世界のM&A、2025年はさらに活発化へ-シニアバンカーが予想
- 2024年は3年ぶりに活発化-トランプ次期米政権下での加速期待
- データ、AI、ソフトウェア関連のディール増加の見通し
2024年はM&A(企業の合併・買収)が3年ぶりに活発化した。資金調達コストが低下したことで、潜在需要が解放された。
市場関係者の多くは、トランプ次期米大統領の就任後にこの回復の勢いがさらに増すとみている。一方で、トランプ氏の経済政策がインフレを再燃させ、逆効果をもたらすリスクもある。
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今後12カ月間の各業界・地域におけるM&Aの予測をシニアバンカーたちに聞いた。
◎トム・マイルズ氏(モルガン・スタンレー グローバルM&A共同責任者)
興味深いことに、2024年は株式非公開化がかなり活発な年で、世界全体で2500億ドル(35兆3500億円)超の取引があった。これは、プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社が引き続き資本を投下しており、一般株主が売却に前向きなことを示している。この傾向は今後も続くと考えられる。資本市場は活況でオープンであり、PEファンドは拡大している。200億ドル規模の非公開化案件が出てくる可能性は十分にある。
◎イーモン・ブラバゾン氏(バンク・オブ・アメリカ グローバルM&A共同責任者)
株式市場が過去最高値圏にあるため、M&Aへの意欲が高まっている。また、米国企業の間では、今後2、3年の間に市場がより柔軟になり、反トラスト法(独占禁止法)の逆風が弱まり、取引がしやすくなるとの強い自信が感じられる。M&Aにはさらなる起爆剤となるだろう。
◎アリソン・ハーディングジョーンズ氏(ドイツ銀行 グローバルM&A責任者)
欧州では、米国に製造拠点を置き、現地での販売を目的とした買収を求める企業が増えている。成長を見出すことは容易ではなく、多くの経営者が大きなプレッシャーを感じている。英国は欧州よりも順調だ。相対的な観点から見ると、英国の見通しは明るい。欧州に関わる取引はすべてロンドンとつながっている。
◎マーク・マクマスター氏(ラザール グローバルM&A責任者)
将来的な金利環境が改善するにつれ、(資産の割安さに注目し買収する)ファイナンシャルバイヤーによる買収が勢いを増しているが、(自社の事業価値向上を目指し買収する)戦略的バイヤーがM&A活動の主要な原動力であり続ける可能性が高い。過去2年間、戦略的バイヤーは全M&A活動の70%を占めたが、21-22年は60%だった。
過去2年間に発表された25件の大型ディールのうち、戦略的バイヤーによる案件が占める割合は23年が90%、24年が80%だった。高金利環境下での注目すべき傾向として、戦略的バイヤー企業が自社株をM&A通貨として使用することで、バランスシートを圧迫することなくポートフォリオを構築し、シナジー効果を実現していることが挙げられる。ただ、借入コストが低下する中、大企業による現金取引だ出てくることも予想される。
◎アンドレイ・ミルキン氏(野村ホールディングス デジタルインフラ投資銀行部門グローバル責任者)
データ消費量の増加や人工知能(AI)の台頭といった強力かつ長期的な基本トレンドにけん引され、中長期的に高い水準の活動が継続すると考えられる。データセンター資産は引き続き高い需要が見込まれる一方、大規模な光ファイバーネットワークやタワー関連のディールも業界の統合再編が続く中で予想される。
◎アテナ・テオドルー氏(UBSグループ)
25年には、欧州のソフトウェア業界におけるM&A活動はさらに活発になりそうだ。スポンサーが案件を熱心に探し求めていることや、資金調達環境がより良好であることも後押しし、株式非公開化の取引が引き続き盛況だろう。米国企業が欧州資産への関心を強めていることから、国境を越えたソフトウェアM&Aがさらに増えると予想される。米国企業は国際的な事業拡大を明確に計画しているうえ、ドル高が取引を後押ししている。
原題:M&A Momentum and Trump Trades: Dealmakers’ Predictions for 2025(抜粋)