クリーンエネルギーへの移行、意外な国々で進展 急速に進む国の共通点は?

パキスタン・カラチで進む太陽光パネルの設置=7月2日/Asif Hassan/AFP/Getty Images

(CNN) 気候変動対策の分野で残念なニュースが相次ぐなか、各地で希望に満ちた話も繰り広げられている。クリーンエネルギーの急成長だ。世界の国々が再生可能エネルギーを猛烈な勢いで導入している。

今年上半期の世界の発電量に占める再生可能エネルギーの割合は、史上初めて石炭火力を上回った。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界の再生可能エネルギー発電能力は今後5年間で倍増し、4600ギガワット上積みされる見通し。これは中国と欧州連合(EU)、日本の発電能力を合計した量に相当する。

一方で、急拡大するエネルギー需要に対応しようと化石燃料を使い続けている国も多い。

米シンクタンク「ロディウム・グループ」の国際エネルギー研究部門を率いるハナ・ピット氏はCNNに、エネルギーセクター全体が必然的にクリーンエネルギーに移行するとはまだ言い切れないと語った。

太陽光に転換する排出大国、一方で化石燃料も継続

過去数十年にわたり大量の温室効果ガスを排出してきた国々で、クリーンエネルギーへの転換が進んでいる。大きな理由のひとつが経済だ。再生可能エネルギーのコストは下がり続けている。特にコストの低い太陽光発電が、クリーンエネルギーのブームを牽引(けんいん)している。

再生エネルギーで中国の右に出る国はない。国内に昨年設置された風力、太陽光発電設備だけで、米国で現在稼働している再生可能エネルギー設備の合計を超えた。

中国が昨年末までに設置した風力、太陽光発電の設備容量は1400ギガワット以上。さらに現在、500ギガワットの再生可能エネルギー発電設備を建設中だ。

これに対して米国は、クリーンエネルギー政策を覆したトランプ政権下で慎重な姿勢を示しているが、それでも再生可能エネルギーへの流れは止まらない。昨年新たに稼働した発電設備の大部分を、風力、太陽光発電設備が占めた。英シンクタンク「エンバー」のデータによると、太陽光発電の新規導入量は、世界トップの中国に続いて米国が第2位だ。

米国のクリーンエネルギー・ブームは、バイデン前政権によるクリーンエネルギーへの税額控除措置が期限切れとなる前に駆け込もうとする企業が牽引している部分もある。だがたとえ税額控除がなくても、太陽光パネルや蓄電池、陸上風力発電機はほかの発電装置より安く、速く設置できるという利点がある。

人口世界一のインドも、再生可能エネルギーの新記録を複数達成している。太陽光、風力の新規発電容量は、途上国のトップクラスとされる。そして欧州連合(EU)は、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合を、29年末までに43パーセント近くまで引き上げることを目指す。

ただし、世界の排出大国が化石燃料の使用をやめたわけではない。

温室効果ガス排出量が群を抜いて多い中国では昨年、石炭生産量が過去10年間の最高を記録したという分析もある。

エンバーの報告によると、米国も石炭火力に依存し、排出量を増やしている。インドの急成長を支えているのは化石燃料だ。EUでは今年、風力発電量の減少や、長引く干ばつで水力発電が受けた打撃の埋め合わせとして、化石燃料生産がわずかに増加した。

再生可能エネルギーに突き進む意外な国々

チリのアタカマ砂漠に設けられた同国最大の太陽光パネル施設「CEME1」=2024年7月8日/Pablo Rojas/AFP/Getty Images

排出大国に劣らず重要なのは、エネルギー不足のなかで急成長を続ける新興国、途上国の動向だ。

南米やアフリカ、東南アジア、中東の国々では、中国からの安価な太陽光パネルや蓄電池、風力タービンを利用して、再生可能エネルギーに転換する動きが目立つ。

ノルウェーの調査会社「ライスタッド・エナジー」を率いるラース・ニッテル・ハブロ氏はこうした新興国について、段階を飛び越え一気に進歩する「リープフロッグ現象」でエネルギーの次世代に突入しているとの見方を示した。

例えばネパールは、電気自動車(EV)がほとんどなかった数年前から、今では中国製のEVが新車の76パーセントを占めるまでになった。

パキスタンやチリ、ギリシャでは、この数年で太陽光発電が一気に主要な電力源に躍り出た。

ハンガリーは、太陽光発電がほとんどなかった10年前から急激なブームに突入。強権的な右派政権下で政府が補助金を出し、規制を緩和して、大小規模の太陽光発電システム導入を推進した。

チリはアタカマ砂漠に大量の太陽光パネルを設置し、ギリシャも地中海沿岸の丘陵や島にパネルを導入している。

なかでも目を引くのは、世界最大級のソーラー革命が進むパキスタンの例だろう。わずか6年間で、太陽光が電力供給に占める割合はゼロから30パーセントに跳ね上がった。

ただし、発電設備の建設がすべてではない。晴れている時や風が吹く時だけ発電するという「間欠性」に対応するために、蓄電池との接続を強化する必要がある。

アナリストの間では、化石燃料が今後も多くの場所で使われ続けるとみる声もある。ピット氏は、「化石発電の技術は(途上国で)非常に重要な役割を果たし続け、われわれの予測によれば2050年まで増え続ける」と述べた。

これに対してライスタッド社は、再生可能エネルギーは低コストの選択肢である場合が多いと指摘。ハブロ氏は、もともと化石発電インフラが整備されていない国で、リープフロッグ現象が盛んに起きていると強調した。

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