「うどん県」の切実な悩みとは…学校健診で糖尿病予防、早期発見に
「うどん県」として知られる香川県には、切実な悩みがあります。それは、糖尿病の患者数(人口10万人あたり)が、20年以上全国平均を上回っていることです。炭水化物の取りすぎや野菜摂取量の不足など様々な背景が考えられますが、県の担当者は「うどん好きの県民性が一因の可能性がある」と話しています。
県も対策を続けています。その一つが小学4年生を対象にした生活習慣病の予防健診です。糖尿病や脂質異常症などの予備軍を子どものうちに発見しようと、2012年から学校健診を行っています。
健診の血液検査で肥満傾向や脂質異常などがわかると、かかりつけ医や専門医の診察を受け、予防につなげます。
近年、この検査が悪玉コレステロールの値が高くなる遺伝性の病気「家族性高コレステロール血症(FH)」の早期発見にも役立っていると、注目されています。
FHは300人に1人の割合でみられますが、多くは自覚症状がありません。しかし、未治療のままなら、血管の壁にコレステロールがたまり、健康な人より15~20年早く心筋 梗塞(こうそく) を発症すると言われています。
遺伝性のため、子どもで発見されると、両親のどちらかもFHだと分かります。香川県では、過去6年間で親子約450人のFHが見つかり治療につながったといいます。
治療には、血液中のコレステロール値を下げる薬が使われます。この薬の原型となる物質「スタチン」は、昨年亡くなった日本人研究者の遠藤章さんが発見したことで知られます。「ノーベル賞級」の成果と言われていました。
FHの患者にとって、スタチンは救世主です。こうした薬で子どもの頃からコレステロール値を正常に保ち続けられれば、健康な人と変わらない生活が送れるからです。
問題は、FHの早期発見の機会が少ないことです。FHの治療や啓発に長年取り組んできた 斯波(しば) 真理子・大阪医科薬科大特務教授は「せっかく良い薬があるのに、子どもの頃にコレステロール値を調べる大切さが知られていない」と話します。
静岡県内の一部の市など、香川県以外でも取り組む例は出てきています。さらに広がり、スタチンの恩恵が多くの人に届けばと思います。(中田智香子)