センターの52%をこうした乾燥地帯に持ち、首位となっている。 これらの企業は乾燥した土地そのものを求めているわけではない。広大な土地や安定した電力供給などを求めて、アリゾナ州のような場所に進出するのだ。 彼らは投資や税収、その他の経済効果が大きいと主張し、全米各地の自治体とデータセンター立地に向けた協議を行う。それは、アリゾナ州グッドイヤーのような乾燥した地域にとっても魅力的な提案だ。実際、グッドイヤー市はマイクロソフトのデータセンター複合施設について、同社と何年も交渉を重ねてきた。 「彼らは大企業で私たちは小さな市なので、交渉は簡単ではありませんでした」と語るのは、元グッドイヤー市議会議員のビル・スティップ(Bill Stipp)氏だ。彼は水資源に悪影響を与えるのではないかと懸念を抱きながらも、立地計画のさまざまな段階で賛成票を投じてきた。 マイクロソフトの広報担当者ベン・ウィルスカー(Ben Wilsker)氏は、同市との合意は「双方に利益をもたらす」と述べたが、マイクロソフトが(乾燥地帯への立地で)業界でも突出した割合を占めている点ついてはコメントしなかった。


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データセンターは歴史的に、膨大な数の高性能チップを冷却するため、大量の水を必要としてきた。水への依存度が低い冷却技術の利用も増えているが、まだ普及しているとは言えない。 アマゾンはいまだに水が大量に必要な蒸発冷却技術(水の蒸発熱を利用して冷やす技術)を選んでいるが、同社の全データセンターでこの方式を採用しているわけではない、と同社の広報担当者は述べた。 水をリサイクルして使うようになった農家やゴルフ場と違って、冷却に水を使用するデータセンターは圧倒的に淡水の供給に依存している。 AIブーム以前から、ビックテック企業は大量に水を消費することで知られていた。 環境科学専門誌『Environmental Research Letters』に掲載された2021年の論文 によると、テック業界は2018年時点ですでに、アメリカの商業・産業分野で最も水使用量の多い上位10業界の1つになっていた。そして現在、テック企業はデータセンター事業の拡大に数千億ドルを投じている。

Dakin Campbell[Business Journalist and Chief Correspondent]

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