これが不足するとメンタル不調に陥る…医師が勧める"幸せホルモン"セロトニンを増やす起床直後の新習慣 日々の「セロ活」は4つの生活習慣から
心身ともに健康でいるために何が必要か。東邦大学医学部名誉教授の有田秀穂さんは「セロトニンには、うつ病や強迫性障害をはじめ心身の不調に悩む人を再び元気にする働きがある。私は『幸せホルモン』とも称されるセロトニンを脳内できちんと分泌させる『セロ活』を勧めている」という――。
※本稿は、有田秀穂『スマホ中毒からの心のモヤモヤをなくす小さな習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/damedeeso
※写真はイメージです
セロトニン合成に必要な栄養素は普段の食事で十分
「セロトニン」は人間なら誰でも、年齢性別に関係なく、朝起きると脳内に分泌されます。覚醒中は持続的に分泌され、人間の心と体を元気な状態にします。セロトニンは、「元気な覚醒状態を演出する脳内物質」なのです。元気な状態であれば自律神経のバランスが整い、体調もよくなります。つまりセロトニン神経を活性化させることで、「心が安定」→「自律神経のバランスが整う」→「心身ともに健康になる」という好循環を招くというわけです。
セロトニン合成に必要な栄養素は、トリプトファンという必須アミノ酸です。「必須」というのは「体外から吸収されなければならない栄養素」のことを意味します。トリプトファンを含む食材は、大豆製品(豆腐・納豆・味噌・醤油など)と乳製品(牛乳・バター・チーズ・ヨーグルトなど)ですが、肉類にも含まれます。特別なメニューは必要ありません。和食でも洋食でも極端な偏食さえしなければ、普段の食事で無理なく摂取することができます。
体の細胞が「セロトニン」を合成するには、トリプトファン水酸化酵素が必要ですが、その酵素を持つ細胞は体内でかなり限定されます。人間の脳には約140億の神経細胞がありますが、トリプトファン水酸化酵素を備える神経細胞=セロトニン神経は、わずか数万個しかないのです。
セロトニン神経のある場所は、「脳幹」という脳の一番尻尾の部分。進化的に最も古い脳部位で、そこの細胞がトリプトファンを血液から取り込んで、セロトニンを合成するのです。
セロトニン神経はほんの数万個しかないのですが、これまでの脳科学研究で、ほぼ脳全体に「軸索」というケーブルを使って信号を送り、神経末端からセロトニンを分泌させることが明らかになりました。
クールな覚醒状態、思考力や判断力は最大限といいことずくめ
セロトニンは、次の6つの脳機能に影響を与えます。
・大脳皮質に影響を与えて、認知機能を鎮静させる。知性や損得勘定を抑えて「クールな覚醒状態」を形成させる。
・「人間性」の脳=前頭前野を活性化して、直感・共感性を高める。
・心の脳=大脳辺縁系に影響を与えて、平常心を形成させる。不安・緊張を抑え、怒りを静め、抑うつ気分を改善させる。
・交感神経の緊張を適度なレベルに調節する。朝の寝ぼけた体の状態を改善させる一方で、ストレスで過剰に興奮した交感神経を静める働きをする。
・顔つきを引き締め、姿勢をシャキッとさせ、ハツラツとした外見をもたらす。
・鎮痛効果。痛みを抑え、不定愁訴をコントロールする。
この結果、セロトニン神経が活性化すれば、私たちの心と体が健康になります。例えば、頭がよく働いて気分がすっきりする。セロトニンは大脳皮質に作用して、クールな覚醒状態をもたらすので、本来、自分が持っている思考力や判断力を最大限に発揮できます。
また、直感力や他人への共感力を高めるので、スムーズな人間関係を作るのに役立ちます。そして、神経の興奮状態を抑え、平常心を保つのに役立つので、不安や緊張、怒りの感情が減り、思わぬ失敗や後悔をすることは少なくなります。
さらに、朝起きてセロトニン神経が正常に働くと、副交感神経から交感神経への切り替えがスムーズになり、気持ちのよい目覚めがもたらされます。よい姿勢と若々しさを保つ効果も期待できます。
『スマホ中毒からの心のモヤモヤをなくす小さな習慣』(プレジデント社)
現代人はスマートフォン(以下スマホ)やパソコンを長時間使い続け、人間関係が複雑な社会に生きているために、頭が疲れて眠れなくなり、朝から不調で、集中できなくなっています。ついにはひきこもり生活になり「心のモヤモヤ」に悩まされるようになります。精神科や心療内科に行って薬物治療を受けても、それは対処療法でしかなく、本質的な解決にはなりません。そもそも「心のモヤモヤ」は病気ではなく、スマホやパソコンという優れた道具の扱いや、人間関係の処し方に不慣れなため、ちょっと「怪我を負った」だけなのです。意識改革をして現代社会に適合したライフスタイルを身につければ、自分で克服できるものなのです。
Page 2
ただし、注意しなければならないポイントがあります。太陽光の代用として発明された電灯の光は、視覚機能には有用ですが、「セロ活」には役に立たないという事実です。理由は、照度が足りないからです。これまでの医学研究では、2500〜3000ルクス以上の照度が「セロ活」には必要だということが明らかになっています。通常の電灯の照度は500ルクス以下なので、「セロ活」には役に立ちません。そこで、照度計を使っていろいろな場所や状況を調べて見ると、「セロ活」に有効な条件が見えてきます。
太陽が出ていれば、1万〜10万ルクスの照度があり、「セロ活」にはまったく問題ありません。むしろ、浴び過ぎが問題になるほどです。30分浴びれば、十分に「セロ活」になりますが、夏は短め、冬は長めに浴びるのがよいでしょう。そして太陽光を浴びて疲れを感じるようなら、脳内のセロトニン分泌が逆に減り始めたと考えたほうがよいと思います。疲れは、セロトニン分泌が減少すると感じてくるもの。これも、セロトニン神経の重要な特性なのです。
時間は「朝」がベストタイミング
・皮膚に太陽光を浴びるのは「セロ活」にはなりません。太陽光の刺激は目の網膜を介して、セロトニン神経を活性化させるものだからです。日焼け止め対策のUVカットや長袖、日傘や帽子は「セロ活」には影響を与えません。ただし、サングラスは目の網膜に光が十分に届かなくなるので、「セロ活」の観点からはNGです。
・日中、部屋の中にいるときは、カーテンやブラインドを開けておきましょう。窓際なら3000ルクス程度の照度があるので、基本的に「セロ活」になります。たとえ太陽が出ていても、部屋の奥で生活していたら、太陽の恵みは受けていないと思ったほうがよいでしょう。
・「セロ活」として太陽光を浴びる時間帯は、朝、起きてすぐがベストタイミング。なぜなら、夜寝ているときには脳内でセロトニン分泌が起こっていないので、1日の生活がスタートする朝に、太陽光を浴びて「セロ活」をすることが効果的なのです。
これでスムーズに1日の生活がスタートできます。
日光浴で脳内にセロトニンが分泌し始めると、こんな効果が生まれます。
・すっきりとした覚醒 ・心が明るくポジティブに切り替わる
・体も動く状態にシフトする
具体的な生活習慣としては、太陽光を浴びながらさまざまな運動(ウオーキングなど)を組み合わせるとよいでしょう。もちろん、ベランダや庭で日光浴をするだけでも十分、「セロ活」になります。
『スマホ中毒からの心のモヤモヤをなくす小さな習慣』(プレジデント社)
現代人はスマートフォン(以下スマホ)やパソコンを長時間使い続け、人間関係が複雑な社会に生きているために、頭が疲れて眠れなくなり、朝から不調で、集中できなくなっています。ついにはひきこもり生活になり「心のモヤモヤ」に悩まされるようになります。精神科や心療内科に行って薬物治療を受けても、それは対処療法でしかなく、本質的な解決にはなりません。そもそも「心のモヤモヤ」は病気ではなく、スマホやパソコンという優れた道具の扱いや、人間関係の処し方に不慣れなため、ちょっと「怪我を負った」だけなのです。意識改革をして現代社会に適合したライフスタイルを身につければ、自分で克服できるものなのです。