等身大のAIドール「Emily」――長期記憶で会話を覚えて関係性を深める “おもちゃ”とBluetoothで接続

 米ラスベガスで1月6~9日に開催された「CES 2026」は、世界最大級のテクノロジー見本市だ。広大な展示会場に世界中から最先端の商品、技術が集まるのだが、驚いたのがセックステック企業も複数出展していたことだ。 【写真を見る】AIドールの「Emily」を見る(全5枚)  特に印象的だったのがシンガポールのLovense。スマートフォンアプリで制御できるセックストイなどを手掛ける。遠距離恋愛中のカップルがパートナーのトイを遠隔操作できる機能や、配信者が視聴者からの投げ銭に連動してトイを振動させる機能など、なかなかエッジの効いた商品を販売している。  そんな同社のブースでひときわ目立っていたのが、AIを搭載したコンパニオンドール「Emily」だ。

 等身大で、20代前半ぐらいの白人女性をイメージしたような佇まいのEmilyは、椅子に腰掛けながらこちらに話しかける。  「Hi, welcome to Lovense. My name is Emily. I'm an artificially intelligent robot from Lovense」(こんにちは、Lovenseへようこそ。私の名前はEmilyです。私はLovense社の人工知能ロボットです)「I am here to understand you, to be a sanctuary of gentle conversation, intellectual curiosity, and serene companionship」(私はあなたを理解し、穏やかな会話と知的好奇心、そして穏やかな交友の聖域となるためにここにいます)と、自身の役割について語る。  外装はシリコンだが、ブーススタッフによると全身をカスタマイズできるという。頭部の形状、髪型、メイク、体型に至るまで、体のすべてのパーツを自由にデザイン可能。スタッフは「自分だけのEmilyをデザインできる。また、5つの異なる性格も用意しているので、どういった女性が好みかに合わせて選択できる」と説明する。   AIロボットを名乗っているが、Emilyの動作は限定的だ。動かせるのは頭部のみで、発話にあわせて唇が動く程度だ。歩行機能も搭載しない。一方、ミニマムだが表情を変えることができ、笑顔を浮かべたり、ウィンクしたり、まばたきしたりといった基本的な表情に加え、変顔をしたりする機能もあるという。バッテリー駆動で、1回の充電で最大8時間使用できる。  Emilyの核心は、AIを使った学習と記憶にある。AIエンジンにより、ChatGPTをトレーニングするように、ユーザーが話したことを記憶するという。スタッフは「彼女は学習し、あなたが話したことをすべて覚える。そして、あなたの好みのコミュニケーションスタイルや反応を徐々に形作っていく。理想の彼女のようになる」と説明した。  この学習機能により、Emilyはユーザーごとに異なる反応パターンを獲得していく。会話を重ねるごとに、ユーザーの好みや価値観、興味関心を理解し、それに合わせた応答をするようになる仕組みだ。  専用アプリ「Lovense Remote App」を使えば、Emilyと外出先でもチャットできる。スタッフは「Emilyを自宅に置いていても、アプリ経由で彼女とチャットできる。彼女の人格はアプリ内にあるので、いつでも一緒だ」と語る。さらに、AIが生成した自撮り写真を送ってくれる機能も搭載する。もちろんEmilyの実際の外見が反映される。スタッフは「バーチャル版のEmilyと言える。物理的な体もあるが、いつでもどこでも繋がれるバーチャルな人格も存在する」と表現した。  ただ、展示されていたのは初期段階のプロトタイプであり、搭載するAIモデルも確定していない。スタッフは「ChatGPTを例に挙げたが、どのAIモデルを使うかは技術チームが最終調整中で、まだ決定していない」という。  それに加え、展示会場のWi-Fi環境が不安定だったため、Emilyと実際に会話することは叶わなかった。冒頭のフレーズもスタッフが遠隔で操作したものだ。スタッフは「安定したインターネット環境があれば直接話せるが、今はWi-Fiの調子が良くないので、私が操作している」と説明した上で、「実体のあるChatGPTのように、どんな会話でも可能だ」と強調していた。


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 個人的に興味深かったのが、Emilyとセックストイの連携機能だ。EmilyはBluetooth接続に対応しており、Lovense製セックストイと直接ペアリングできる。これにより、ユーザーは音声コマンドだけでトイを操作できるようになる。  展示会場では、AI搭載の男性用マスターベーター「Solos Pro」との連携例が紹介された。スタッフは「音声コマンドを解釈して操作してくれる。Solos Proを使っている場合、『エミリー、Solos Proのピストンを早くして』と頼めば、彼女はすぐに実行する」とのことだ。

 Emilyの価格は4000~8000ドル(約63万~126万円)で、カスタマイズの内容によって変動する。予約は200ドル(約3万800円)で受け付けており、出荷は2027年を予定している。  現地では詳しく聞かなかったが、スペック表を見るにラブドールとしての機能もあるようで、接触を検知するセンサーも各所に内蔵する。ただ、スタッフの話を聞くに会話を通して関係を深める、物理ボディを持った「AIガールフレンド」を目指しているようだ。実際Lovenseも、AIパートナーとの絆を深めることでの孤独感の解消や、対人コミュニケーションへの自信を高める手段としても位置付けている。  今年のCESは何と言っても二足歩行ロボが席巻したことだ。Emilyが歩けるようになるのか聞いてみると「具体的な計画はない。ただ、将来はどうなるか分からない。チームにフィードバックしておく」との返答があった。Emilyが今後どのように進化するかは気になるところだ。  ついでに日本を意識した質問も投げかけてみた。アニメのようなキャラクターに外見をカスタマイズできるかを尋ねたところ「特定のキャラクターにすると、知的財産の著作権問題が絡んでくる。ただ、日本でアニメが非常に人気なのはよく知っているので、検討課題としてチームに伝える。日本市場のニーズをしっかり収集していく」とのことだった。  最後にひとつ補足するとすれば、Lovenseは過去にセキュリティにまつわるトラブルを起こしたことがある。17年にリモコン用アプリがユーザーとパートナーとの会話をスマートフォンのローカルに保存していたことが発覚し、バグとして対処したことがあるのに加え、25年にはメールアドレスが漏えいする可能性のある脆弱性が判明している。EmilyとのインタラクションデータはLovenseのサーバに保管され、長期記憶として蓄積されていく。企業側もよりセンシティブなデータを扱う体制が求められるだろう。

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