角田裕毅、”ピット遅延”の背景に「プロトコル」浮かび上がる真因…決勝後も引きずった悔しさ
前戦ベルギーGPでのピット指示遅延に対する角田裕毅(レッドブル)のフラストレーションは、決勝後も数日にわたって尾を引いていた。レッドブル移籍後の自己最高位更新のチャンスが潰えたこの一件の背景に、「プロトコル」を巡る問題があったことが明らかとなった。
「数日間はフラストレーションを引きずっていました。でも今は少し…いや、だいぶ気持ちも整理できました。こういうことは今後、絶対に避けていきたいです」
第14戦ハンガリーGPを前に角田はそう語った。
ベルギーGPでは、7番グリッドという好位置からスタートするも、ピットウォールからのピットイン指示が遅れた影響でポジションを5つ落とし、入賞圏外に後退した。
ローラン・メキーズ代表はレース後、チーム側の過失と認めたが、顧問のヘルムート・マルコは「原因を明確に解明しなければならない」と語り、具体的な原因が明らかになっていないことを示唆した。
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2025年F1第13戦ベルギーGPの決勝で、ウエット路面のスパ・フランコルシャンを走行する角田裕毅(レッドブル)、2025年7月27日jpg
理論的には様々な要因が考えられたが、角田は「今後に向けてどのようなプロトコルが望ましいのかを見直しました」と明かし、「今週末も、似たような状況は起こり得るので」と続け、ハンガロリンクでも同様の局面が再び訪れる可能性を踏まえ、気を引き締める必要があると強調した。
ここで角田の口から出た「プロトコル」という言葉は、今回のミスが機材トラブルや通信エラーによるものではなく、意思決定フローや個人間のコミュニケーションを含む指示系統の混乱、曖昧な役割分担から生じる判断の遅れや伝達ミスなど、ヒューマンエラーに起因するものであった可能性を示唆するものだ。
ドライバー、レースエンジニア、ストラテジスト――誰が最終判断を下すのか。ピットエントリーの何秒前までに意思決定を完了させるのか。「Box、Box」といったピットイン指示のワードをどう標準化するのか。こうした一つひとつの要素の綻びが、時にレース結果を台無しにすることがある。
だからこそ「プロトコル」は、あいまいさを一切許さない明確かつ厳格な指針として整備されていなければならず、同時に、それが現場で確実に機能するよう、厳密に運用される必要がある。組織として成果を最大化していくためには、人的エラーさえも構造的に排除していくアプローチこそが求められる。
角田はこう訴える。
「特に、ああいった変わりやすいコンディションでは、ドラインラインができ始めても、イン側みたいにオーバーテイクで使いたいラインは濡れてることが多いので、簡単には抜けません。なので、ピットのタイミングが本当に重要なんです」
今回の一件では、伝達経路のどこに混乱が生じたのかは明らかになっていない。ストラテジストからレースエンジニア、あるいはそこからドライバーへ──いずれにせよ、どこかで齟齬が生じたのだろう。
たとえ一個人のミスが原因だったとしても、角田が強調するように、明確なプロトコルの整備、すなわち構造的アプローチこそが再発防止の鍵となる。F1チームもまた一つの組織である以上、誰が関わっても機能する制度設計が求められる。
再び同じ過ちを繰り返さないためには、個人の責任追及ではなく、仕組みそのものの精度を高めていくことが求められる。