iPhoneに駆け込み需要、相互関税発動を前にアップルの米店舗に客殺到

Mark Gurman、Rthvika Suvarna

  • 関税賦課で価格が劇的に上昇すると懸念、「パニック買い」も
  • iPhoneの大半を製造する中国にトランプ政権は54%の関税賦課を計画
Photographer: Victor J. Blue/Bloomberg

トランプ米政権による新たな大幅関税賦課の脅しは、米アップルの株価を急落させたが、短期的な恩恵ももたらした。スマートフォン「iPhone」を購入しようと客が米国内の小売店に殺到しているからだ。

  アップルの全米各地の小売店従業員によると、週末に店舗に客が押し寄せ、関税賦課で価格が劇的に上昇することに懸念を表明したという。アップル製品で最も売れ行きが良く、最も重要なiPhoneの大半は中国で製造されている。中国からの輸入品には計54%の関税が課される予定。

  ある従業員は、店にパニック買いをする客が押し寄せきたと述べ、「ほとんどの客がすぐに値上がりするのかと尋ねてきた」と語った。この従業員は公に発言する権限がないため、匿名を条件に話した。

  従業員らによると、店頭ではiPhone発売時に見られるような行列は必ずしもできなかったものの、年末のホリデーシーズン並みの混雑状況だった。「人々は不安に駆られて殺到し、質問をしている」とある従業員は語り、そうした問い合わせへの対応方法について会社から店舗への指示はなかったと付け加えた。

  客の殺到は購入の増加につながっている。事情に詳しい関係者によると、アップルの米小売店では、少なくとも一部の主要市場で週末の売上高が例年を上回った。アップルの広報担当者はコメントを控えた。

  アップルは5月1日に1-3月(第2四半期)決算を発表する予定で、ティム・クック最高経営責任者(CEO)やケバン・パレク最高財務責任者(CFO)が関税の影響について議論する機会を得る。年末商戦を含む四半期の決算会見でクック氏は、影響を評価中だと述べ、それ以上のコメントは控えていた。

  株式市場への関税ショックは特にアップルに大きな打撃を与えた。同社の株式時価総額は3、4両日の2営業日で5000億ドル(約74兆円)余り落ち込み、株価下落率は3営業日としては2001年のインターネット株バブル崩壊以来最大を記録した。

  アップルは関税に備え、在庫の積み増しなど対策を講じている。今後の関税の影響を減らすため、同社は中国より低い税率が適用されるインドで製造された製品を米国市場により多く投入する方針だとブルームバーグ・ニュースは先に報じている。

  同社はまた、中国よりも関税率が低いベトナムへの生産移転を長年にわたり進めてきた。ベトナムではスマートウオッチ「Apple Watch」、パソコン「Mac」、ワイヤレスイヤホン「AirPods」、タブレット「iPad」を製造。Macの一部モデルはアイルランドやタイ、マレーシアでも生産されている。

原題:Apple Customers Dash to Stores to Buy iPhones Ahead of Tariffs(抜粋)

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