“HDDの価格優位”が崩れる? SSD大容量化でストレージ市場に地殻変動

 HDD(ハードディスクドライブ)の価格優位が崩れるかもしれない──。人工知能(AI)技術の急速な進化に伴い、データを格納する「ストレージ」の要件が変わりつつある。 【画像】SSDとHDDの機能(比較)  AIモデルの学習と推論処理では大量のデータを取り扱う必要があり、容量だけではなく読み書きの処理速度、レイテンシ(遅延時間)といった性能もストレージの選定条件になっている。1GB当たりの容量単価が比較的安いHDDは、依然としてストレージ市場の主流だが、こうした要件がHDDの優位性を揺るがし、SSD(ソリッドステートドライブ)の需要を押し上げているようだ。

 機械部品を多く含むHDDは、データを読み書きする際、物理的な動作を必要とするため、AIモデルの学習と推論処理ではボトルネックの一つになり得る。そこで“主役”となる可能性があるのがSSDだ。 「AI推論向けワークロード(AI関連処理)の観点では、SSDは明確に優位に立つ。SSDはHDDに比べてIOPS(1秒当たりの入出力回数)が桁違いに多く、レイテンシもHDDがミリ秒単位なのに対してSSDはマイクロ秒単位に抑えやすい。ディスクを回転させるモーターを搭載しない構造のため、電力効率に優れるという特徴もある」(出典)HAMR移行で「HDD=安い」神話が揺らぐ? ニアラインSSDはどこまで攻め込むか(TechTargetジャパン)  AI関連の需要に応えるため、ハイパースケーラー(大規模データセンター事業者)は大容量のHDDを大量に調達しているものの、SSDに切り替える動きもある。キオクシアのヨーロッパ部門で、メモリおよびSSD製品担当バイスプレジデント兼最高技術責任者(CTO)を務めるアクセル・ストーマン氏は以下のように述べている。 「現在、ハイパースケーラーでは、ストレージの8割以上をHDDが占めている。SSDがそれらを完全に代替するのは程遠いといえる。しかし、より性能面での向上が求められていることは明らかだ」(出典)SSD for high performance, but HDD suits ‘warm’ workloads(ComputerWeekly)  ハイパースケーラーの期待に応えるため、ストレージベンダーは大容量SSDの開発を進める。Sandiskが2025年2月に示したロードマップによると、2027年までに128TB、256TB、512TBのSSDが登場し、将来的には1PB(ぺタバイト)のSSDも実現するという。  ただ、大容量SSDにはコスト面の懸念が付きまとう。SSDの大容量化が進めば1GB当たり容量単価が下がり、HHDとの差が縮まる可能性もあるが、それでも尚HDDがSSDに対して優位性があるためだ。  しかし、総保有コスト(TCO)という観点でHDDとSSDを比較すると、状況は変わりつつある。1GB当たり容量単価の比較だけではなく、省電力や省スペース、メンテナンス負荷の低減といったメリットも考慮すると、SSDにも分がある可能性が出てきた。 「128TBのSSDは安価ではないことは容易に想像がつく。しかし、特にハイパースケーラーにとっては、初期費用を上回る価値を持つ可能性がある。HDDをSSDに置き換えることによって、データセンターのラックスペースや消費電力、冷却にかかる費用を大きく削減できる見込みがあるためだ。結果として、システムのTCO(総所有コスト)を削減するコストモデルに適合するため、非常に魅力的な選択肢になる」(出典)HDDでAIはもう動かない? “100TB超えSSD”が必要になる理由(TechTargetジャパン) (※)本記事はTechTargetジャパン、ComputerWeeklyなどの記事を基に、注目のITトレンドを紹介しています。

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