研究費足りない「月に4万円」 科学者から悲鳴…ウイスキー空き瓶使い実験
静岡大学 木村洋子教授 「ウイスキー瓶を(酵母の)培地を入れる瓶に使っています」 静岡大学の酵母を研究する研究室。培地を入れる容器は専用のものではなく、ウイスキーの空き瓶です。 木村教授 「持ちやすいということと、何よりタダ。(薬品の)1グラムあたりの単価とかも書いて、大事に使うようにしてくださいというふうにしています」 試薬は10万円を超えるものもあります。ところが、光熱費を除くと研究室が使える資金は月4万円ほどしかありません。 木村教授 「研究費が学内からもあまりもらえなくなっている。科学研究費の獲得競争は激しいし、かつこの1、2年は物価高の影響をすごく受けていて、ダブルパンチの状況です」
輸入品の多い実験用器具などの価格高騰に加え、国からの助成金も簡単にはもらえません。 特に獲得が難しくなっているのが、「科研費」と呼ばれる国の助成事業。ノーベル賞を受賞した基礎研究を支えてきたことで知られますが、申し込む研究者が増え、受け取れるのは応募した件数のうち3割程度だといいます。 木村教授 「採択率30%はあまりにも低いなと思う。50、60%ぐらいにしないと」 世界では中国とアメリカが研究費を飛躍的に伸ばす一方、日本はほぼ横ばいで大きな差が生まれています。 注目度の高い科学論文の数で、日本はイランに抜かれ、過去最低の13位に低迷しています。論文の数が減れば新たな技術が生まれづらくなります。 東京大学 後藤由季子教授 「(資金不足もあり)日本の研究が遅れているという実際のデータがある。アメリカやヨーロッパの諸国に比べ、1年も遅れている。研究が遅れてしまうと特許も出にくくなり、経済への影響も大変大きい」 研究が進まない結果、遅れをとり創薬の分野では、すでに海外からの輸入に頼らざるを得ない状態に陥っています。
この事態に危機感を募らせているのが、産業界です。経団連は科研費の早期倍増を提言し、財源などについても議論する委員会を新たに立ち上げました。 経団連 筒井義信会長 「科学技術の遅れが、科学技術人材の停滞につながりかねない。さらに産業競争力、国益の低下ということにつながりかねない」 国は5年に一度の科学技術政策の方針を決める議論を進めています。この夏に中間とりまとめをする見込みで、研究費増額にかじを切るのかが注目されます。 (「グッド!モーニング」2025年7月8日放送分より)
テレビ朝日